2012.10.20 OA 【椎名林檎さんスペシャル】全文掲載
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★放送時間
TOKYO FM:毎週土曜25:30-26:00
JFN:毎週土曜27:00-27:30
Datefm:毎週日曜25:00-25:30 [new!]
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(箭内)
「風とロック。箭内道彦です。こんばんは。
今週のラジオ風とロックは、ホットワード行きますよこれ。『椎名林檎スペシャル』!
…呼び捨てにしたくないわ。『椎名林檎さんスペシャル』です。
先月、椎名さんには一度、ゲストで登場していただきましたが、
そのときは、椎名さんが音楽を担当した、野田秀樹さんの舞台『エッグ』のお話がメインでした。
『エッグ』
作・演出:野田秀樹 音楽:椎名林檎
池袋 東京芸術劇場プレイハウス 10月28日(日)まで
http://www.nodamap.com/productions/egg/
(箭内)
「その時の収録は、あっちいったりこっちいったり、ふくらんだりしぼんだり、
1時間以上に及びましたが…今からその、未放送部分をオンエアします!」
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(箭内) (※唐突に) …それではいきますか。
(椎名) んふふ…何か勝手な人。
(箭内) ちがう進行しなきゃと思って!
(椎名) にしてもねえ何か…お優しい方。
(箭内) そうじゃなくて、あのね…オーディションとかデモテープ審査みたいなのを
師匠(亀田誠治さん)と一緒にやったりしたことがあって。
(椎名) あ、そうでしたね。おつかれさまです。
(箭内) そのとき、(オーディション参加の)女性の9割は、
椎名さんからどうやって逃げるかの戦いをしている人たちなんですよ。
で、逃げられてないんですよ、みんな。
(椎名) それはEMI関係のオーディションだっただからじゃないですか?
(箭内) いやそれだけじゃないと思います。でも、たくさん(椎名さんの)新作を僕ら聴き続けたいなと…
あ、何か番組終わるようなムードになっちゃった(笑)
(椎名) そうですね(笑)
(箭内) この
(椎名) あの
(箭内) あ、すいません。
(椎名) どうぞどうぞユアペースで(笑)
(箭内) 俺椎名さんについていこう、今から。ユアペースでお願いします。
(椎名) ユアペースで。
(箭内) ……………
(椎名) っていうと黙っちゃうでしょ?それがユアペースだって言ってるの(笑)
(箭内) そっかそっか(笑) …………
(椎名) 助けて~(笑) 面白い(笑)
(箭内) すいません!えーそしたらですねー!(笑)
始めても黙ってもユアペースだったらどうしたらいいんですか!(笑)
(椎名) 何かグルーブが独自でいらっしゃいますよね、やはり…
お顔の表情から読み取れないって言うか(笑) 呼吸とか。
(箭内) そんなことないですそんなことないです。
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(箭内) 椎名さんってその…ちゃんと仕事をするっていうところと、
ちゃんと芸術をするっていうところが、両方ありますよね。
(椎名) そんなー…目指してますけど。
(箭内) あ、やっぱ目指してるんだ。
(椎名) どっちかというと、商品にするっていうことを気を付けないとっていつも思ってますけど。
(箭内) そっか、芸術にはわりと、ほっとくとそっちになっちゃうから商品にどうするかってことと、
そこで求められているものってことと。
(椎名) ポップスの時にまず、最初っからすごく、「声を覚えてもらわなきゃいけない」だの、
デビューするっていうことはそういうことだ、っていうセオリーがあるでしょ。
そのセオリーに対して、「個性的だね」とか「マニアックな」とか「サブカルの女王」的なことが、
もうひとりでに、ほしいままに。
「そんなつもりないのに!!」と思って。そんなことは欲しかったことじゃなくて、
みんなに、名も無いものとして親しんでもらうってことのほうが大事だって、
最初から思ってたのにどうして、ってところからすると、普遍性をとにかく。
最初から求めてるつもりだったんですけど、そういうふうに思ってますよね、何かと。
(箭内) でもそれが今、ストレスはあるかもしれませんけど、基本的には良い状態で外に出てますよね。
(椎名) いや、もっといけると思ってますけど。
(箭内) おっ!
