Archive for 6月, 2007

Olive


Oliveは、マガジンハウスから1982年に創刊された女性向け雑誌。ジャンルとしてはファッション誌ではあったものの、雑貨やインテリアなどのカルチャー面での影響力も強く、隠れ男子ファンも多かったという話も残っている。

■オススメ・ポイント
80年代~90年代に思春期を迎えた女子(と一部男子)にとってはバイブル的存在の雑誌で、月二回のオリーブ発売日(「3日と18日はオリーブの日」!)には、町の本屋で立ち読みするのが楽しみだった。女子ブランドのカットソーなどを着こなす「武田真二・いしだ壱成」的男子の登場も、Oliveの影響によるものと言えなくもない。
olive_naka2.jpg

また、94年~97年には、当時絶大な人気を誇っていた小沢健二がエッセイを連載しており、筆者もそれまでは「特集買い」(好きな特集のときだけ買う)だったのだが、この期間だけは毎号買っていた。連載終了後は、ファンの間で単行本化が長く熱望されていたにもかかわらず、結局その夢が叶うことはなかった。現在、有志の手によりインターネット上でテキストを読むことはできるが、今からでも遅くありません、単行本化してください!マガジンハウス様!
olive_naka1.jpg

デザイン系ポータル!

emag03.jpg

■magabonがオススメするデザイン系ポータルサイト10選!

現在e-マガジンの成長を見るには、どうしたらいだろう?
テキストとグラフィックそしてテクノロジーでメディアを作り上げるWebの世界では、デザイン系のポータルサイトをチェックするのが近道である。かつてWeb黎明期には、「いかにかっこよく見せるのか?」のみが、テーマであったように思える。

しかしWebが誕生し10有余年状況は大きく変化した。かつてのリッチコンテンツであればよかったデザインは、独りよがりに過ぎず、人と違った表現はWebにおいてはユーザーにとってただただ苦痛でしかない。リッチコンテンツ呼ばれたものはその見た目でなく、ユーザービリティー(使いやすさ)やアクセスビリティー(見やすさ)という側面が重視され、目に見えないものをデザインする方向へとシフトしたといえる。

ここで大きく見え隠れするのがテクノロジーとバランスの取れたデザインが活きているという事だ。ここ数年のWebデザインにおいてはグラフィックですまされる事はなく、スクリプトによってデザインも行われる部分も多くなっている。これは、建築に近いと行って良いだろう。アーキテクトに近い。Webのデザイン論でも多く語られる事だが、この部分は外せないのだ。

この部分を含めデザイン系ポータルサイト群は日々しのぎを削っている。もちろん見栄え以上に内容に依存する事は言うまでもない。
では、叡智がつまったデザイン系のポータルサイトのe-マガジンを紹介していこうとも思う。

1995年にローンチし、デザインサイトとしては老舗的な存在のCore77.com。現在も精力的に世界中のコントリービューターによって日々更新されている。デザイナーと企業のハブ的存在でもある。ソースネタであることが多い。

Core77.com

Kaliber10000は、サンフランシスコを拠点にクリエイターたちのコミュニティーと情報提供を行うプロジェクト。彼らが定義しているe-マガジン部分は毎回、アプリーケーションやスライドショー形式などで展開される。Cuban Councilによって運営される。

Kaliber10000

Illustration Fridayは、アメリカのイラストレーターPenelope Dullaghanによって始められたイラストレーター向けのe-マガジン。その名の通り金曜日に各種のアップデートが行われるのが特徴。イラストレーターの紹介にのみならず、イラストレーターのスキル向上を目指した作りになっている。

Illustration Friday

もちろんアメリカ以外にも世界にも多くのデザイン系e-マガジンは多く存在する。LOUNGE72™は、2002年にドイツでKai Heuser とAntonio Vasile 2人が始めたデザインポータルサイト。ドイツのみならず、EUそしてアメリカまで約20名のコントリービューターから毎日デザインに関する情報が寄せられる。登録制でデザインについて議論するページもある。ドイツらしいミニマルなつくりが特徴。

