No.002 松田晋二・菅波栄純(THE BACK HORN)
(4)とにかくみんなで、福島でサボってるやつらに説教しに行く
箭内: とにかくね、このあともうちょっと少し詳しく話するけど今やっぱロックフェス多いじゃないですか。
松田: 多いですね。
箭内: いろんな地方でフェスが見れるってのはいいんだけど、やっぱそれは“場所”になってるだけで。
松田: わかってますよ、箭内さん。
箭内: “場所”になってるだけで、たくさん豪華アーティストをこうやって呼び集めてるだけで、なんかそのもうちょっとコンセプトを。
松田: メッセージ…。
箭内: うん、メッセージを。それが欲しいんじゃないかなと。だからこれはフェスって付けてるけどフェスじゃなくてね、なんかたぶん全然違うものになんじゃないかなと。
松田: なるほどね。
箭内: とにかくみんなで、福島でサボってるやつらに説教しに行くような日だと思うんだよね。
松田: でもだから今そう意味も含めると、さっき行った近県六県とか、もちろん東京から来てもらうってのもありですよね。
箭内: ありありあり、ありあり。
松田: なんかそういう人らが集まったライブってどんな感じなんだろうとか。逆に俺たちがそういうふうに言ってる福島県の人たちって、どういう人たちなのかなっていうものに興味持ってもらう、ま、ちょっと観光…。
箭内: 引っ込み思案な目立ちたがりだからね、みんな。
松田: ですよね、根には絶対なんかやってやりたいっての思ってる。福島県人は基本的に。
菅波: そうそう。
松田: だから結構中学生のときとか、ニューヨークヤンキースの帽子かぶるとなんかそれだけで怒られたりするんですよね。
箭内: (笑)
松田: 「なんだよおめー、俺が先にニューヨークヤンキース買ったんだよ。なんでかぶってんだよ」と。
菅波: そういうのあるある。
松田: だからっつってレッドソックスとかにすると、またかぶってたりとかして怒られる。
菅波: 怒られる。(笑)
松田: “俺だけ”でいたいんだよ、みんなが。
箭内: 白いベルトしてるだけで。
松田: ありましたね。(笑)
箭内: 白バンしてるだけで。
松田: ありましたね。おれ一番最初やったの白バンみたいの。
箭内: おれもちょっと額が天然の剃り込みっぽくなってて、なんだよお前って言われたもん。剃り込みしてる人に。
松田: たぶんけっこう栄純もそういうタイプなんですよ。そういうおしゃれとかでやってるわけじゃないのに、そういうふうに勘違いされて、いろいろ言われるみたいなことなかった?
菅波: あったな。ブルズのバッシュ履いてたな。
松田: (笑)それもだめだったんだ。
箭内: あーいうのやらせないってなんなんだろう。なんか呼び出していちいち。(笑)
松田: だからたぶんおしゃれなやつは、なんか俺だけでいいみたいな、おしゃれの奪い合いみたいなのはあった。
菅波: おしゃれの奪い合い。
箭内: だから一つだけっていうものをすごい大事にするよね。みんなと一緒じゃいやなんだな。
松田: だからエアマックスとかもそうでしたし。
箭内: おもしろい。同じで嬉しいってのってすごいあるけどさ、若いうちほんとは。それと逆行してるね、福島は。
松田: しかも東京とかだと、別に同じのでも違う着方があるとかさ、こういう組合せみたいなので個性を発揮していくんだけど、かぶったらだめって。(笑)
箭内: まねすんなって。まねすんなっていうのあれ面白いね、あの県民性。
松田: 普通だったらまねしたい、ね。ギャルだったらこれが流行ってる、スケーター流行ってるとかいろいろあったはずなのにね。
箭内: 俺も、俺も高校の頃、長靴履いてたのね、よく雨の日とか。
松田: はいはい。
箭内: 長靴は機能的だし、いいじゃないかと。俺ら「農スパ」って呼んでて、長靴のこと。農業スパイク。
松田: あ、はいはい、黒い?
