Archive for 2007

ワンテーマ・マガジン!後編

■「Big magazine」、「月刊キャベツ」

次は「Big magazine」です。これはずっと続いていて有名な雑誌なんですが、今回はヘミングウェイ特集です。ヘミングウェイというキーワードをもってどこまで広げられるか、というところですね。たとえばコスプレがあったり、ゆかりの地を訪ねたフォト・シューティングがあったり。これはビジュアルがメインな雑誌ではあるんですが、ヘミングウェイコスプレのファッションページってなかなかしゃれてると思います。これも毎回一冊まるごとワンテーマですね。ワンテーマということでは、この雑誌が先駆けなのかもしれない。今、この号で63号で、たしか年4回出ているのでずいぶん長いですよね。

一方日本なんですが、この雑誌もう見ましたか?「月刊キャベツ」という雑誌です。僕も少し編集に関わったんですが、「旬がまるごとマザーフードマガジン」ということで、毎回特集が変わるんです。次の特集がマグロ、トマトと続きます。

Q:キャベツというのが雑誌の名前かと思いました。

幅:実際、キャベツというのがほぼ雑誌の名前ですね。
本当は雑誌の名前を毎回変えたかったんですけど、手続き上できなかった。
この号では、十文字美信さんがキャベツのグラビアを撮っていたりします。キャベツを一枚一枚はがしていくと小さい葉っぱになっているところをじっくり撮っている。
他にもキャベツにまつわる記事がたくさんあります。荒木緑さんにキャベツでライトを作ってもらって、ホンマタカシさんに写真を撮ってもらいました。くだらないといえばくだらないんですけどね(笑)。シュークリームのシューはキャベツがオリジナルなので、シュークリームの特集もあります。一応料理本らしくレシピも取り上げたり、キャベツの廃棄事件を取り上げたり。建築家に建築的視点からキャベツを語ってもらったり。すごくまじめに語ってもらいました(笑)。他にはセルジュ・ゲンズブールの「くたばれキャベツ野郎」というアルバムも取り上げました。

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■「酒とつまみ」

幅:次は「酒とつまみ」です。これは本当にお酒とつまみに関するいろいろな事象を扱っています。でも通常考えるような、このお酒がうまいとかつまみの作り方とかではなく、たとえば「飲み残しのビール、次の日常温でどのビールがイチバン美味しいままか」という記事があったりして、なんだかちょっと変わっています(笑)。お酒とつまみに対するコンテンツの、さらに隙間みたいなところを埋めている。
最高にくだらない特集といえば、イカグラスというイカを凍らせてグラスにして酒を飲むというものですね。飲むと少し縮む、らしいです(笑)。ソフト裂きイカがつまみであるから、イカをグラスにして酒を飲めば効率がいいんじゃないか、というコンセプトらしい(笑)。日本酒から麦焼酎、黒糖ワインという風にお酒も変えたり。オバカな企画ですが面白い。ちょっとタモリ倶楽部的な方向に走りつつ、酒とつまみをどこまでも深くちょっとひねくれたアイディアで取り上げていくのがすごく好きですね。
読者の投稿もすごくリアルです。飲んだくれ川柳とか。

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■「TOKION」、「ワンダー・ジャパン」

幅:最近ワンテーマっぽく変わってきたよね、というのが「TOKION」です。佐藤可士和さんの特集をやって売れたからなのかもしれないですが、毎回「人」を立ててます。宇川直宏さんの特集も、宇川さんを取り巻く人から見た人物像を語っていたりして面白いです。最近の雑誌の中では当たっている雑誌ですね。資料性が高いのもいいのかもしれませんね。

幅:次は案外知られてないかもしれないんですが、「ワンダー・ジャパン」という雑誌です。都築響一イズムの正統的継承者という感じですね。日本の風景の中で、ちょっとこれおかしくない?というところをひたすら撮っている。昔は年に二回とかいい加減な出方だったんですけど、今は季刊誌です。タモリ倶楽部的なところがすごくある。
少し前に出た軍艦島特集がすごかったですね。もともと廃墟とかをルポタージュしたところから始まっていて、ちょっとずれてたり、ゆがんでたりするような日本の風景を集めています。今、工場萌えみたいなムーブメントがありますけど、そういうブームの先駆け的存在です。
今、この雑誌の編集者たちはダムを流行らせようとしてるんじゃないかと思うんですけど(笑)、ダムの特集も面白いですね。なんかそういう独特なチャレンジ精神があります。毎号毎号の特色を変えていかないときついかもしれないけど、なかなかこの雑誌は売れてきているらしいです。動きとしては面白い感じですよね。

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■「東京人」

幅:最後に、究極のワンテーママガジンで、でもあまり手に取ることがないかもしれない雑誌ということで「東京人」です。
今回は「東京の橋100選」ということで、一番最初にピックアップされているのが、皇居の橋です。正門石橋ですね。この雑誌は、ワンテーマ・マガジンという話をしたときに、気づかないくらい自然にやってるんですよね。古川英夫さんが神田川クルーズをして、川から見る東京をレポートしていたり。もともと東京というワンテーマがあるところで、橋を取り上げて歴史的な部分を広げたりしているところがスマートで面白い雑誌ですよね。東京に住んでいる人は、知っている気がするようなテーマが多いんですが、実際に手に取って見ると実はディープで面白いんですよ。橋の構造まで解説していたりして。こういうものも忘れないでほしいですね。

Q:「東京人」は資料性がすごく高い雑誌ですよね。

幅:前にも話しましたけど、「昨日ミラノコレクションでこんな洋服がありました」というようなことは、これからはインターネットに任せていくしかないわけで、揺るぎの無い要素をピックアップして加工して、というところに雑誌の未来はあるのかな、と思います。その加工能力、編集能力が問われていく中で、わかりやすく読者に伝えていくというところが、ワンテーマ雑誌というジャンルに可能性があるのかなと思います。たとえばキャベツからスタートしてどこまでも広がっていく、そういうことにおもしろさというか可能性を感じます。
昔のワンテーマ・マガジンがあったり、ティボー・カルマンの雑誌みたいなものがあったりした上での話だったりするので、とくに編集者の人にはものすごく読んで欲しいです。
読者の方にもそういう視点で雑誌を読んでもらえたりするとうれしいなと思います。

