1)雑誌は身銭を切って、買え。
magabon::M.R.A.も今回で2回目です。今回も最新号で気になったものを、どんどん取り上げたいと思うのですが、今回初参加の箭内(道彦)さんは、ご自身もフリーペーパー『風とロック』を作っていらっしゃいますが、そもそも雑誌はお好き、ということでしょうか?
箭内:好きですね、大好きです。
magabon:かなり、出し続けていらっしゃいますよね。
箭内:ええ、そうですね。もともとデザイナーだったんで。
magabon:(笑)。過去形ですか
箭内:印刷が好きなんですよね。印刷って工芸だと思うんですよ。やっぱりほかにはないもの。ウェブとかと全く違います。あと、今思ったのですが、音楽のCDとかよく事務所に送られてくるじゃないですか。聞いてください、新しいのできました、とか。あれによって、僕自身の音楽に対する感覚が堕落し始めているなと思ってきているんですよ。
magabon:確かに。
箭内:身銭を切って買ってないから。もらったCDがあたりかはずれかなんて、あんまり大事なことじゃなくなってきている。3000円はらって、あちゃーっていう経験をしなくなったっていうんでしょうか。それは多分雑誌なんかも一緒で、買って痛い目に会えばいいと思うんですよね。結局、もらった雑誌からはあんまり情報を得られないんじゃないかな、って今思ったんですよ。自分で財布をいためて買うっていうか。立ち読みからじゃ何も得られないし、magabonからも何も得られないし。
magabon:・・・・・・。
箭内:あ、これからいい話にもっていきますよ。でね、美容室もダメでね。自分で買わなきゃだめだと思うんですよ。だからね、マガボンもちょい読みして終わりじゃなくて、雑誌は買わないと分からない。雑誌を読むって、本当に素晴らしい行為じゃないですか。ただ、コンビニの袋と雑誌の相性って悪いですね。まるっこくなっちゃって。あれを何とかしたいなーって。
magabon:何とかって、随分自発的ですね。
2)紙から生まれる、“行間”という意味。
magabon:幅君は、本棚で個性を出すっていうか、それが表現手段というスタンスでお仕事されいるんですよね。
幅:そうですね、本棚を編集する、という感じでしょうか。青山一丁目にある<BOOK246>って、よく旅の本屋って言われることが多いんですけれど、棚が地域ごとに分かれているんです。普通の書店で見られる旅ものの棚だと、ガイドブックと地球の歩き方、地図だけ、だと思うんです。でも、<BOOK246>は、もし南米だったら、ガルシア・マルケスの小説を入れてみたり、オスカー・ニーマイヤーの建築本を入れてみたり。セグメントを編集し直すっていう作業ですね。
箭内:なるほど、確かに本棚の編集、ですね。
幅:さっき仰っていた、雑誌は工芸っていうのにシンパシーを感じます。僕も、紙に印刷されている状態っていうのが良いんですよね。紙の上に乗っているから、文字にも行間が生まれるし、同じ言葉でも厚い紙に載っているのと、薄い紙に乗っているのだと全然ニュアンスが変わってくるじゃないですか。細かいニュアンスを伝えるのって雑誌ならでは。あと見開きの感じがいいですよね。モニターとは違って、単純に2倍になったってそれはそれで画期的だと思うんですよ。そういうナラティブなストーリーを入れていくっていうのが雑誌っていいなと思いますね。紙のにおいも好きですよ。
箭内:めくるって楽しいですよね。めくるってなんで楽しいんですかね。