007 西田敏行・是枝裕和・渡辺俊美・箭内道彦

No.007 西田敏行・是枝裕和・渡辺俊美・箭内道彦

映画「あの日~福島は生きている~」トークショー&上映会&ミニライブ(2)

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西:僕は、猪苗代湖ズが紅白に出た時のご家族のリアクションの、ドキュメンタリーも観たんですよ。おばあちゃん、いいおばあちゃんだったねー。あれ、おばあちゃんが“ふるさと”だよねぇ。

渡:そうですね。まあ、タフで、あったかくて、海育ちなんだけど、山に嫁に行って。いい母ちゃんです、ほんとに。

箭:俊美さんの、先ほど映画にも出ましたけど、まあ辛い話になっちゃいますけど。

渡:はい。

箭:富岡町の自宅は、何度かね、見には行ってるとは言ってたけど。

渡:そうですね。はい。

箭:やっぱり帰れる日がいつになるかっていうのは全く分からない。

渡:そうですね。帰りたいっていう人と帰らないっていう人の、二つにまず分かれてるっていうことと、あと、まあ僕が行ってわかるのは、まあ帰れないだろうなあっていうのが、いろんなものを、そういう、ライフラインもそうですし、相当な時間がかかるだろうなっていう。あとは、やっぱり、7キロですからね、原発まで。まだ収束してませんので、いろんな問題があるし。だから、まあ生まれた所の川内村は帰村宣言してます。それで、比較的線量も低いし、ほとんど除染も進んでいるし。だったんですけど、富岡町に関しては、やっぱり、常磐道が通らないとダメだろうし、いろんなものがあって、たぶん僕が生きている間はちょっと無理なんではないかなと思っていますね。

西:うん。

渡:でも、そういった中で、僕が何をすべきかっていうのを、常にやっぱりこうやって福島に足を運んだりとかして、ちゃんとしたそういう意見だったり、直接話して、ちゃんと自分で選択をして、行動して行きたいなっていうのは、常日頃思っています。

箭:今の選択っていう話でね、ほんとに、福島県のいろんな人と、日本中の人と話してて思うのは、みんなが一つなんかじゃなくてね、本当にいろんな思いや、いろんな悩みやいろんな状況があって、福島県、今190何万人かな、195万人の、195万通りの生活があって、だから、それをこう、さっき開演前にかかってた「Two Shot」って曲もそうなんですけど、これから自分と違う人を認めていくっていうことが、すごく大事になってくるような気がして。

渡:うん。

箭:で、僕はこの映画に是枝さんが力を与えてくれたことの、一番大きなことの一つに、「共感せよ」っていうことの強制ではなくて、「多様である」っていう、人がそれぞれに生きていて、そのことを認め合おうっていうメッセージに感じたんですけど。どうですか、是枝さん、それは一つテーマ、大きなテーマですよね?

是:そうですね、多様性って言ってもいいですし、意識してるのは言葉でいうと難しいんだけど、「多声的」っていう…、

箭:多声的。

是:「ポリフォニック」っていう言い方をする、いろんな声がしてくる、そのことにみんなが耳を傾けていくっていう、それがこう、作品として単音ではなくていろんな音が混じっていって、そのことが豊かであるっていう。あの、ドキュメンタリーが目指すのって、そういうこう、人の暮らしっていうのが、いかに多様であることが美しいのか、自分と違う価値観とか考えを持っている人と出会うためにあるものだと思っているので、そういうものに出会って、その声を持ち帰っていただいて、それぞれの暮らしに生かしていただくっていうのが、一番いい、作品と作り手と見た方の関係の持ち方なのかなと思いながら作っているんですけど。だから、力を与えてくれたというふうに言っていただきましたけど、逆に僕は、こういう形で声をかけていただいたことで、福島の問題、震災の問題に自分が関わっていく道を作ってくれたというふうに、僕は逆に感謝していますけど。

箭:これは、2011年の、先ほども出ました、9月の「風とロックSUPER野馬追」という、只見・奥会津から、いわきまでの6会場をね、一日ずつ、一日ごとに移動していったイベントで、この最中に映画にしようなんて全然思ってなかったんですよね。終わった次の日に、すごい6日間だったなって思ったし、音楽の力に驚いたし自分達も。で、そこに集まってくれた人達の表情が忘れられなかったんで、それをその時あのYouTubeLiveっていうインターネットの生中継で、200万再生くらい、リアルタイムでされたんだけど、ただこれはきちっと形にしなきゃいけないんじゃないかと思って、是枝さんに連絡をしたんですよね。だから、是枝さんは、僕何回か言ってるんですけど、あの場にいないんですよ。あの場にいないし、是枝さんのカメラはもちろん入っていない。それからどう映画になっていくかっていう、大変な無茶ぶりだと思うんですよね。ただ僕は、こっそり、是枝さんが僕からの仕事を断らないでくれるっていう約束を、なぜか是枝さんが、うっかり、昔しちゃって。

会場:(笑)

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