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ワンテーマ・マガジン!前編


幅:今日はワンテーマ・マガジンに雑誌の未来が見えるかも!?ということでお話していきます。

■「おとなの絵本」

幅:実はワンテーママガジンというのはずっと昔からあったんですね。
もっとも極端で面白い例として持ってきたのが、「おとなの絵本」です。これはツムラ順天堂というバスクリンとかを作っている会社が出していたもので、売り物ではなかったんですね。
もともとはツムラ順天堂のプロモーションのための雑誌なんですけど、そんなにプロモーションっぽくもなくて、本当に自由闊達に作っているんです。いきなりバスクリンが出てくる、というわけではない。
たとえばこの号は、「緑」という特集で、緑を切り口としていろいろとアイディアを膨らませた記事を展開しています。緑の竹という詩があったり、バーバラ寺岡さんが「グリーンティと私」というエッセイを書いていたり、「緑を食べる」ということで富岡多恵子さんが軽いコラムを書いていたりします。緑に関するルポタージュ記事もありますね。
アートの紹介ページでは、たとえばマネの「草上の食事」という絵を、緑ということで取り上げています。別の号には「洗濯」という特集があるんですけど、それはゴッホの「アルルの跳ね橋」という、川べりで女の人が洗濯している絵が取り上げられていたりするんです。
アンケートのコーナーではいろいろな人、グラフィックデザイナーからシナリオライターから詩人という人たちまでが回答しています。すごいんですよ、かべくらゆうさくさんや剣持勇さん、澁澤龍彦さんなんかが緑について語っていたりするんです。
こちらの特集は「Q」で、なぜアルファベットの「Q」なのかはよくわからないんですけど(笑)、巻頭ではオバQとキューピーが仮想対話しているという記事があります。毎回付いているものなんですが、「Q30年史」という歴史年表もありますね。「ここが急(Q)所」というテーマで瀬戸内寂聴さんが対談をやっていたり、「球(Q)根栽培」について取り上げていたり、おもしろいですよね。どの記事も発想が自由すぎるんですが、ちゃんとした「Q」に対するドキュメンタリーみたいなものもある。バスクリンというリラクゼーション効果をもたらす商品とゆるーく絡めながらも、球ということでパチンコからボウリングから取り上げていたり、森茉莉さんのエッセイがあったり。
ひとつのテーマをもとに、歴史的なこともあれば、科学的なこと、文化的なことも取り上げていて、作っている人たちのプライベートもあったりします。

幅:要は、特集のテーマである「Q」ならなんでもいい。「緑」ならなんでもいい、ということなんですよね。
一応ツムラの製品がベースにはなってるんですけど、いかに自由に広げていけるかというところにワンテーママガジンらしい面白さがありますね。
これは発行が1960年代くらいです。ここにあるのは68年8月号と68年12月号ですが、つまり約40年前の雑誌なのに全然古びてないんですよね。

幅:僕がこの雑誌を見て思ったのが、ものすごく保有欲をあおられるという気がしたんです。だからこんなに40年間大切にされていたり、当時に比べて高い値段で取引されていたりするんですよね。「緑」みたいな一つのワンテーマをいろいろ広げて、でも一流どころの人が書いたり対談したりしていてやっていくことで保有欲が増していく、というところに雑誌の未来の姿が少し見えるのかな、と思いました。

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■「サントリー天国」

幅:同じような流れとして、サントリーの「サントリー天国」という雑誌です。これはすごく有名な雑誌です。
この号はめがね特集で、めがねのグラスと飲むグラスをかけてるんですよね。視力表みたいなものがあったりして面白い。サントリーは昔から雑誌の中での紙の使い分けをすごく気をつけてやっていて、こっちはコンテンツ重視、こっちはビジュアル重視という風にやっている。いろいろな有名どころの人がエッセイを書いていたり。大人な感じがする雑誌ですね。
めがねをかけてハンサムになろうというコーナーでは、いろいろな著名人に勝手にめがねをかけさせていたりします(笑)。

幅:なんかこういうワンテーマの昔の雑誌というのは、一つのよりどころになる気がします。今でも自分たちに近しいテーマというか、今見てもわかるものがこうして残っている。長い時代を経ても「Q」という文字がなくなることはないので、これからも永遠に読みつがれていくこともできる。生き永らえていく感じがすごくありますよね。

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■ティボー・カルマン

幅:一方海外でもこういうことをやっている人はいるんですが、僕がキング・オブ・ワンテーマだと思うのは、ティボー・カルマンというアートディレクターです。トーキングヘッズの「リメイン・ライト」とかのジャケットワークとかを手がけていた人なんですけど、この方は「COLORS」というベネトンが出している雑誌の1号目から13号目までのアートディレクター兼編集長をやっていた人なんです。僕、実はこの人ものすごく大好きで、一番好きな編集者といってもいいくらいです。
これは雑誌じゃなくて本なんですけど、これはヴィトラ・デザイン・ミュージアムという世界最大のチェアーコレクションを誇るところのために作った広報本なんです。でも、単なる広報本を超えて、人が座るということはなんなのかということを追求しているおもしろい本です。基本的には椅子をフィーチャーした本なんです。座るという一つのテーマでどこまででも広げていくところがおもしろい。
この人はなにがすごいって、圧倒的な写真や情報のチョイスにあると思うんです。「おとなの絵本」とか「サントリー天国」は、どちらかというとテキストでコンセプトを伝えているのに対して、これは誰が見てもわかる、言語を超えたビジュアルイメージで伝えようとしているところがすごいと思います。一応自分のところの商品やイームズの商品もあるし、ページが進むにつれてヴィトラっぽくになってくるんですけど、それがいやらしくない扱い方。商品を売ろうということではあるんだけど、人類の生活において椅子というのがどういう位置を占めているのかを伝えている。そういうところがものすごくしっかり描かれているんですよね。
実は90年代にエイズですでに亡くなっているんですけど、ティボー・カルマンという名前はぜひ覚えておいてほしいです。

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■「COLORS」

幅:で、そのカルマンが作っていた雑誌が、ベネトンから出ている「COLORS」です。今でも続いていて、ファブリカが作っています。僕がすばらしいと思うのは、やっぱり彼がやっていた1号目から13号目ですね。ワンテーマで、世界中のいろんなところからビジュアルをベースに集めてきた情報をもって、なんとなく一冊がメッセージになっているところがすばらしいと思っています。有名なオリベイラ・トスカニーニはプロデュースの方で、ティボー・カルマンが実質の制作ですね。トスカニーニは今ではよく知られていますが、ぜひぜひティボーも知ってほしいです。

