007 西田敏行・是枝裕和・渡辺俊美・箭内道彦

No.007 西田敏行・是枝裕和・渡辺俊美・箭内道彦

映画「あの日~福島は生きている~」トークショー&上映会&ミニライブ(5)

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♪「こたえよ」西田敏行 渡辺俊美


007_06.jpg西:まだちょっとしっかりと覚えてなくて申し訳なかったんだけど。

渡:いや、西田さん本当にありがとうございます。

西:まあこの歌が出来るプロセスをNHKのドキュメンタリーでもやってたんですけど、沖縄で避難された、県外避難された若いママとその心の葛藤といいましょうかね。私は本当にふるさとを捨てたわけじゃない、放棄したわけじゃないけども、なんか後ろめたい気持ちもないこともない、みたいな複雑な思い。でも子供を守るため、仕方ないんだ、沖縄に行っちゃったんだ、という自分がいた。その答えは間違っていたの正しかったのっていうことを、いつも自分に問いかけているというようなことを箭内さんにストレートにこう仰っていたんですね。それをちゃんと箭内さんが受け止めて、このような歌になって。だから飾った言葉が一切なくて、本当に彼女の思いがそのまま歌になってました。そのことに僕はとても、感銘を受けまして、福島県のみなさんは、みんな素晴らしい人だなと思いました。県内で一生懸命、歯を食いしばって、こらえている方も、県外行って、そういう思いの中で、一生懸命子供を守っている親のみなさんも、みんな、みんな素晴らしいです。それを思っていただきたいと、自分の支えにしていただきたいと本当に思います。頑張りましょう。

箭:ありがとうございました。それじゃああの、西田さん、そろそろ。はい。

西:じゃ、これからいわきのほうに行って、今度はマスコミ的な歌、歌ってくっから。

会場:(笑)


(西田さん、是枝さんと俊美さんと握手して、箭内と強く抱き合って退場)


箭:いやー。

渡:あったかいですね。

箭:いいおんつぁまだ。おんつぁげすじゃないよ。

渡:おんつぁま。明日から頑張ろう、俺も。

箭:あ、柳沼さんも?元気になった?

客:はい。

箭:西田さん帰ってもまだいてね。俺ら友達だからね、みんなね。だから西田さんのことは、直接お会いしたのは、あの、LIVE福島、2011年のが初めてなくらいだ、いやその前だ。今日の映画の一番最初にあの1本だけCM見ていただいたんですけど、あれは僕らが撮って来た郡山の駅前とかも映ってたけど、映像に、西田さんが映像を見ながら自分の思ってることを一回で、言ってもらったんですよね。原稿があるわけじゃなくて。で、会って、ああ西田さんいい人だなあなんて思って、とても。ただテレビで昔から見てた時はね、「西遊記」だったり「花神」だったり、いろいろあったけど、なんか、それ儲かってんじゃねえのお?とか、

渡:それが中通りなの(笑)。

箭:裏では悪い人なんじゃねえのって思っちゃってた、正直。あの、聞こえてないと思うけど。

渡:(笑)

箭:だからやっぱり人と人が会って話すってすごく大事だなあって改めて思います。

渡:ね。

箭:悪い人は本当はいないんだよねー。

渡:いやあ。本当ね、いい人っていうかあったかいんですよね。なんか嬉しいです。

箭:(お客さんに)昔からそうだったの?へー。初恋の人とかいるんじゃないの、そこに。

渡:箭内さん(笑)。

箭:西田さんと付き合ってたの?(笑)

会場:(笑)

箭:すみません。じゃあちょっと、よかったですね、西田さんに歌っていただけて。

渡:沖縄のそういう話も出ましたが、その後の話でですね、その人が琉球新聞に載ってましたが、お世話になってるばっかりでなくて、住んでいる所でお返しがしたいと、その移り住んだ所で返したいというか、そういう気持ちになってきているという。CARAVAN(風とロック LIVE福島 CARAVAN日本) でも思ったんですけども、どこでも、僕らは行って、聞いてくれてありがとうとか、話を聞いて、ありがとうとかあるんですけど、会場のほうからもそういう「ありがとう」みたいな、両方向からの感謝がCARAVANにはあって。