(椎名) もっと行きたいですね。
(箭内) もっと行くために必要なことってなんですか。
(椎名) もっと自由にならないといけないなと思って。
たとえばこの間、「アルファードに乗ってる人たちってどういう気持ちなのかな」って思った時に、
それを東京でパッと買う人の気持ちが私にはまだ分からない。(自分が)不自由だから。
「なんでぇ~もっとカワイくなきゃやだ☆」とか「服に合わない!!」とか、
そんなことを考える人間だから私は弱いんだなとか。
そういうこととかさ、『こだわり』って言うけど、『こだわり』ってつまり、弱点でしょ。
それがね、ホントに私がダメなんですよね、捨てられなくて。
(箭内) いや、俺…アルファード…に乗ってますよ(笑)
【注:アルファードってこんなクルマ】
(椎名) そうなんじゃないかなと思って。パッと選べるってすごいなって思って。
だって色んなものに対して、「こうじゃなきゃいけない」って思ってらっしゃるはずなのに、
すごく機能性とかにパーンとシフトできる。
「ここではこう、ここではこう」って自由になれてるってことでしょ、それ。それには超憧れてる。
(箭内) アルファードのタクシーに乗ったんですよたまたま。乗ったら、
「うわーこれすげー!なんだこりゃー!」と思って(買った)。
(椎名) 乗り心地?
(箭内) うん。
(椎名) ってなれるじゃないですか。そういうところが…
(箭内) アルファードの黒に乗ってたら、カメラマンのうっちー(内田将二さん)に
「箭内さん、黒ダメだよ!箭内さんには白に乗ってほしい」って言われて、
次の日に白に変えました。だからよけいダメですね俺。
(椎名) いいじゃないですか。すごい自由でいいなって。
(箭内) だけど、そんな自分が「椎名林檎さんを好きだ」ってことで、
『保って』るんだと思いますよ、人々は。
『保ち』に付き合わされてるから、あなたは。そりゃ大変だろうなと思います。
(椎名) 保ち(笑)
(箭内) 「代わりにこだわってくれてる」って言ったらすごい無責任なんですけど
(椎名) (爆笑)
(箭内) 「おれの好きな人、こだわってる人だもーん」っていうことで、すごいみんなうれしいんだと思う。
(椎名) そんなことないけど!
(箭内) だから、こだわりを背負わされちゃっててホント申し訳ない。消費税とか、もうゼロでいいです。
(椎名) ちゃんと言ってください、しかるべき相手に(笑) 「(椎名は)消費税ゼロで良い」って。
…いやいや、そんなことまだまだ。消費税ゼロは何十年後の話……
(箭内) 『椎名林檎の消費税を払おう』みたいな会をね…
(椎名) 後援会(笑)
(箭内) そうそう、消費税の会みたいな。それぐらいやっていいと思う。
それで何か自分たちの気が済みますね。
(椎名) 私、もう夏なんか全裸で歩く感じの人間なのに、
どうしてこんな鎧をつけるようになっちゃったの?! みたいな思いですよ。
どんどん生まれたころに戻っていきたいって思ってらっしゃるんでしょ、みなさん。
(箭内) それは生まれた時をどっちととらえてるかですよね。性善と性悪と。
俺は性悪説型なので、どんどん修行している最中です。戻ったら危ないなと。
(椎名) それはそうなんだけど、物理的に全部捨てて。自由に。
そういうふうだったはずなんですけどね、二十歳ぐらいまでは。
(箭内) …みんなが色々余計なこと言いやがったからですかね。
(椎名) そうですね…そうじゃないですか、やっぱり。弱いから。
好きになった男の子に言われたことを鵜呑みにしたり、そういうことが…ほんとにくだらなくして(笑)
もっと自由になりたいですよ。
(箭内) さっきも、「まだまだこんなもんじゃないですよ」っておっしゃってましたけど、
椎名林檎に『もっと』っていう余白っていうか、泳いでない海がある感じが、
すごい素敵なんです。
今のままでいなさいってことじゃなくて。『もっと』を広げて、自由を広げて行く最中じゃないですか。
(椎名) 行きたいですねー。
(箭内) ずーっと毎年最中で、どんどん領土を広げていってるから、
それ自体がシズル感なんだと思いますよ、人から見たら。
できあがったものはもちろんすごいんだけど、それを、その最中の本人に言うのは野暮ですよね。