幅:その「COLORS」は一時期日本語版も出ていたので、今回はそれを持ってきました。
たとえば日本版の創刊号は「タイム」がテーマだったんですけど、一般相対性理論みたいな難しいような話もありつつ、避妊薬のパッケージから曜日がわかるとか、脳みそがどう時間を司っているか、などを取り上げています。「時間」ということをいかに広げていくか、というのが面白いですね。きれいなもの汚いもの、世の中のヒエラルキーにおいて上にあるもの下にあるもの、すべてを等価に扱っていて、一つのテーマにまとめている。そして一冊としてはなんらかのメッセージになっている。

幅:こちらはおもちゃがテーマです。これもただおもちゃの羅列ではなく、おもちゃが我々の生活になにをもたらしているのか、どういう役割を果たしているのかということにすごく踏み込んで伝えているけど、決して言い切ってしまわない。言い切ってしまうとちょっと政治っぽくなってきてしまうんだけど、あえて言い切らないでいるカルチャー寸止め感的な立場がおもしろい。この辺の編集能力というかバランス感覚が優れていた雑誌だと思います。
今の「COLORS」はもっとテーマが抽象的になっているような気がして、解釈が抽象的になっているので、昔のものの方がおもしろいと思います。

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■「pin-up」

幅:さて、雑誌の未来をワンテーママガジンの中に見てみましょう、ということで、じゃあ今はどういう雑誌があるのか、というのがこちらです。
雑誌としてはよくできてるなーと思っている「pin-up」という雑誌です。表紙を見ただけでは、「何の雑誌?」と思ってしまうのですが、実はワンテーマとしては建築の雑誌です。ただタイトルからもわかるように、通常の建築雑誌ではなくて、もともと「ファンタスティック・マン」というゲイ雑誌があって、ものすごいお洒落なゲイ・ファッションを扱っていたものなのですが、そこの寄稿編集者だった方たちが作ったものです。ぱらぱらとめくっていくと、たとえば昔の建築の本を紹介したり、ファッションのページがあったりして、あまり建築建築していない。ファッションページも、ただのファッションではなくて、有名な建築家のコスプレのファッションですね。
ゲイの雑誌である「ファンタスティック・マン」出身の編集者が作ってるなー、というのがわかりやすい特集もあります。たとえば世界中のタワーを紹介している特集です。フリーダムタワーや上海のタワー、平壌タワーを男性器に模したフォトで構成しています。いかにもゲイっぽい(笑)。
でも、一応ちゃんとした建築家のインタビューもあったり。リック・オーウェンズというファッションデザイナーが作った家具を特集していたり。

Q:ゲイ的視点から見た建築雑誌ということですか?

幅:ゲイというわけではなく、建築というものをあらゆる多方面な視点から埋めていくというか、ファッションだったり写真だったりそういうもので語っていくという雑誌ですね。
写真の使い方もなかなか豪快で面白い。プロダクトの紹介を、あえて写真ではなくイラストでやったり。ものすごく多方向に広がっている。

Q:今でこそ、こういう特集をする雑誌が出てきてますが、これは先駆けなんですか?

幅:先駆けであり、かつ、もっともよくできている。頑張ってやりすぎているわけではない感じもすばらしい。
雑誌のサブタイトルとして「architectual entertainment magazine」という名前がついているんですが、建築の専門の雑誌ではなく、建築というものを一つのキーにしてあらゆる要素を集めてきました、という面白さがあると思います。
まだ二号目までしか出てないんですけど、二号目では大阪万博やSANAAを取り上げています。妹島和世さんの事務所である「SANAA」をホンマタカシさんが撮っているんです。
通常建築の雑誌のページに載る写真ってきれいなものなんですけど、これは全然違って、その辺にほったらかされている発砲スチロールを撮ってみたり、プロセスを映しています。こういうの普通は撮らないですよね。こんな雑然とした事務所なんだ、みたいな(笑)。
建築そのものではなく、プロセスだったり広がっていくいろいろなところを魅せるというコンセプトでやっている。ものすごく昔のものもあれば、最新のものもあり、インテリアやアートの要素もある。ものすごく洒落てるんですよね。これって雑誌として新しいな、と感心しています。平然と並列してる感じが強いと思うんです。

Q:どれくらいの期間で出てるんですか?

幅:これは相当適当に出してるらしいんですが(笑)、一応年に三回くらいということらしいです。
なんかこれを見たときの「おー」という感じが、「おとなの絵本」を見たときの感動に近いと思います。そういうところに雑誌の新しい未来というとちょっと言いすぎかもしれないんですが、なにか力を感じますね。

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中国雑誌事情・後編

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■中国アート事情

幅:これは完全に絵なんですよ。絵なんですけれど、リアリズムがすごい。ちょっと見ただけだと写真みたいです。モチーフ云々というよりは描ききる技術力がすごいですよね。
ちょっと話それちゃうんですけど、こういう面白いものが中国にはあるんですよ。
中国に行ったときに面白かったのが、本屋さんに行くと、絵の技法書、デッサンとか、ああいうもののコーナーがすごく大きいんですよ。日本だと、絵のコーナーには作品集とかの方が多くて、技法書なんかは一割にも満たないくらいの品揃えなんですが、中国は技法書が7割くらい。みんな絵の勉強をしましょう!という感じです。それで結果的にこういう本が出てきたりしてる。中国のアートは今、ものすごく景気がいいので、みんな絵を描いて一攫千金!みたいなところがあるみたいです。鑑賞するというよりも自分で描くものだというマインドのようです。

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■中国はエディトリアル・デザイン大国でした

幅:中国のひとたちは、雑誌を作るということにかけてはもともと非常にセンスがあるんですね。
実際にはべたべたなファッション誌もあるんですが、カルチャー誌の流れもきちんとあって、かっこいいエディトリアルデザインもしっかりあるし、30年前にはこういうものが普通に流通してたりという系譜もある。国家的なシステムがどーんと変わったこともあるんでしょうが、そこで断層があるわけでなく、リニアに繋がっている。雑誌というものを作るセンスは通底してますね。
扱ってるコンテンツもよく調べてあるわけですよ。たとえば日本だと「Casa BRUTUS」がピックアップしそうなコンテンツも、さらに深い部分まで掘り下げていたりして面白い。

Q:ビジュアルの発達というのは、広い中国で言語が少しづつ違うからというのもあるからなんでしょうか。

幅:そうですね、言葉で伝えるより絵で伝えたほうが早いと思ってる部分はあるかもしれませんね。そういう意味でも、まさに中国はエディトリアル・デザイン大国でした、と言えるのかもしれないですね。

幅:これはフリーペーパーですね。結構フリーペーパーはたくさんあって、街のスタンドに置いてあるんですが、中身はガイド的なものが多いです。

Q:これも街のスタンドに置いてあるんですか?