LOUNGE72™

BD4Dは、ByDesigns ForDesignsという略語の通り、企業や個人の枠組みに囚われず、デザイナーにとって有効なメディアにしようという目的の基にイギリスで展開されているe-マガジンである。数あるe-マガジンの中でも特徴には、Three Minute Madness™ (3MM)と題しイベントを多数開催し、イベント中心に立体的に展開している部分だろう。

BD4D

Desgin is Kinkyは、オーストラリアシドニー98年にAndrewが始めた個人デザインサイトが始まり。デザイン系e-マガジンの中では老舗の部類といえる。多くのデザイン系に影響を与えている。いたってオーソドックスな作りだが外せないe-マガジン。

Desgin is Kinky

90万以上ユニークユーザーを抱え、デザインのメッカ、イタリアはミラノから発信されるe-マガジン designboom。古典からプロダクト、コンテンポラリーアートなど人が生み出すデザインされたものを余す所なく紹介する。

designboom

NewWebPick.comは、ダウンロード型e-マガジンであるNWP E-zineのためのプロモーションサイトを担う。サイト自身で充分e-マガジンとしての役割を果たしているNWP E-zineは、460Pのボリュームで隔月リリースされる。一冊(ダウンロード)につきUSD $1.49年間購読だとUSD $3.99となっている。中文と英語版の2種類用意されている。ベースは、アジア香港に置いているようだが、Web活動においては、国は関係ないとコメントしている。日本人がいまいち飛び出せない言語の壁をアジアの人間は越えている。

NewWebPick.com

前回紹介したように日本でもデザインに特化したe-マガジンは、このところ活況である。新しくリリースされるものもあれば、老舗であるShiftが大幅なリニューアルを行うなど目を離せない状況だ。

CBC-NETは株式会社グランドベース運営する様々なデザイン・アート情報を集めたe-マガジン。デザインに関わる人間であれば必ず見ているくらいはずせない存在。。

CBC-NET

そのCBC-NET に追随するのがこの2007年4月、スタートしたe-マガジンPublic Image。運営は針谷建二郎率いるADAPTER。デザインのみならずそれに紐づく情報が怒涛のように日々更新されるのは圧巻だ。
Public Image

次回は、ヨーロッパを俯瞰してみたい。

この項つづく

「zine」は雑誌の未来像?後編

yoso02.jpg

■いきなりラリー・クラーク

幅: ニーブスはラインナップが面白かったと思います。キャスティングというか、スイスとその周辺だけでなく、日本の誰かと組んだりするところが絶妙なんですね。林央子さんの「here and there」なんかも6号からはここから出版されるようになって、あとコズミック・ワンダー、日本のファッションブランドとも本を出したりとか、なかなかちょっと独特なところがある。日本だけじゃなくアメリカもあればヨーロッパもあれば、みたいなのを始めたのがニーブスです。

みんなが知ってる名前、縦横無尽に世界からのチョイスで話題になるわけですよ。それでニーブスという出版社がフィーチャーされたり、zineという存在そのものがすごく可能性のあるものなんじゃないかと捉えられるようになったんですね。普通は自分たちが本を出そうとしてもできないんですよね。ラリー・クラークをキャスティングしたらいくらかかるんだ?みたいな。紙とかもこだわって、装丁もこだわって。でもニーブスは、ほんとにラリー・クラーク好きでなんかやろうよ、みたいな感じでスタートしている。でも本来雑誌って出版するパブリッシャーとその中身を形にするエディターとその二者さえいれば、できるわけなんですよね。

ていうところから、今のzineというのは原点に返るという動きでもあるんですね。ニーブスはそれで軽やかに出してしまって、ペースもゆるやかで、こういう小さいシリーズを一ヶ月に一度とか二ヶ月に一度出している。世界中のいろんな人たちに影響を与えています。