箭:そうですね。

渡:だから全然違う土地なんだけど、やっぱり一緒の雰囲気になって。そういう時になんか、あ、日本て一つだなって思ったり。やっぱり大きなことは出来ないかも知れないけど、こういうふうにコツコツやれたらいいなあというふうに思いますね。

箭:そうですね。あとは、僕、福島県から避難をしている人達に、割と僕が直接言うようにしているのは、福島にずっと、もちろん、普通に住んでいる人もね、そうやって違う場所に行く人も、「いろいろ言うな」って言ってるの。「福島にいる人に文句言うな」って言ってる。すごくそれが必要なことだなあと思って。「お互い文句言うな」って

渡:そうそうそう、お互い文句ですよ。

箭:「お互い文句言うな」って。

渡:わかります。

箭:是枝さん、ではそろそろ一曲(笑)。

会場:(笑)

箭:楽屋でそのこと言ったら、もうカンヌで賞獲った人じゃないみたいに、あわあわしちゃって。

是:本当に僕、音楽が出来る人に対して本当にもうコンプレックスとリスペクトがある。さっきも楽屋で雑談している時に、(俊美さんが)ちょっとつま弾くわけですよ。これがかっこいいのねー。ああいうことしてみたかったな、というふうに思いました、本当に。

渡:(笑)

箭:じゃあちょっともう1、2曲いきましょうか。

渡:そうですね。これはあの、岩手県の宮古というね、まああそこも津波でいっぱい流された所で、そこで、その人から教えてもらったスナックで、その人が、僕の友人が、歌って、すごくいい歌だなって。自然に、僕が、これは福島に持って帰って、福島の人に歌おうと思って、覚えてきました。吉幾三さんの歌です。「出逢いの唄」。

♪「出逢いの唄」渡辺俊美

箭:いいですね。最近まで吉幾三さんのこの歌知らなかったんです。知ってました?是枝さん。「♪テレビもねぇ、ラジオもねぇ」ですよね。あとは「♪ゆきぃぐにぃ〜」。

是:あと、「♪住み慣れた…」。

箭:あ、「♪住み慣れた…」。

渡:これは、なんか、ライブの最後にいつも歌っているらしいですね、一回も行ったことないんですけど。ただ、あの、これは僕、「男はつらいよ」が、あの、「寅さん」が好きで、男としては、「もう!」って思うんですけど、「いけよ!」とか思う寅さんなんですけど、でも、「男はつらいよ」の歌は、星野哲郎さんの歌詞なんです。この歌も星野哲郎さんの歌詞なんですね。「365歩のマーチ」とか。吉さんが曲を作ってっていう、いろんな僕の中での細かい共通点がありまして、一生懸命、あの、YouTube ではカラオケで酔っぱらってるおじさんの映像しかなくて、それを見よう見まねで覚えたんですけど。

箭:うん。

渡:吉さんから、事務所から楽譜もいただきまして、「どんどん歌ってくれ」と。

箭:あーいいですねぇ。

渡:はい。言われまして。

箭:青森ですよね、吉さん。

渡:はい。今日歌ったわけですけど。

箭:急に気になったのが…、近くで見たいなと思ってここに(西田さんの掛けていたイス)座ったんだけど、なんか、西田さんがいなくなって、この、西田さんの空気みたいなもの、残しておかなきゃいけないんじゃないかなと思ったんだけど。ここ空けて。

渡:空けて?あ、西田さんがここにいるかのように…

箭:見えるみたいな。

(席に戻る箭内) 

是:しまった。

渡:大丈夫です。

箭:あの、宣伝じゃないんだけど、先ほど言ったね、9月の21日、22日の猪苗代のミネロスキー場ってとこで、「風とロック芋煮会」という、こんな感じですよ、こんな、みんなあったかい感じで、芋煮汁食べたり、ハンカチ落とししたり。

渡:はい(笑)。

箭:今日、俊美さんと言ってたのは、漬け物バーっていうのをやろうって言ってて、いろんな漬け物を集めて、ハイボールとか日本酒とか飲んでもらうバーをそこに作りますんで、ぜひ来てもらいたいなーと思ってて、さっきそこでしゃべっててね、そこに布施明さんか沢田研二さんが来てくれたら、お母さん達も来やすいんじゃなかって言っててね。んで、明日いろいろ事務所とか調べようと思うんだけど、その前に、この中に、誰か何か繋がりがある方とかいたら早いなあとか思って。

渡:(笑)

箭:います?布施さんの知り合いの知り合いくらいの方。シクラメンのかほり。いないのかな。「誰なら呼べるよー」みたいなのないですか?みんなで作る芋煮会なので。え、誰?

