中国雑誌事情・前編

2007年08月09日

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■雑誌の最先端は中国にあった!?

Q:今回は中国の雑誌事情をお話していただきます。どういう特徴があるんでしょうか?

幅:取材で中国を訪れる機会があって、中国で発行されているいろんな雑誌を見たり、本屋さんをチェックしてみたりしたときに、これはすごい!と思いました。本当に元気が良くて、あっと驚くようなオリジナリティに溢れていたんです。
たとえば、この雑誌は基本的にカルチャー誌なんですけど、内容は政治のネタもあれば、ビジネスや車の特集もあるんですよ。他の雑誌を見ても、総合誌みたいなものが多い感じがしました。

動画でみる(0分54秒)

■とらわれてない発想

Q:これはすごいですね。中身もクリエイティブもおもしろい。この本でいくらくらいなんですか?

幅:たぶん600円くらいです。中国の雑誌にしては高い方ですね。これとかだと20元ですね。表紙がキラキラしているものが多いかもしれないですね。光りもの好きなのかな?

Q:それだけ印刷の技術が発達してるってことでもありますよね。

幅:あと、基本的に安いっていうのもあるでしょうね。
だからというわけではないけれど、いろんなしがらみに囚われていない感じがしますね。
これは日本の中島英樹さんの作品集なんですよ。大連工科大学が作っています。こういう本は通常和綴じにはしないですよね。この厚さ、1000ページ以上あるんです。なのに平気で和綴じしちゃう。こういうところにも、旧来の枠組みにとらわれてない感じがすごくします。

これも実はすごく面白くて、刺繍を見てください。あまり普通は装丁に刺繍を使ったりしないですよね。これはグラフィックを中心とした広告集なんですけど、刺繍糸も4種類くらい使い分けていて、そういう手間とかを顧みてない感じがすごくいい。
あきらかに見たことのないような設えを平気でやっているのがスゴイな、と。

動画でみる(1分37秒)

■常識はずれ?

幅:中国のひとたちは、「本作り」「雑誌作り」という既存の枠組みを外れてしまって、えい、作りたい!刺繍だ!と思うとやってしまう。
これも中国人アーティストの作品集なんです。ページ数はすごく少ないんですが、この中に一体何種類の紙を使っているんだ!?というくらいたくさんの紙を使ってる。こういう変な手間暇のかけ方が実におもしろい。
これも「BRUTUS」で紹介したんですが、挟み込みとかが面白い。街の写真集なんですが、子どもの落書きみたいなものを載せてみたり、こういうのを1ページごとに挟み込んでるんです。これはお祭りの写真ですね。台割とかの概念が、日本の僕らから見ると本当に自由ですよね。やりたいと思ったら、それをやって、すごく天然な気がする。

Q:すごく自由な中国人。

幅:脳の中がスパークしていて、すごくフリーマインドなんでしょうね。

動画でみる(2分07秒)

■紙は使い分けて当たり前

■紙は使い分けて当たり前

幅:中国の本屋さんは立ち読み全然OKなんです。立ち読みどころか座り読みも多いですし、もっとフトドキなやつらは床に座って弁当とか食べてる。一心不乱に勉強してる人もいます。本を写したりとか(笑)。ただおしゃべりしに来てる人も多い。いろんな人がいるので、駅のターミナルみたいな状態になってましたね。

幅:この本も特徴的なのが紙の使い方で、塗光紙使ってる部分もあれば、ザラ紙のところもあったりしています。写真のところでまた紙が変わっていたりと、コンテンツに応じて紙を使い分けている。広告は写真再現性を優先したり、テキストの方はやわらかい感じとか、とにかくこまやかなんです。紙が安いらしいんですが、こういう使い方はおもしろいですね。
この本とか、幅は真っ白なんですけど、こういうものがくっついている。こういうアイディアも面白いですよね。これは創刊したばかりのデザイン雑誌です。当然のように紙も、ページごとに違います。

Q:日本の雑誌でも、後ろと前は写真の紙で中はザラ紙、といったように、二種類までならありますよね。

幅:彼らは使い分けるのがきっと好きなんでしょうね。もうそれがスタンダード、みたいに考えているのかもしれません。

動画でみる(0分57秒)

■漢字も写真もかっこいい

幅:漢字のかっこよさでいえば、昔の雑誌は相当なかっこいいものがありますね。日本も戦時中の「FRONT」とかはそういうところがある。
彼らはずっと共産主義はステキだよ、という啓蒙をつい最近までやっていたわけで、そういう時代である60年代のものがかっこいい。

Q:ちょっと日本の雑誌の「太陽」っぽいですね。

幅:そうかもしれませんね。
これは「ルーマニア」という雑誌で、同じ共産圏だったルーマニアのすてきな生活を紹介するものです。こういうフォントとか色の入れ方とかが独特ですね。なんか妙にイラストとかもかっこよく見えます。ちょっと見たことが無い感じがすごくあります。
フォントがアルファベットじゃないのは日本も同じなんですが、漢字のフォントって日本ではここまでいじられてないと思います。現代のグラフィックデザインの方なんか、すごくいいヒントになるような使い方が多いですよね。

これは中国の経済状態をプロパガンダするために作られたものです。写真の一枚使いが特徴的ですね。輝かしい感じがすごく出てる。高炉の機械とかがかっこいい。

Q:涙出るくらいかっこいいですね。写真の色味とか。

動画でみる(3分30秒)

(後編へつづく)

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