これとかセデルテックという、スウェーデンに住んでいる編集者というかプロデューサーたちが作っているzineなんですよ。ニーブスとほぼ同時並行なんですけど、これもピーター・サザーランドとかそういう写真家が、編集者の後藤繁雄さんを撮っていたりしています。なぜ後藤さんが?ってびっくりしたんですけど。笑。このセデルテックとかも、こういうことが可能なんだってことに気づいて、自分たちまわりのところ、プラスアルファ比較的世の中に通じている有名人もどんどん出していくという姿勢ですよね。

ニーブスも全部が有名人じゃなくて、たぶん1割くらいなんですよ。でもその一割がすごい強烈。だから残りの9割が全然知らない人の写真集でも、おもしろそうに見える。それが戦略なのか、ただのノリでそうなっているのかはわからないんですけど。そのへんはうまいなあと思います。

動画でみる(25秒)

■電話かけて、「なんか作ろう」

幅:あとこれは日本のユトレヒトという古本屋さんのものなんです。ユトレヒトは本屋さんなんですけど、ニーブスの代理店もやっていて、ニーブス・イズムみたいなものに感化されて、自分たちも作っちゃえみたいな。彼らがちょこちょこディストリビューションしてるんで、そんなに多いものじゃないですけど、ニーブスの本も日本で買えます。

ユトレヒトもそういうのに感化されて、たとえばノリタケというイラストレーターと組んだり、21/21のチョコレート展とかやったり、HIMAAというイラストレーターと組んだりして出してる。これももうめちゃめちゃお金かかってないらしい。好きなアーティストに電話かけて、「なんか作ろう」って言って作品集めてデザインしてバチっと止めてそれだけ。版形もほぼ同じ。
これも小山泰介さんという方の写真集とか。

これプリントきれいですね。

幅:でもこれとかも毎度毎度数百とかいう単位で、自分たちにできる範囲で、本業に支障のない程度にしか作ってないんですよ。今シリーズで月一冊くらいのペースで出しています。一冊1,000円くらいです。どれも同じくらいですね。全然ビジネス的な視点で考えてないんですよね、みんな。

動画でみる(1分39秒)

■メジャー出版社のzine

幅:これがみなさんご存知のビジョネアという雑誌、1イシュー、1クライアントという、雑誌という形式からは離れたビジョネア・マガジンという出版社が、ビジョネア・ブックジンを作り始めたのがこれです。

一回目はエディ・スリマンが撮ったコートニー・ラブの写真集。二回目はブルース・ウェバーの写真集です。ほんとにこんなに小さい版形なんですが、でも高い!さすがビジョネア!みたいな。笑。世界で2,500部です。zineというには部数は多いですが、zineを名乗ってるから認めてあげないと。笑。

ビジョネアっていうカルチャー全般において影響力のあるところが、世界各地で動きのあるzineというムーブメントに注目したりとか、時代の流れとして新たに紙媒体に注目したりとか、ポジティブでいい面を感じているからこういうものを出しているんじゃないかと思うんです。

よくできてますよ。やっぱりエディ・スリマンの写真はいいし、この写真集だとコートニー・ラブもいい。ある地平に達してる感があります。僕自身スリマンの写真が大好きなので、いいですね。でもたしか値段が80ドルくらいしたのかな。zineの値段じゃないな、という気がしたり。ちょっとした写真集ですよね。ひょっとしたらzineの初期段階というのが前に挙げたようなものだとしたら、これが盛り上がってくると違った形のzineもできてくるんだろうな、と。自ら名乗ってるんだから認めるか、みたいな。笑

動画でみる(52秒)

■ここからプロにいけて、プロもいつでも戻れる

幅:そんな感じで、最後に、僕が好きなzine、レイモンド・ペティボンのものです。イラストレーターというよりは現代アーティスト、ペインターとして有名になっている彼が出したものです。この人の絵は今はものすごく高いのに、そんなあなたもzineですか?みたいな。笑。

これは2006年に作ったものなのですごく最近なんですが、最近の作品を集めてきたりとか、本にはならないようなものや、風刺が効きすぎているものを集めたりして、450部限定で作ってたりします。