(椎名) 嬉しいですけどね。
(箭内) そこなんだと思うな、みんなが消費税を払いたいって言うのは。
(椎名) 初めて言われましたよそれ(笑)
(箭内) 向上心って言っちゃったらすごい普通ですけど、まだまだこれからがあるし、
やりたいことが全部やり終わってないんだっていう輝きなんですよね。
(椎名) 箭内さんの『修行している途中』っていうのは今どの辺なんですか?極まりとしては。
随分楽に、自由になってらっしゃるようにお見受けするんですけど。
初めてお会いした時からユアペースで(笑) すごい手に入れてらっしゃる感じしますけど。
(箭内) 思いやりが足りないんですよね、今自分の悩みは。
時々不用意なことを言ってしまう。
100%の思いやりってどうやったら持てるのかなーっていう修行の最中です。
(椎名) ええー、そんなー。
(箭内) 人の悪口とか言わないようにしようってすごい思ってるんだけど、
言っちゃうし、言って気持ちいし、そのあとで気が付くみたいな。
「しまったー!」
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(箭内) 椎名さんの自由度は何%、何合目ぐらいまで来てるんですか。
(椎名) 何かねー。成人するぐらいで一気に自由になったはずなのに、
また不自由になって後退してるっていう感じで、
結果的には、今40%とか。かなり縛られてる。己によって。
(箭内) …こんな立ち入った話を伺っていいのかどうかあれなんですけど。
(椎名) 立ち入ってください。
(箭内) 2月に東京事変が解散したじゃないですか。
2月と3月で自由度の為替というかレートは、どう変わりました?
(椎名) そうですね…値動き…
メンバーに、「もう解散しようや」って話したときは、一瞬60%とか70%まで行ったはずなのに、
今度は、「何で別れようって言っちゃったんだっけ」っていう気持ちになっちゃったから、
また下がったんじゃないですか。
ライブ終わっちゃったら、もういよいよ。
でも、浮雲とかが、
「明らかに、アレ(解散)以降撮られたビデオだよねっていうPVだったら、作ったほうがいいよね」
っていう意見を言いだして、「じゃあ、ヒカリエで撮る?それともスカイツリー?」っていう話になって、
それでちょっとまた、自由になったような気分になったりならなかったり。
ずっと新曲出しちゃってもいいのかなって思ったり、、思わなかったり。
それは事変に関しての話ですよね、私個人に関しては分かんないなあ…
正直いつまでも楽しく、していたいですからねー。
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(箭内) 不自由だから生まれるクリエイティブってあるんですか。
(椎名) あるんでしょうね。形式っていうかメソッドに則った。
十分そういう風に聴こえちゃうらしいし。『林檎節』っていうか手癖みたいなものとか。
でもそういう風に聴かれないようなものが作りたいから。
誰が作ったのか分かんないものを目指してるから。やっぱり。
いかがですか、そういうところないですか。箭内先生ぐらいのレベルになると。
(箭内) いやいや、レベルはアレですけど…
(椎名) ハンコを押してない感じの、出したいっていうのないですか?
(箭内) あります。空っぽでいたいっていうか。
(椎名) 透明なものみたいなの作りたいですよね。
(箭内) 作りたいです。
(椎名) ハンコ押すほうが簡単なんじゃないかって、私はまだ未熟だから思っちゃうのかもしれないけど。
(箭内) 椎名さんのハンコってすげーでっかいですよ。
(椎名) えー!だからそれすごいイヤだー!すごい困る。
(箭内) いやでっかいっていうとあれだけど、ものすごく広いですよ、領土が。
(椎名) いやー、びっくり。果てしないってことですよね、それを消そうとするってことが。
(箭内) そっか。
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(箭内) 他に自由じゃないなって感じるときってどんなときですか?
(椎名) アルファード以外ですか?