客:秀吉BAND。

箭:あ、秀吉BANDね。出た、うーん。そうですね、秀吉BAND、いいですよ。秀吉BANDは来てないのかな、ここ、今日、本人は。ダメだな、来ないと(笑)。

渡:(笑)

箭:芋煮汁ってあるんですよ、知ってます?是枝さん。山形と宮城と福島の一部で、秋のレクリエーションで行なわれてる、何かな、けんちん汁とか豚汁でもない芋煮汁。山形だけは牛肉で作るらしいんですけど、それでまた無駄な言い合いしているの、福島と山形で(笑)。

是:仙台で食べたことある。

箭:あります?何か、その時思ったのは、去年も芋煮会、猪苗代でやって、いろいろ本当に違う人達がね、男もいる、女もいる、じじいもいる、ばばあもいる、あんちゃんもいる、おんつぁげすもいる。その人達が、みんな鍋の中に入ってね、おいしい汁になっている。人参もいる、豚肉もいる、味噌もいる、じゃないけど。で、料理なんじゃないかなと思ったんですよ、社会って。それでおいしい料理にありたいなあなんて…、ちょっと、いいこと言った感じじゃないですよ、別に。

渡:(笑)

箭:どうですか?是枝さん、一曲。

渡:(笑)

会場:(拍手)

是:あの、それよりは、あと、どれくらいあるの、時間。

箭:あ、あと20分。

是:あれ呼ぶ?

箭:あ、そうだそうだ。あのね、先ほどの映画の、総合監修っていう、総理大臣くらい偉い立場だった人が是枝さんで、その下で眠らずに編集をし続けて、是枝さんにダメ出しされ続けた、今中監督がね、今日、会場に来ているので、一言挨拶をしたいと、すごい、思っていると思うので。

会場:(拍手)

箭:いるの?いるの?どこにいるの?

是:今中が僕の代わりに一曲歌う、みたいな。

箭:いるの?

是:あ、いたいた。

箭:あ、裏から来た。

会場:(拍手)

(今中監督登場)

是:ここ座っちゃっていいの?(西田さんの席を指して)

箭:ここはダメ、ここはダメ、立って。立ってマイク持って。

今:初めまして、今中といいます。よろしくお願いします。

会場:(拍手)

箭:じゃあ、最初、肩ならしで、是枝監督のカンヌ受賞作の『そして父になる』の感想を簡潔にちょっと述べてみて。みんなが観に行きたくなるような、秋に。

是:これ、責任重大だな。

今:なんで、なんでそんなこと言うんですか。

箭:いやいや、なんて思ってるか知りたかった。

今:あの、非常に福山さんがかっこいい作品になっています。

会場:(笑)

是:いやいや、福山さんはね、すごいかっこ悪い役なんだ。(映画)観た?

箭:(笑)あれ、観てないの?

今:…ちょっとだけ観ました。

箭:そうなんですね、はい。あの映画「あの日〜福島は生きている〜」を作って、映画館ではやっていなくて、こういうホールだけで、是枝さんと相談して、上映の旅をしていますけど、どうですか?出来上がって人に届けて、何か感じていることとか。あそここうすれば良かったなとか。

今:それは毎回思いますけど、観るたびに、こうすれば良かったなってのは思いますけど、でもずっと観てるんですけど、編集の時から、素材から、いろいろ。でも、今、(映画に登場するのは)6家族くらいなんですけど、実際には10家族くらい取材に行ったりとかしていて、その中で構成上一番いいっていうのを探りながらやっていて。でも今日また久しぶりに観たんですけど、震災後の、2012年の、一年後の話なんですけど、そこからもう月日が流れていて。今日観たら、また違う見方ができたので、いわゆる今とその時を比べるというか、今この家族はもう2年経ってるから、二瓶さんとこの女の子は小学校に上がってたりとか、どんどん進んでいるし、ここと今何が違うのかなっていう見方を自分でもできたので、どんどん歳を取っていっても観れるんではないかなと僕は改めて思いました。