あとこれは、マーク・マンダースというアーティストが作った「ファイブ」というものです。彼は写真作品を使って、日常の中によく見えるいろんなものを使うんですけど、それを普段ない場所に変なバランスで置いていくことで作品を作る人です。これはその真骨頂だなと思うんですよ。人間が五人いるだけとか、椅子が五脚とか。それだけなんだけど、すごくかっこよく見える。5というものをテーマにこんなに作れるのか、と。ボール五個だけとか。これはプロの技ですよね。これは5文字の単語を並べてるのかな?読めないんですよ、これ。五文字の単語が五列あって、みたいなノリだと思います。

zineは誰でも作れるものなんだけど、第一線で活躍してるアーティストたちもいまだにこういう手法を愛しているということが面白いと思うんです。ここからスタートしてプロにもなれるし、プロもいつでもここに戻れると言えるんです。

動画でみる(2分46秒秒)

■紙にのせた瞬間がスタートライン

ビジョネアみたいに、いわゆる普通の商業雑誌もzineも出してるところってあるんですか?

幅:どうだろう。ないと思いますね。ビジョネアってそういう意味で新しいのかなと思いますね。zineの存在に注目するということ自体、出版社の感覚としては新しいなと思います。2007年はそういう動きが日本でもあると面白いですよね。

実は消費者の方、読み手の側はもっとほんとの声を聞きたがってるんじゃないかと思うんですよね。zineだと、わりとそのまま出るところじゃないですか、ちょっとこっ恥ずかしかったりするような素の部分が。でもこういうダイレクトな声って強いですよね。そういうのが増えてくるといいな。

雑誌ってやっぱり甘酸っぱい感じが必要なのかなという気がしますね。文字があろうが、イラストがあろうが、写真があろうが、ホッチキスで綴じた瞬間に、いや、たとえ綴じてなくても、紙にのせた瞬間がスタートライン、というか。そうなると雑誌の未来は、また違った見え方がしますね。

この項おわり

増殖するWebメディア

emag02.jpg

■magabonが注目する「読み応えのある」e-マガジン10選!

前回も述べたが、デジタル分野の普及は、情報の発信者である制作側と受け手である読者との関係をイイ意味で曖昧にした。
特殊な技術であったはずの印刷や編集の敷居が下げられ、誰もが製作者として参加できるフィールドが確立されていた。専門家のものだった技術が解放され、ある一定以上のクオリティを制作することが可能になった。デザインが苦手だった表現者もデジタルツールの助けによって、ある程度のクオリティを手に入れることができるようになった。
さらにその利便性は増し、自分が思うことを文章にし、書きたいものを書き、世の中に伝えることが容易になった。WEBの世界ではさらに顕著で、印刷と言う紙媒体に欠かせないプロセスを飛び越えて、多くの人へ、情報を発信することがいとも簡単になったのだ。

もちろん構造がしっかりして、分かりやすく、安心して記事が読めるということが、編集された雑誌(e-マガジン)であることは言うまでもない。
システム的にはブログというCGMの登場によって、簡単にWEBの更新が出来るようになり、デザインだけではなく、構造上の編集作業を担ってくれる。
RSSなど新しく更新すればその状況が自動的に感知してくるものなども登場し、読まれると言う場は整えられつつある。
しかし、我々にもたらした福音は便利になった分、内容で勝負と言うことになる。WEBの世界にも雑誌のような骨のあるサイトも数多く存在する。ジャンルを問わず制作側の意図が伝わる秀逸なe-マガジンがおのずと注目されることになる。先ずは、WEBで読むことが出来る注目のe-マガジンを紹介しよう。

engadgetは、主にガジェットや新しいテクノロジーの紹介をサイト。2004年、1個人ではじめられたこのサイトは、AOLに買収され、いまや英語、日本語、スペイン語、中国語の4ヶ国語で展開されている。
ただの情報にとどまらずその即時性や先見性は、リスペクトすべき存在。デベロッパーなどの多くのIT関係者が購読している。