幅:そうですね。これは「Time Out」。

Q:「Time Out」もフリーペーパーなんですか?

幅:そうです。このへんもフリーペーパーですね。きらきらな感じで。
こんなにお金かけちゃって大丈夫?みたいな余計な心配をしてしまうほどの充実度です。

Q:紙もいいものを使っていて、とても無料とは思えませんね。

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■飽くなき作りこみ

幅:もう一つ、おもしろかったのが、雑誌じゃないんですが、版形が全部同じのこの本なんです。情報があまり入らなかった時代に、アミューズメントが欲しかったんでしょうね。日本のテレビ番組の「一休さん」の場面をそのまま撮影して、セリフをつけて本にしてる。これは農村部とかも含め、いろんなところにいきわたっていて、発行部数が何十万部とかすごいんですよ。これは35万部ですね。
これは007です。「ロシアより愛を込めて」とか、これは「賭場」って書いてあるんで、おそらく「カジノロワイヤル」ですかね。これは場面写ではなくて絵ですね。ここまでして読みたかったんだな、と感慨深い気持ちになります。1コマ1コマ手で描いてます。ものすごい手間がかかってますよね。

Q:中国ではフォトショップが出る前からアナログでやってたんですね。

幅:こういうのを見てると、忍耐強さを感じますね。自分がやりたいと思ったらやりきっちゃうんですよ。普通に考えたらものすごい大変じゃないですか。そういうすごさはありますね。

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■ビジネスというよりは情報伝達手段だった

幅:これは切手雑誌ですね。これもグラフィックが非常にうまい。なんで切手の雑誌でこんなに?という感じはあるんですが。笑。
これは旅行雑誌。40年間を経て、この雑誌がこうなりました。

Q:同じ出版社なんですか?

幅:当時は国が出していたんですが、今は民営化されていますね。ですが流れは一緒だと聞きました。
民営化はされた後も、国が長い間面倒を見ていた雑誌は続いてるものが多いらしいです。国営の当時は出版ビジネスというよりは、単純に情報伝達手段だったんでしょうが、それは逆に今みたいに、広告とらなきゃ!とかそういうプレッシャーがないですよね。クオリティに専念するような環境があったんだな、と思いますね。

Q:中国は本当に奥が深いですね。

幅:今だと、大学の出版部の豪華な設えの本などが注目に値するかもしれませんね。
ブッ飛んだものを大学の出版部が作っているというのは面白いですね。一番最先端なことを大学がやっているというのは、健康的な状況だと思います。

中国雑誌事情・前編

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■雑誌の最先端は中国にあった!?

Q:今回は中国の雑誌事情をお話していただきます。どういう特徴があるんでしょうか?

幅:取材で中国を訪れる機会があって、中国で発行されているいろんな雑誌を見たり、本屋さんをチェックしてみたりしたときに、これはすごい!と思いました。本当に元気が良くて、あっと驚くようなオリジナリティに溢れていたんです。
たとえば、この雑誌は基本的にカルチャー誌なんですけど、内容は政治のネタもあれば、ビジネスや車の特集もあるんですよ。他の雑誌を見ても、総合誌みたいなものが多い感じがしました。

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■とらわれてない発想

Q:これはすごいですね。中身もクリエイティブもおもしろい。この本でいくらくらいなんですか?

幅:たぶん600円くらいです。中国の雑誌にしては高い方ですね。これとかだと20元ですね。表紙がキラキラしているものが多いかもしれないですね。光りもの好きなのかな?

Q:それだけ印刷の技術が発達してるってことでもありますよね。

幅:あと、基本的に安いっていうのもあるでしょうね。
だからというわけではないけれど、いろんなしがらみに囚われていない感じがしますね。
これは日本の中島英樹さんの作品集なんですよ。大連工科大学が作っています。こういう本は通常和綴じにはしないですよね。この厚さ、1000ページ以上あるんです。なのに平気で和綴じしちゃう。こういうところにも、旧来の枠組みにとらわれてない感じがすごくします。

これも実はすごく面白くて、刺繍を見てください。あまり普通は装丁に刺繍を使ったりしないですよね。これはグラフィックを中心とした広告集なんですけど、刺繍糸も4種類くらい使い分けていて、そういう手間とかを顧みてない感じがすごくいい。
あきらかに見たことのないような設えを平気でやっているのがスゴイな、と。

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■常識はずれ?

幅:中国のひとたちは、「本作り」「雑誌作り」という既存の枠組みを外れてしまって、えい、作りたい!刺繍だ!と思うとやってしまう。
これも中国人アーティストの作品集なんです。ページ数はすごく少ないんですが、この中に一体何種類の紙を使っているんだ!?というくらいたくさんの紙を使ってる。こういう変な手間暇のかけ方が実におもしろい。
これも「BRUTUS」で紹介したんですが、挟み込みとかが面白い。街の写真集なんですが、子どもの落書きみたいなものを載せてみたり、こういうのを1ページごとに挟み込んでるんです。これはお祭りの写真ですね。台割とかの概念が、日本の僕らから見ると本当に自由ですよね。やりたいと思ったら、それをやって、すごく天然な気がする。

Q:すごく自由な中国人。

幅:脳の中がスパークしていて、すごくフリーマインドなんでしょうね。

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■紙は使い分けて当たり前

■紙は使い分けて当たり前

幅:中国の本屋さんは立ち読み全然OKなんです。立ち読みどころか座り読みも多いですし、もっとフトドキなやつらは床に座って弁当とか食べてる。一心不乱に勉強してる人もいます。本を写したりとか(笑)。ただおしゃべりしに来てる人も多い。いろんな人がいるので、駅のターミナルみたいな状態になってましたね。

幅:この本も特徴的なのが紙の使い方で、塗光紙使ってる部分もあれば、ザラ紙のところもあったりしています。写真のところでまた紙が変わっていたりと、コンテンツに応じて紙を使い分けている。広告は写真再現性を優先したり、テキストの方はやわらかい感じとか、とにかくこまやかなんです。紙が安いらしいんですが、こういう使い方はおもしろいですね。
この本とか、幅は真っ白なんですけど、こういうものがくっついている。こういうアイディアも面白いですよね。これは創刊したばかりのデザイン雑誌です。当然のように紙も、ページごとに違います。