箭:その、なんていうんですかね、頑丈とかタフとも違うかも知れないけど、プレーンなのかも知れないけど、そのことってやっぱり、是枝作品の一つの、もう一つの特徴ですよね。古くならないっていうかね、この映画に限らず、生き続けるっていうか。

是:そういっていただけると嬉しいですけど、でもそれは歌も一緒だと思うんですよね。時代が経って聴いてみると全く違って、また違うおもしろさで聴ける、観られるっていうのが、やっぱり、すごく大事で。今日観ていただいたものも、最初は箭内さんも普通の映画と同じように劇場公開をしたいということで最初はスタートしたんですけど、途中から、やっぱりこういう形で、直接届けたいと、作品を挟んで、観た方たちとこういう形でお話をしながら届けていくというほうがこの作品には合っているのではないかという、箭内さんのほうから再提案があって、こういう届け方を選んだんですけど、紆余曲折あって。結果的にはすごく良かったような気がするんですよね、作品にすごく合った届け方で。やっぱ、そのへんは、コマーシャルのプランナーの感覚で、ね。

箭:(笑)まぁそうですかねぇ。

是:この作品を、どうみなさんのもとに届けるのが一番この作品に合っているのかというあたりをきっと判断されたのだと思うのですが。

箭:でも、興行収入49億円みないなのには、ほど遠いので(笑)、今日も出口の所で、また宣伝になっちゃうけど、フォトブックレット付きDVD、売っていますので。是枝さんがサインをしてくれることに、今、なりましたんで。

是:ぜひぜひ(笑)。

会場:(拍手)

箭:帰りに寄っていってください。チケットも置いてますんで。

是:「西田敏行って書いてください」って言ったら書きます。

箭:はい(笑)。あのね、でも、今、その、歌も是枝さんの映画も一緒ですって話をして、確かに昔の歌が違う聞こえ方をする、きっと本もそうかも知れないですね、昔読んだ時と、自分の成長だったり時代だったりで違う。だけど、全ての歌と全ての映画がそうなわけじゃなくてね、僕はあの、隙間っていうと言葉がちょっと違うかも知れないけど、いろんなことを考えるスペースがあるものが特に僕そうなるんじゃないかなと思うんですよね。例えば、批判でもなんでもないですけど、なんだろうな、「およげ!たいやきくん」は聞くたびに違う味わいがあるかっていうと、そうではないじゃないですか、すごく、あれは具体的に、全てを言い切って規定しているから。たぶん思いは強くあるんだけど、映画を観ながら、歌を聞きながら、好きな人のことを思い出したり、自分の明日を考えたりする、隙間を作っている是枝さんの映画の作り方は、とても僕は音楽的なんじゃないかなというふうに感じました。当たってます?

是:当たって、るといいな。

会場:(笑)

是:この作品に関していうと、正直言うと、たぶんまだ生々しいでしょ?本当は、古くなったほうがいいよね。だけどたぶん、すごく時間がかかるような気がするんですよ。そのことの責任は作った人間の一人としてというよりは、日本人としてそれは背負っていかなければいけないことだと思いますし、この作品の見え方が、どうこの先10年20年で変化していくのかということがすごく大事な気がします。そういうものを作れたということは、すごく良かったなと思っているし、僕もすごく思っています。

箭:だから古くなっていくっていうことが風化っていう意味ではあってはいけないけど、あんなことあったねって言えることが復興だし、それを受動していくんじゃなくて、能動的に僕達も出来ることをして行かなくちゃならないんじゃないかなと、今、是枝さんのお話を聞いていて思いました。じゃあ、俊美さんもう一曲いいですか。

渡:もう一曲ですか、はい、わかりました。

箭:監督、そこ座って大丈夫だと思います。西田さんも喜ぶと思います。

渡:ね、そうだったらいいなあっていうか、僕も本当、そういう思いで書いた歌がありまして、それは自分の富岡町の歌なんですけど、本当いつかみんなで笑顔で帰れる日が来ますようにっていう願いを込めて作りました。「夜の森」。

会場:(拍手)

♪「夜の森」 渡辺俊美

西:西田敏行
是:是枝裕和
渡:渡辺俊美
箭:箭内道彦

PROFILE

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