engadget

同様に日本では、gigazineがこのポジションに位置する。ガジェットギークが嗜好するトイやジャンクフードまでカバーする。元IT系編集者が2000年に始めたニュースサイトが始まりで、現在はブログ形式のe-マガジンとなっている。個人が始めた大きな力を持ち、世の中に影響していくということはメディアとして健全なことである。

gigazine

Whitesoapは、アメリカの複数のブロガーによるニュース評価、e-マガジン。ニュース系サイトにしてはデザインも凝ったつくりになっている。

whitesoap

PIXELSURGEONは、イギリスでJason ArberとRichard Mayが2001年にカッコイイものを作ろうとはじめたe-マガジン。充実したコンテンツは商業誌に引けを取らないクオリティである。

pixelsurgeon

個人と言えば、Tigerlilylandも、女性編集者・野中桃が個人で始めたサブカルチャーを扱うファンジンが発端。場所をWEBに変えつつも、今注目されつつあるZINEを取り扱う。その造詣と考察は深く、個人が大きい存在だと感じさせてくれるよい例である。

tigerlilyland

JunkMediaもアメリカのLaura Sylvesterという女性一人(現在は複数)で運営を始めた音楽を扱うe-マガジンだ。

junkmedia

Defunktionは、2003年にスタートした。元々フランスをベースに、アートイベントの情報を展開していたウェブサイトがe-マガジン化したもの。

defunktion

Mondomixは、1998年にフランスでローンチされた老舗音楽のe-マガジン。10万の定期購読者を抱えるフリーペーパーも発行している。音楽配信サービスも行う。メディアミックスを上手に活用している例だといえる。


mondomix

Fecal Face.comは、1998年に創刊されたArtZine。2000年にWEBに拠点を移したNYC、SF,Lanのアートを中心にカルチャーを扱うe-マガジン。商業的にも成功している好例。

fecal face

海外には、このように既にビジネスも成立しているe-マガジンも多い。

日本ではまだ少ないが、このPingMagは、良い例だろう。デザインやアートなどを扱うe-マガジンで、日本語版と英語版が同時にアップされるため、世界中のジャパニーズカルチャー・マニアから注目を集めている。ウェブ制作会社イメージソースの一部門だったが、現在は独立し、独自の編集部が運営している。日々アップされる記ことが読み応えのあるものが多く、WEBでは鬼門であった長い文章を読むことを容易にしたことは評価すべき部分である。

pingmag

次回は、デザイン系ポータルを中心に見てみよう。

この項つづく

「zine」は雑誌の未来像?前編

yoso01.jpg

■幅さんと一緒に雑誌の未来を考える

この連載では、「未来雑誌予想図」と題して、雑誌読みの会でもお馴染みのBOOKディレクター、幅さんと一緒に雑誌がこれからどうなっていくのかを考察します。

第一回は、「zine」ムーブメントから見る雑誌の未来、についてのお話です。

■zine(ジン)とは何?

まず「zine」について教えてください。

幅:「zine」のスタートはfan-zine、同人誌ですよね。今でもいろんな人が作ってるのですが、その歴史がだんだん進んでいって、80年代後半から90年代に入ると、マーク・ゴンザレスといった西海岸のスケーターたちが、彼らの作りたいもの、写真を撮ったりイラストを描いたり、詩を書いたり、ちょっとした情報を書いたり、そういうものを書いてそのままホッチキスでバチンと止めて、自分たちの手で流通させる、ということを始めたんですね。そこがzineムーブメントの一つの発端だと思います。

zineの作り方はすごくイージーなんですよ。コピー機でガーっとやって、遠足のしおりを作るみたいに一枚づつ重ねあわせて、ホッチキスでバチンバチンと留めるだけ、みたいな。流通も、自分たちの周りの人に配ったり、安い値段で売ったり、自分たちで売ってくれる本屋さんに持っていったりとかして、持っている情報をどんどん広めていく。今だと、そういう行為はブログとかソーシャルネットワークみたいなものに取って代わって、情報の流通も広く大きくなって劇的に進化しちゃってるんですけど、「zine」はそういうインターネットとも違って、そのままぎゅっと詰めこんでそのまま渡すという手のぬくもりがある「鮮度」がおもしろいんじゃないかと思います。

西海岸のスケーターたちが発端になっていたのは、西海岸という土地柄も影響しているんですか?