Q:日本の雑誌でも、後ろと前は写真の紙で中はザラ紙、といったように、二種類までならありますよね。

幅:彼らは使い分けるのがきっと好きなんでしょうね。もうそれがスタンダード、みたいに考えているのかもしれません。

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■漢字も写真もかっこいい

幅:漢字のかっこよさでいえば、昔の雑誌は相当なかっこいいものがありますね。日本も戦時中の「FRONT」とかはそういうところがある。
彼らはずっと共産主義はステキだよ、という啓蒙をつい最近までやっていたわけで、そういう時代である60年代のものがかっこいい。

Q:ちょっと日本の雑誌の「太陽」っぽいですね。

幅:そうかもしれませんね。
これは「ルーマニア」という雑誌で、同じ共産圏だったルーマニアのすてきな生活を紹介するものです。こういうフォントとか色の入れ方とかが独特ですね。なんか妙にイラストとかもかっこよく見えます。ちょっと見たことが無い感じがすごくあります。
フォントがアルファベットじゃないのは日本も同じなんですが、漢字のフォントって日本ではここまでいじられてないと思います。現代のグラフィックデザインの方なんか、すごくいいヒントになるような使い方が多いですよね。

これは中国の経済状態をプロパガンダするために作られたものです。写真の一枚使いが特徴的ですね。輝かしい感じがすごく出てる。高炉の機械とかがかっこいい。

Q:涙出るくらいかっこいいですね。写真の色味とか。

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(後編へつづく)

Olive


Oliveは、マガジンハウスから1982年に創刊された女性向け雑誌。ジャンルとしてはファッション誌ではあったものの、雑貨やインテリアなどのカルチャー面での影響力も強く、隠れ男子ファンも多かったという話も残っている。

■オススメ・ポイント
80年代~90年代に思春期を迎えた女子(と一部男子)にとってはバイブル的存在の雑誌で、月二回のオリーブ発売日(「3日と18日はオリーブの日」!)には、町の本屋で立ち読みするのが楽しみだった。女子ブランドのカットソーなどを着こなす「武田真二・いしだ壱成」的男子の登場も、Oliveの影響によるものと言えなくもない。
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また、94年~97年には、当時絶大な人気を誇っていた小沢健二がエッセイを連載しており、筆者もそれまでは「特集買い」(好きな特集のときだけ買う)だったのだが、この期間だけは毎号買っていた。連載終了後は、ファンの間で単行本化が長く熱望されていたにもかかわらず、結局その夢が叶うことはなかった。現在、有志の手によりインターネット上でテキストを読むことはできるが、今からでも遅くありません、単行本化してください!マガジンハウス様!
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デザイン系ポータル!

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■magabonがオススメするデザイン系ポータルサイト10選!

現在e-マガジンの成長を見るには、どうしたらいだろう?
テキストとグラフィックそしてテクノロジーでメディアを作り上げるWebの世界では、デザイン系のポータルサイトをチェックするのが近道である。かつてWeb黎明期には、「いかにかっこよく見せるのか?」のみが、テーマであったように思える。

しかしWebが誕生し10有余年状況は大きく変化した。かつてのリッチコンテンツであればよかったデザインは、独りよがりに過ぎず、人と違った表現はWebにおいてはユーザーにとってただただ苦痛でしかない。リッチコンテンツ呼ばれたものはその見た目でなく、ユーザービリティー(使いやすさ)やアクセスビリティー(見やすさ)という側面が重視され、目に見えないものをデザインする方向へとシフトしたといえる。

ここで大きく見え隠れするのがテクノロジーとバランスの取れたデザインが活きているという事だ。ここ数年のWebデザインにおいてはグラフィックですまされる事はなく、スクリプトによってデザインも行われる部分も多くなっている。これは、建築に近いと行って良いだろう。アーキテクトに近い。Webのデザイン論でも多く語られる事だが、この部分は外せないのだ。

この部分を含めデザイン系ポータルサイト群は日々しのぎを削っている。もちろん見栄え以上に内容に依存する事は言うまでもない。
では、叡智がつまったデザイン系のポータルサイトのe-マガジンを紹介していこうとも思う。

1995年にローンチし、デザインサイトとしては老舗的な存在のCore77.com。現在も精力的に世界中のコントリービューターによって日々更新されている。デザイナーと企業のハブ的存在でもある。ソースネタであることが多い。

Core77.com

Kaliber10000は、サンフランシスコを拠点にクリエイターたちのコミュニティーと情報提供を行うプロジェクト。彼らが定義しているe-マガジン部分は毎回、アプリーケーションやスライドショー形式などで展開される。Cuban Councilによって運営される。

Kaliber10000

Illustration Fridayは、アメリカのイラストレーターPenelope Dullaghanによって始められたイラストレーター向けのe-マガジン。その名の通り金曜日に各種のアップデートが行われるのが特徴。イラストレーターの紹介にのみならず、イラストレーターのスキル向上を目指した作りになっている。

Illustration Friday

もちろんアメリカ以外にも世界にも多くのデザイン系e-マガジンは多く存在する。LOUNGE72™は、2002年にドイツでKai Heuser とAntonio Vasile 2人が始めたデザインポータルサイト。ドイツのみならず、EUそしてアメリカまで約20名のコントリービューターから毎日デザインに関する情報が寄せられる。登録制でデザインについて議論するページもある。ドイツらしいミニマルなつくりが特徴。

LOUNGE72™

BD4Dは、ByDesigns ForDesignsという略語の通り、企業や個人の枠組みに囚われず、デザイナーにとって有効なメディアにしようという目的の基にイギリスで展開されているe-マガジンである。数あるe-マガジンの中でも特徴には、Three Minute Madness™ (3MM)と題しイベントを多数開催し、イベント中心に立体的に展開している部分だろう。

BD4D

Desgin is Kinkyは、オーストラリアシドニー98年にAndrewが始めた個人デザインサイトが始まり。デザイン系e-マガジンの中では老舗の部類といえる。多くのデザイン系に影響を与えている。いたってオーソドックスな作りだが外せないe-マガジン。

Desgin is Kinky

90万以上ユニークユーザーを抱え、デザインのメッカ、イタリアはミラノから発信されるe-マガジン designboom。古典からプロダクト、コンテンポラリーアートなど人が生み出すデザインされたものを余す所なく紹介する。

designboom

NewWebPick.comは、ダウンロード型e-マガジンであるNWP E-zineのためのプロモーションサイトを担う。サイト自身で充分e-マガジンとしての役割を果たしているNWP E-zineは、460Pのボリュームで隔月リリースされる。一冊(ダウンロード)につきUSD $1.49年間購読だとUSD $3.99となっている。中文と英語版の2種類用意されている。ベースは、アジア香港に置いているようだが、Web活動においては、国は関係ないとコメントしている。日本人がいまいち飛び出せない言語の壁をアジアの人間は越えている。