(箭内) アルファード以外。
(椎名) アルファードは、この間、首都高で、
ホントにコレはいい例えだと思ったから覚えておいただけなんですけど(笑)
そういったことがホントに何から何まであるので、たぶん家族とか身近な人たちは
「なんて不自由な人間なんだ!」って腹立たしく思ってるだろうなと思って。
(箭内) …自由になりたいですか?
(椎名) なりたい…
(箭内) その(残りの)60%は、アルファードに乗れたときが自由になれたとき?
(椎名) そうだし、たとえば、「何とかムーンだって今日!」とか言ってさあ(笑)
にわかに、何も知らないのに(笑)
(箭内) 何かありましたねーひと月に2回あるやつ。 (※ブルームーン)
(椎名) それとか、「何とか日食ー!」とか(笑)
オリンピックとかワールドカップとか、にわかじゃ「ワーッ!」ってできない。
そしたら、にわかならにわかなりにお祭りすりゃいいじゃないですか。
それができない不自由さとか。
部屋でひとりヘッドホンしちゃったりとか、その日に限って。そういうとこがあるの。
二十歳ぐらいのときに、段々そうなっていく自分に気づいたんですけど。
(箭内) ラジオの向こうで、みなさん色んな事言ってるだろうし、俺も心の中で言ってますけど……
(椎名) どういうことを言ってるんですか(笑) ちゃんと言ってください(笑) ラジオだから!(笑)
(箭内) 確かに(笑)
…『その状態』がすでに素敵です、っていう話はね…
こんなデレデレした放送していいのかって俺も思うけど、それはそれで置いといて、
椎名林檎さんに、健やかに暮らしていただけたら、我々下々の者は幸せなんですよ。
(椎名) しもじも(笑)
(箭内) だから、それを邪魔するような不自由があるんだったら、みんなでやっつけにいきますよ。
そんなもん。
(椎名) 邪魔するような不自由てなんですかねー?
(箭内) 「何とかムーンなんて言うんじゃねえ!!」ってみんなで言う。「何とかムーンどうでもいいだろう!!」
(椎名) やりたいやりたい!!(爆笑) 一緒にしたいんだけど、
(お祭りを)できないほうが悪いってわかってる。いいんです、すいません。
(箭内) じゃあバレンタインデーとかもダメなんですか。
(椎名) うん、もう…すごく早く下校しちゃうみたいな。どういうふうにも解釈されてはいけないというか。
すごい公平でど真ん中にいたいっていうすごい欲求があるんでしょうね。強欲なんでしょうね。
みんなホントはそうですもんね。『どっち派』みたいにならないで、
いかに自由でいられるか探ってるのにね。
(箭内) そっか。それで、やむをえず『どっち派』かになってるんですかね、みんな。
(椎名) うんうん。言わざるをえなくなっちゃりとか。
(箭内) ってことは、椎名さん実は、一番自由じゃないですか。
(椎名) いやちょっと逃げすぎかなと思って、不自由さから。
(箭内) 逃げてるって、すごい自由な状態じゃないですか。
(椎名) もっといい方法を見つけて、超自由ですって堂々と言いたいです。
(箭内) ……終わんないですねこの話。言い合いになっちゃうだけですもんね。
(椎名) そうですね。どっちが自由かって。
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(箭内)
「椎名林檎さん。誰にも似てないですね。誰にも似てないけど、突飛な人ではない。
表現者、芸術家、そしてたくさんの人とちゃんとコミュニケーションを取ることを全うする素敵な方で、
やっぱり会って話すたびに刺激も受けるし、元気ももらいますね。
椎名さんは「まだまだだ」ってずっと思い続けるし、
まだまだの最中の椎名さんの出来ていることとか素晴らしさを
僕らは椎名さんに「いやいやいや」って言われても称え続けたいなと思うし、
ずーっとそのまんまなんでしょうね。
ずーっと満足しないんだろうな。
…またいつ来てくれるんですかね、椎名さん!
みんな次椎名さんにあうために、身体に気を付けて生きてるんじゃないですかね。僕らも。
……まってまーす。
風とロック 箭内道彦でした」
(山本佳宏)