幅:西海岸だったというよりは、マーク・ゴンザレスという、絵も描くわ歌も歌うは詩も書くわ、という多芸で天才的な人がいたということが大きいんじゃないかな、と思います。彼がいたから、スケーターの間でzineというのがキタのかな、と。

これとか、ほんとに詩集なんですけど、ただノートに書き留めている感じです。黄色い紙で、写真が逆さまでも気にしないで載せたりとか、まあ、限りなく自由ですよね。これなんかキム・ゴードン(ソニック・ユース)が書いてたりしてます。普通だったら彼女に記事を書いてもらうとお金もかかるけど、ほんとに素のままのいろいろな人たちの言霊みたいなものが濃厚に詰まっている。
黄色一色で展開するアートワークもいいな、と思うんですよね。エンボス加工してみたり、細かなこだわりみたいなものに惹かれるんです。

要はzineって、一人ひとりのメッセージだと思うんですよ。雑誌でも書籍でも、ひとになにかを伝えるための手段で、それが強力になればなるほど、それはもうその人の作品集にみえてきちゃんうじゃないかと思います。

動画でみる(1分23秒)

■初期衝動のカタマリ!?

幅:これもマーク・ゴンザレスがハーモニー・コリンと一緒に作っていた詩集、というか落書きというか。読むと、「今日はきれいな景色を見た」とか不平不満とか、「あの女の子が好きだ」とかばかりなんですけど、それがなんかものすごく素敵というか、純度が高い。でももう今では二人ともプロフェッショナルとしてやってるんですが。

実際このあたりのzineって、どれくらいの量が流通してるものなんですか?

幅:ものによると思うんですが、めちゃめちゃ少ないと思います。大体100部とか。

じゃあもう本当に手で作れるくらいの部数でやってるんですね

幅:作るとき、とくに最初は部数とか決めないで作るらしいです(笑)。飽きるまで、紙が尽きるまで、コピー機が壊れるまで、腹が減るまで、とか(笑)。そういう風に、なにか日常生活に密接している感じ、自分の一部である感じが強いですよね。戦略とかなくて、自発的に作っている感じ、自分の思うがままに作っている感じがすごくいい。

このへんは落書きだかなんだかわからない。でもよく見るとなるほどねーと思ったり。で、こういうところに書かれていることが、たとえば後にハーモニー・コリンが手がける「ガンモ」っていう映画を想起するような文章が載っていたりとか。ベースというか、初期衝動というかが感じられますよね。

動画でみる(1分32秒)

■スイス発zine革命

幅:とまあ、そういう向こう見ずなやつらがですね、がんがんずっと作り続けてて、90年代後半からやってたんですけど、これらはあくまでもアメリカを中心にやっていたものでした。

それでそのあと、僕がzine史上、といってもzineにはまだ歴史もそんなにないんですけど、特筆すべき動きをしたと思うのは、スイスのニーブス・ブックスという出版社ですね。ニーブスはこのかわいらしいマークです。 ベンジャミン・ソマホルダーというスイス人が、もう一人のパートナーと一緒に作った出版社なんですけど、最初はzineしか作らなかったんですよ。でも、単なるzineだったらこういう小さいノリで、とても日本まで届いてこなかったと思うんですけど、彼らが面白かったのは、ずっと自分たち周りの写真家とかでやっていたんですけど、急に豪華なキャスティングでzineを作り出してしまったんですよ。