NewWebPick.com

前回紹介したように日本でもデザインに特化したe-マガジンは、このところ活況である。新しくリリースされるものもあれば、老舗であるShiftが大幅なリニューアルを行うなど目を離せない状況だ。

CBC-NETは株式会社グランドベース運営する様々なデザイン・アート情報を集めたe-マガジン。デザインに関わる人間であれば必ず見ているくらいはずせない存在。。

CBC-NET

そのCBC-NET に追随するのがこの2007年4月、スタートしたe-マガジンPublic Image。運営は針谷建二郎率いるADAPTER。デザインのみならずそれに紐づく情報が怒涛のように日々更新されるのは圧巻だ。
Public Image

次回は、ヨーロッパを俯瞰してみたい。

この項つづく

「zine」は雑誌の未来像?後編

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■いきなりラリー・クラーク

幅: ニーブスはラインナップが面白かったと思います。キャスティングというか、スイスとその周辺だけでなく、日本の誰かと組んだりするところが絶妙なんですね。林央子さんの「here and there」なんかも6号からはここから出版されるようになって、あとコズミック・ワンダー、日本のファッションブランドとも本を出したりとか、なかなかちょっと独特なところがある。日本だけじゃなくアメリカもあればヨーロッパもあれば、みたいなのを始めたのがニーブスです。

みんなが知ってる名前、縦横無尽に世界からのチョイスで話題になるわけですよ。それでニーブスという出版社がフィーチャーされたり、zineという存在そのものがすごく可能性のあるものなんじゃないかと捉えられるようになったんですね。普通は自分たちが本を出そうとしてもできないんですよね。ラリー・クラークをキャスティングしたらいくらかかるんだ?みたいな。紙とかもこだわって、装丁もこだわって。でもニーブスは、ほんとにラリー・クラーク好きでなんかやろうよ、みたいな感じでスタートしている。でも本来雑誌って出版するパブリッシャーとその中身を形にするエディターとその二者さえいれば、できるわけなんですよね。

ていうところから、今のzineというのは原点に返るという動きでもあるんですね。ニーブスはそれで軽やかに出してしまって、ペースもゆるやかで、こういう小さいシリーズを一ヶ月に一度とか二ヶ月に一度出している。世界中のいろんな人たちに影響を与えています。

これとかセデルテックという、スウェーデンに住んでいる編集者というかプロデューサーたちが作っているzineなんですよ。ニーブスとほぼ同時並行なんですけど、これもピーター・サザーランドとかそういう写真家が、編集者の後藤繁雄さんを撮っていたりしています。なぜ後藤さんが?ってびっくりしたんですけど。笑。このセデルテックとかも、こういうことが可能なんだってことに気づいて、自分たちまわりのところ、プラスアルファ比較的世の中に通じている有名人もどんどん出していくという姿勢ですよね。

ニーブスも全部が有名人じゃなくて、たぶん1割くらいなんですよ。でもその一割がすごい強烈。だから残りの9割が全然知らない人の写真集でも、おもしろそうに見える。それが戦略なのか、ただのノリでそうなっているのかはわからないんですけど。そのへんはうまいなあと思います。

動画でみる(25秒)

■電話かけて、「なんか作ろう」

幅:あとこれは日本のユトレヒトという古本屋さんのものなんです。ユトレヒトは本屋さんなんですけど、ニーブスの代理店もやっていて、ニーブス・イズムみたいなものに感化されて、自分たちも作っちゃえみたいな。彼らがちょこちょこディストリビューションしてるんで、そんなに多いものじゃないですけど、ニーブスの本も日本で買えます。

ユトレヒトもそういうのに感化されて、たとえばノリタケというイラストレーターと組んだり、21/21のチョコレート展とかやったり、HIMAAというイラストレーターと組んだりして出してる。これももうめちゃめちゃお金かかってないらしい。好きなアーティストに電話かけて、「なんか作ろう」って言って作品集めてデザインしてバチっと止めてそれだけ。版形もほぼ同じ。
これも小山泰介さんという方の写真集とか。

これプリントきれいですね。

幅:でもこれとかも毎度毎度数百とかいう単位で、自分たちにできる範囲で、本業に支障のない程度にしか作ってないんですよ。今シリーズで月一冊くらいのペースで出しています。一冊1,000円くらいです。どれも同じくらいですね。全然ビジネス的な視点で考えてないんですよね、みんな。

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■メジャー出版社のzine

幅:これがみなさんご存知のビジョネアという雑誌、1イシュー、1クライアントという、雑誌という形式からは離れたビジョネア・マガジンという出版社が、ビジョネア・ブックジンを作り始めたのがこれです。

一回目はエディ・スリマンが撮ったコートニー・ラブの写真集。二回目はブルース・ウェバーの写真集です。ほんとにこんなに小さい版形なんですが、でも高い!さすがビジョネア!みたいな。笑。世界で2,500部です。zineというには部数は多いですが、zineを名乗ってるから認めてあげないと。笑。

ビジョネアっていうカルチャー全般において影響力のあるところが、世界各地で動きのあるzineというムーブメントに注目したりとか、時代の流れとして新たに紙媒体に注目したりとか、ポジティブでいい面を感じているからこういうものを出しているんじゃないかと思うんです。

よくできてますよ。やっぱりエディ・スリマンの写真はいいし、この写真集だとコートニー・ラブもいい。ある地平に達してる感があります。僕自身スリマンの写真が大好きなので、いいですね。でもたしか値段が80ドルくらいしたのかな。zineの値段じゃないな、という気がしたり。ちょっとした写真集ですよね。ひょっとしたらzineの初期段階というのが前に挙げたようなものだとしたら、これが盛り上がってくると違った形のzineもできてくるんだろうな、と。自ら名乗ってるんだから認めるか、みたいな。笑

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■ここからプロにいけて、プロもいつでも戻れる

幅:そんな感じで、最後に、僕が好きなzine、レイモンド・ペティボンのものです。イラストレーターというよりは現代アーティスト、ペインターとして有名になっている彼が出したものです。この人の絵は今はものすごく高いのに、そんなあなたもzineですか?みたいな。笑。

これは2006年に作ったものなのですごく最近なんですが、最近の作品を集めてきたりとか、本にはならないようなものや、風刺が効きすぎているものを集めたりして、450部限定で作ってたりします。

あとこれは、マーク・マンダースというアーティストが作った「ファイブ」というものです。彼は写真作品を使って、日常の中によく見えるいろんなものを使うんですけど、それを普段ない場所に変なバランスで置いていくことで作品を作る人です。これはその真骨頂だなと思うんですよ。人間が五人いるだけとか、椅子が五脚とか。それだけなんだけど、すごくかっこよく見える。5というものをテーマにこんなに作れるのか、と。ボール五個だけとか。これはプロの技ですよね。これは5文字の単語を並べてるのかな?読めないんですよ、これ。五文字の単語が五列あって、みたいなノリだと思います。

zineは誰でも作れるものなんだけど、第一線で活躍してるアーティストたちもいまだにこういう手法を愛しているということが面白いと思うんです。ここからスタートしてプロにもなれるし、プロもいつでもここに戻れると言えるんです。

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■紙にのせた瞬間がスタートライン

ビジョネアみたいに、いわゆる普通の商業雑誌もzineも出してるところってあるんですか?