箭内: そう黒いやつ。ここにゼブラみたいな、馬を正面から見たみたいな三つ並んでるやつ。農スパ履いてなんか面白いなって、風呂敷に全部弁当包んで持ってってた。紫の風呂敷に。そしたらやっぱり他にもやってるやつが高校にいて、やっぱ「まねすんな」って思ったもん。いやなんだ。
松田: すんませんそれは、結構どれくらいのギャグ的な感じ…じゃなく結構本気な…。
箭内: 自己表現なんだな、あれが。俺は風呂敷に着目してるのが、「長靴なんかかっこ悪くねえじゃねえか」みたいな。
菅波: わがるわがる。
松田: いや俺、すんません、また少し話が長くなっちゃうかもしれないですけど、昨日原宿に買い物行って来たんですよ、たまたま服買いに行こうと思って。そしたら下駄履いて、なんか背中に「我此処に在り」みたいな筆で書いたTシャツを着てるやつがいたんですよ。そしたらこっち側からたまたま、ラフォーレの前あたりで、その下駄じゃなくて雪駄みたいなの履いて、上にボロボロじゃなくてなんかベストみたいなヤツにまた字を書いて、字の感じは違うんですけど、書いてるヤツが来た瞬間に、俺は見たのよ、三秒くらい両方の人が止まった!一瞬。
箭内: 三秒長いよ。(笑)
松田: 二秒くらいですかね? 俺はそこで見てたっていうか待ってたのよ、人を。そしたらパッとなんか同じような人が来たなっと思って俺は友達かなと思って、おーいみたいな感じで行くのかなと思ったら二秒だけ止まって、スーッとすれ違って行ったその二秒間が、なんかそのさっき箭内さんが言ってた、
菅波: 原宿と福島、つながってる。
松田: つながってる、いまね。
箭内: でもそうだこれ、県民性の一つだよ。
松田: それってそう考えると熱さはあるんですね。「俺だけでいたい」っていうか。「自分を大事にしたい」っていうか。
菅波: あっかもな。
箭内: 菅波栄純なんかそんな固まりに見えるけど。
菅波: なんか俺、
箭内: 天然だけどね。
松田: 昔からそうだったの? 菅波栄純。
菅波: まあ、呼び出されんのは多かったよね、逆に、俺は自分で打ち出してないつもりなのに。
松田: 打ち出してるように見えると、見えてしまうと。
菅波: 下駄とか履いてたもん、俺、実際。制服に下駄とか。
箭内: 来た来た。でもそうなんだよね。
松田: そうっすね。
箭内: おれも高校のとき、一年のとき三年生の応援団長が。
松田: 応援団長こわいですよね。
箭内: 応援団長が黄色い自転車乗ってたのね。で、ハンドルがちょっとチョッパーに。
松田: カマハン、はいはい。
箭内: で、たまたま俺が乗ってた自転車も黄色で、半分くらいチョッパーになってて。やっぱそれちょっとまずいんじゃないかってみんなに言われて。自転車、色塗ったほうがいいんじゃないかって。チョッパー逆にしてドロップハンドルに。
一同: (大笑)
松田: 周りが気つかってくれる?
箭内: そう周りが気つかった。
松田: で、通したんですか。
箭内: 通したんだけど。やっぱりだけど一回、応援団長の自転車と衝突したことあった。
菅波: 最悪じゃないすか。
松田: そんなのやだな、俺。
箭内: ぐちゃぐちゃになっちゃって。応援団長の自転車が。やベーって思ったら団長が、「その自転車貸せ」って言って。俺の自転車で登校してった。俺は応援団長の自転車、学校まで引っ張ってったよ。遅刻したね。 まあ、そんななかね?
松田: 俺大好き、そういう話、もー。(笑)
箭内: 続きいろいろやろうよ。前夜祭とかで。
松田: 五時間ぐらいできるかも。
No.002 松田晋二・菅波栄純(THE BACK HORN) 『福島ロックンロール会議』
松田晋二・菅波栄純(THE BACK HORN)
松田晋二 Shinji Matsuda THE BACK HORN リーダー/ドラム
1978年生まれ。東白川郡塙町出身。白河高校卒。
菅波栄純 Eijun Suganami THE BACK HORN ギター
1979年生まれ。須賀川市出身。日大東北高校卒。---------------------------------------------------
箭内道彦 Michihiko Yanai クリエイティブディレクター
1964年生まれ。郡山市出身。安積高校卒。
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