これが、写真家のラリー・クラークがかつて自分が作った作品集から自ら再編集して作ったzineなんですけど、これが限定150部。あのラリー・クラークが見たことも聞いたこともないようなスイスの小さな出版社から、こんなぺらぺらの紙で、コピーして綴じただけのものを出してしまったということで、最初は変な出版社だなあ、と思ったんですよ。

そのあとニーブスはいくつかシリーズで出して、キム・ゴードンやらホンマタカシが出してたりとか、世界中のおもしろい、でも独特の紙文化を愛しているようなアーティストを見出して出してくるんですよね。

動画でみる(1分37秒)

平凡パンチ

平凡パンチは、平凡出版(現マガジンハウス)から1964年4月に創刊された男性向け週刊誌。

「POPEYE」「BRUTUS」と一時代を作るマガジンハウス以前の潮流を担い、ファッション・情報・風俗・グラビア週刊誌で現在の男性週刊誌のパターンを作った。「メンズクラブ」を意識したつくり団塊の世代が読者層であった。集英社から発刊されている「週刊プレイボーイ」と人気を二分していたが、1988年に休刊。再び、1989年2月に全面リニューアルとして「NEWパンチザウルス」が創刊したが、わずか4ヶ月休刊。
飛鳥新社編集者赤田氏がオマージュをこめて「団塊パンチ」と言うムックを刊行。また平凡社から新書「平凡パンチ1964」に発刊当時のことが詳しく描かれている。

オススメ・ポイント

大橋歩によるメランコリックなイラストと、過激な内容のギャップがこの雑誌の最大の魅力だった。
今でも、ネットオークションや古本屋などで取引されており、1960~70年代にかけてのサブカルチャーの一大シーンを知るには最適!

平凡パンチ大橋歩表紙集」として書籍も発売されている。

暮らしの手帖

暮らしの手帖昭和23(1948)年9月20日創刊。

隔月刊。企業広告を一切掲載せず、生活者視点での
記事発信を貫く孤高の「生活雑誌」。家電製品に課せられた過酷な商品テストから生まれる比較記事はメーカーに恐れられる。料理やファッション、医療などの記事も独
自色にあふれ、数十年前のバックナンバーを今見てもシンプルかつ斬新な理念に胸打
たれること必至。

誌面には主宰・花森安治が自ら作りだした文章やタイポグラフィ、
イラストに溢れ、独自の印刷スタイルもかみ合って、「暮らしの手帖」が提案する
「美しい暮らし」が楽しめる一冊でありつづけている。

2007年2月より編集長に松浦弥太郎が就任。
「暮らしの手帖を作ることは、開拓の仕事であります」と編集後記で語っている。ああ、ドキドキ。

Salon.com


salon.com
1995年11月サービス提供開始。平日毎日更新。本拠地はアメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコ。

音楽、本、映画などの批評記事からアメリカの政治問題まで幅広く扱う老舗オンライン・マガジンとして有名。他にもモダンライフとして恋愛関係についてやセックスについての記事、テクノロジーとして主にフリーソフトウェアやオープン・ソースなども取り上げているところは、サンフランシスコという土地柄を反映しているとも言える。

Salon.comの元編集長であるデイビッド・タルボットは、Salon.comについて「多くの読者に届けようとしている点、読者が本能的に求める記事を提供するという点において、Salon.comはスマートなタブロイド誌であると言えるだろう。」とコメントを残している。
2001年には有料コンテンツとしてSalon Premiumをローンチし、多くの購読者を得たが、2003年には財政危機を迎えている。2005年初頭にようやく黒字を出すことができた。

つねに最新のトピックがオリジナルの記事で取り上げられていることから読者からは既存のメディアとは一線を画したオルタナティブなメディアとしての評価を得ている。また、書籍批評のコーナーでの好評連載されていた作家紹介のコラムが「サロン・ドット・コム 現代英語作家ガイド」として出版され、日本でも翻訳書が販売されている。

Salon.com

LIFE

LIFE1936年にアメリカで創刊された写真報道雑誌。雑誌そのものは1883年に創刊されたものだが、タイム誌のヘンリー・ルースによって買収され、写真誌として生まれ変わった。