幅:どうだろう。ないと思いますね。ビジョネアってそういう意味で新しいのかなと思いますね。zineの存在に注目するということ自体、出版社の感覚としては新しいなと思います。2007年はそういう動きが日本でもあると面白いですよね。

実は消費者の方、読み手の側はもっとほんとの声を聞きたがってるんじゃないかと思うんですよね。zineだと、わりとそのまま出るところじゃないですか、ちょっとこっ恥ずかしかったりするような素の部分が。でもこういうダイレクトな声って強いですよね。そういうのが増えてくるといいな。

雑誌ってやっぱり甘酸っぱい感じが必要なのかなという気がしますね。文字があろうが、イラストがあろうが、写真があろうが、ホッチキスで綴じた瞬間に、いや、たとえ綴じてなくても、紙にのせた瞬間がスタートライン、というか。そうなると雑誌の未来は、また違った見え方がしますね。

この項おわり

増殖するWebメディア

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■magabonが注目する「読み応えのある」e-マガジン10選!

前回も述べたが、デジタル分野の普及は、情報の発信者である制作側と受け手である読者との関係をイイ意味で曖昧にした。
特殊な技術であったはずの印刷や編集の敷居が下げられ、誰もが製作者として参加できるフィールドが確立されていた。専門家のものだった技術が解放され、ある一定以上のクオリティを制作することが可能になった。デザインが苦手だった表現者もデジタルツールの助けによって、ある程度のクオリティを手に入れることができるようになった。
さらにその利便性は増し、自分が思うことを文章にし、書きたいものを書き、世の中に伝えることが容易になった。WEBの世界ではさらに顕著で、印刷と言う紙媒体に欠かせないプロセスを飛び越えて、多くの人へ、情報を発信することがいとも簡単になったのだ。

もちろん構造がしっかりして、分かりやすく、安心して記事が読めるということが、編集された雑誌(e-マガジン)であることは言うまでもない。
システム的にはブログというCGMの登場によって、簡単にWEBの更新が出来るようになり、デザインだけではなく、構造上の編集作業を担ってくれる。
RSSなど新しく更新すればその状況が自動的に感知してくるものなども登場し、読まれると言う場は整えられつつある。
しかし、我々にもたらした福音は便利になった分、内容で勝負と言うことになる。WEBの世界にも雑誌のような骨のあるサイトも数多く存在する。ジャンルを問わず制作側の意図が伝わる秀逸なe-マガジンがおのずと注目されることになる。先ずは、WEBで読むことが出来る注目のe-マガジンを紹介しよう。

engadgetは、主にガジェットや新しいテクノロジーの紹介をサイト。2004年、1個人ではじめられたこのサイトは、AOLに買収され、いまや英語、日本語、スペイン語、中国語の4ヶ国語で展開されている。
ただの情報にとどまらずその即時性や先見性は、リスペクトすべき存在。デベロッパーなどの多くのIT関係者が購読している。

engadget

同様に日本では、gigazineがこのポジションに位置する。ガジェットギークが嗜好するトイやジャンクフードまでカバーする。元IT系編集者が2000年に始めたニュースサイトが始まりで、現在はブログ形式のe-マガジンとなっている。個人が始めた大きな力を持ち、世の中に影響していくということはメディアとして健全なことである。

gigazine

Whitesoapは、アメリカの複数のブロガーによるニュース評価、e-マガジン。ニュース系サイトにしてはデザインも凝ったつくりになっている。

whitesoap

PIXELSURGEONは、イギリスでJason ArberとRichard Mayが2001年にカッコイイものを作ろうとはじめたe-マガジン。充実したコンテンツは商業誌に引けを取らないクオリティである。

pixelsurgeon

個人と言えば、Tigerlilylandも、女性編集者・野中桃が個人で始めたサブカルチャーを扱うファンジンが発端。場所をWEBに変えつつも、今注目されつつあるZINEを取り扱う。その造詣と考察は深く、個人が大きい存在だと感じさせてくれるよい例である。

tigerlilyland

JunkMediaもアメリカのLaura Sylvesterという女性一人(現在は複数)で運営を始めた音楽を扱うe-マガジンだ。

junkmedia

Defunktionは、2003年にスタートした。元々フランスをベースに、アートイベントの情報を展開していたウェブサイトがe-マガジン化したもの。

defunktion

Mondomixは、1998年にフランスでローンチされた老舗音楽のe-マガジン。10万の定期購読者を抱えるフリーペーパーも発行している。音楽配信サービスも行う。メディアミックスを上手に活用している例だといえる。


mondomix

Fecal Face.comは、1998年に創刊されたArtZine。2000年にWEBに拠点を移したNYC、SF,Lanのアートを中心にカルチャーを扱うe-マガジン。商業的にも成功している好例。

fecal face

海外には、このように既にビジネスも成立しているe-マガジンも多い。

日本ではまだ少ないが、このPingMagは、良い例だろう。デザインやアートなどを扱うe-マガジンで、日本語版と英語版が同時にアップされるため、世界中のジャパニーズカルチャー・マニアから注目を集めている。ウェブ制作会社イメージソースの一部門だったが、現在は独立し、独自の編集部が運営している。日々アップされる記ことが読み応えのあるものが多く、WEBでは鬼門であった長い文章を読むことを容易にしたことは評価すべき部分である。

pingmag

次回は、デザイン系ポータルを中心に見てみよう。

この項つづく

「zine」は雑誌の未来像?前編

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■幅さんと一緒に雑誌の未来を考える

この連載では、「未来雑誌予想図」と題して、雑誌読みの会でもお馴染みのBOOKディレクター、幅さんと一緒に雑誌がこれからどうなっていくのかを考察します。

第一回は、「zine」ムーブメントから見る雑誌の未来、についてのお話です。

■zine(ジン)とは何?

まず「zine」について教えてください。

幅:「zine」のスタートはfan-zine、同人誌ですよね。今でもいろんな人が作ってるのですが、その歴史がだんだん進んでいって、80年代後半から90年代に入ると、マーク・ゴンザレスといった西海岸のスケーターたちが、彼らの作りたいもの、写真を撮ったりイラストを描いたり、詩を書いたり、ちょっとした情報を書いたり、そういうものを書いてそのままホッチキスでバチンと止めて、自分たちの手で流通させる、ということを始めたんですね。そこがzineムーブメントの一つの発端だと思います。

zineの作り方はすごくイージーなんですよ。コピー機でガーっとやって、遠足のしおりを作るみたいに一枚づつ重ねあわせて、ホッチキスでバチンバチンと留めるだけ、みたいな。流通も、自分たちの周りの人に配ったり、安い値段で売ったり、自分たちで売ってくれる本屋さんに持っていったりとかして、持っている情報をどんどん広めていく。今だと、そういう行為はブログとかソーシャルネットワークみたいなものに取って代わって、情報の流通も広く大きくなって劇的に進化しちゃってるんですけど、「zine」はそういうインターネットとも違って、そのままぎゅっと詰めこんでそのまま渡すという手のぬくもりがある「鮮度」がおもしろいんじゃないかと思います。

西海岸のスケーターたちが発端になっていたのは、西海岸という土地柄も影響しているんですか?

幅:西海岸だったというよりは、マーク・ゴンザレスという、絵も描くわ歌も歌うは詩も書くわ、という多芸で天才的な人がいたということが大きいんじゃないかな、と思います。彼がいたから、スケーターの間でzineというのがキタのかな、と。

これとか、ほんとに詩集なんですけど、ただノートに書き留めている感じです。黄色い紙で、写真が逆さまでも気にしないで載せたりとか、まあ、限りなく自由ですよね。これなんかキム・ゴードン(ソニック・ユース)が書いてたりしてます。普通だったら彼女に記事を書いてもらうとお金もかかるけど、ほんとに素のままのいろいろな人たちの言霊みたいなものが濃厚に詰まっている。
黄色一色で展開するアートワークもいいな、と思うんですよね。エンボス加工してみたり、細かなこだわりみたいなものに惹かれるんです。

要はzineって、一人ひとりのメッセージだと思うんですよ。雑誌でも書籍でも、ひとになにかを伝えるための手段で、それが強力になればなるほど、それはもうその人の作品集にみえてきちゃんうじゃないかと思います。

動画でみる(1分23秒)

■初期衝動のカタマリ!?

幅:これもマーク・ゴンザレスがハーモニー・コリンと一緒に作っていた詩集、というか落書きというか。読むと、「今日はきれいな景色を見た」とか不平不満とか、「あの女の子が好きだ」とかばかりなんですけど、それがなんかものすごく素敵というか、純度が高い。でももう今では二人ともプロフェッショナルとしてやってるんですが。

実際このあたりのzineって、どれくらいの量が流通してるものなんですか?

幅:ものによると思うんですが、めちゃめちゃ少ないと思います。大体100部とか。

じゃあもう本当に手で作れるくらいの部数でやってるんですね

幅:作るとき、とくに最初は部数とか決めないで作るらしいです(笑)。飽きるまで、紙が尽きるまで、コピー機が壊れるまで、腹が減るまで、とか(笑)。そういう風に、なにか日常生活に密接している感じ、自分の一部である感じが強いですよね。戦略とかなくて、自発的に作っている感じ、自分の思うがままに作っている感じがすごくいい。

このへんは落書きだかなんだかわからない。でもよく見るとなるほどねーと思ったり。で、こういうところに書かれていることが、たとえば後にハーモニー・コリンが手がける「ガンモ」っていう映画を想起するような文章が載っていたりとか。ベースというか、初期衝動というかが感じられますよね。

動画でみる(1分32秒)

■スイス発zine革命

幅:とまあ、そういう向こう見ずなやつらがですね、がんがんずっと作り続けてて、90年代後半からやってたんですけど、これらはあくまでもアメリカを中心にやっていたものでした。

それでそのあと、僕がzine史上、といってもzineにはまだ歴史もそんなにないんですけど、特筆すべき動きをしたと思うのは、スイスのニーブス・ブックスという出版社ですね。ニーブスはこのかわいらしいマークです。 ベンジャミン・ソマホルダーというスイス人が、もう一人のパートナーと一緒に作った出版社なんですけど、最初はzineしか作らなかったんですよ。でも、単なるzineだったらこういう小さいノリで、とても日本まで届いてこなかったと思うんですけど、彼らが面白かったのは、ずっと自分たち周りの写真家とかでやっていたんですけど、急に豪華なキャスティングでzineを作り出してしまったんですよ。

これが、写真家のラリー・クラークがかつて自分が作った作品集から自ら再編集して作ったzineなんですけど、これが限定150部。あのラリー・クラークが見たことも聞いたこともないようなスイスの小さな出版社から、こんなぺらぺらの紙で、コピーして綴じただけのものを出してしまったということで、最初は変な出版社だなあ、と思ったんですよ。

そのあとニーブスはいくつかシリーズで出して、キム・ゴードンやらホンマタカシが出してたりとか、世界中のおもしろい、でも独特の紙文化を愛しているようなアーティストを見出して出してくるんですよね。

動画でみる(1分37秒)

平凡パンチ

平凡パンチは、平凡出版(現マガジンハウス)から1964年4月に創刊された男性向け週刊誌。

「POPEYE」「BRUTUS」と一時代を作るマガジンハウス以前の潮流を担い、ファッション・情報・風俗・グラビア週刊誌で現在の男性週刊誌のパターンを作った。「メンズクラブ」を意識したつくり団塊の世代が読者層であった。集英社から発刊されている「週刊プレイボーイ」と人気を二分していたが、1988年に休刊。再び、1989年2月に全面リニューアルとして「NEWパンチザウルス」が創刊したが、わずか4ヶ月休刊。
飛鳥新社編集者赤田氏がオマージュをこめて「団塊パンチ」と言うムックを刊行。また平凡社から新書「平凡パンチ1964」に発刊当時のことが詳しく描かれている。

オススメ・ポイント

大橋歩によるメランコリックなイラストと、過激な内容のギャップがこの雑誌の最大の魅力だった。
今でも、ネットオークションや古本屋などで取引されており、1960~70年代にかけてのサブカルチャーの一大シーンを知るには最適!

平凡パンチ大橋歩表紙集」として書籍も発売されている。

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