ロバート・キャパ、マーガレット・バーク-ホワイト、アルフレッド・アイゼンスタット他著名な写真家によるルポルタージュを大々的に掲載され、「グラフ雑誌」と言う概念を発明。アメリカを代表する雑誌である。1978年には切手にもなった。

また自動車や洋酒、タバコ、家電など一般大衆をターゲットにした広告ページはカラフルで魅力的。の秀逸な広告を切り抜き販売され、デザイナーなどのリーソースである事は有名な話。時代によって刊行サイクルやサイズが変更され、30年代~50年代 26.7×35.7cm、60年代 26.7×34.8cm、70年代 26.7×33.7cmと変貌を遂げる。

72年までは週刊誌、1973年から77年は年2回刊行、1978年から2000年までは、月刊誌2004年にフリーペーパーとして復活したが、2007年4月20日号を最後に休刊。ウェブ上にて、同誌の保有する写真約1000万点を閲覧可能とした。

life history

オフィシャル・ホームページ

2007年e-マガジンは、今?

e-mag01.jpg

雑誌を全方向位に研究応援する機関である

■雑誌NOW!

出版不況そして雑誌不況と叫ばれる今日であるが、いつの時代にも雑誌から学ぶことばかり。時代も閉塞感を打ち破るべく、世の中に風穴を開けてきたのは雑誌の存在他ならない。雑誌は人々に向けて多くの発明を生み、必ずや新しい時代を作り出すと私は思っている。いつの時代にも雑誌は先端を走る。そんな中雑誌は、媒体を問わず変化を始めている。今回取り上げるe-マガジンは、新しいカタチとしての注目株。e-マガジンを巡る研究を何回で紹介しよう。

雑誌は、テキストと写真そしてグラフィックが編集され紙の上に印刷され書店に並ぶものが一般のイメージであるが、元来ラディカルなものである。さらには何も紙に印刷されたものだけではなく、その時代にあったメディアを選び、情報を伝える事が雑誌の存在理由の根幹にはある。紙ベースに拘らずにメディアを越え様々なチャレンジをしている雑誌が数多見られるようになったの事実。新しいカタチで展開していくe-マガジンもそのひとつだ。

■e-マガジンとは?

e-マガジンの存在は、インターネットの登場以後、特にその動きが顕著である。コンピューターそしてインターネットのデジタル分野の普及は、製作側や読者にとっても大きな変化と恩恵をもたらした。
当研究所では新しいカタチの雑誌として、デジタルの技術を利用し、便利になった雑誌媒体を「e-マガジン」として、大きく定義したいと思う。
これまでも雑誌というメディアは、その時代にあったメディアと手を組んで多くのモノを産み落としてきた。大きさを伝えたく実際の大きさのものを添付した雑誌、声を聞かせるためにソノシートを挿入した雑誌。マルティメディア時代と呼ばれた90年代当初にもカセットマガジン、CD-ROMなど伝えたい情報サブカルチャーを扱ったものが多く存在した。今や情報を扱うメディアとしてインターネットは、即時性、可変性においては追随を許さないメディアである。で、あれば組まない手はないのである。紙の印刷に拘ることなく、全てを飲み込んでしまう、スケール感が雑誌の良心ではないかと思っている。その根底には資本主義である以上、手段を問わず、売り続けなければならない宿命がある。それ以上に制作側が、伝えたい事に手段を選ばないのが、雑誌らしいマインドであり、その上でe-マガジンの存在ははずせない。
今や世界を覗けば数多の数のe-マガジンが存在する。ネットだけのオンラインマガジン、オンライン&印刷物、PDFマガジン、専用のビューアーを使ったものなど様々だ。その雑誌メディアの柔軟さは、全てデジタルでもe-マガジンであり、乱暴だが旧来の紙だけでもe-マガジンと言える。次回からさらにe-マガジンを紹介しつつ、未来の雑誌像を描いていこうと思う。

ページトップへ