今日は撮休。撮影はお休みです。
スタッフそれぞれ、日々の疲れを癒して、明日の撮影に臨みます。
8月19日、20日、21日と撮休でした。
21日にはラッシュ。
ラッシュとは、今まで撮影した映画のフィルムをつないで一通り見るという作業です。
今日のロケは、山梨まで移動しての撮影。しかし、私は今日は会社で会議のため、欠席してしまっております。台本上でも、印象深いシーンになろうと思われる箇所だったので、残念。
高校を卒業してから、もうかれこれ10年近く(?)にもなる私ですが、それでも、高校に通っていた頃のことを昨日のことの様に覚えております。
今日みたいに学校でのロケがあると、教室の匂い、玄関の匂い、体育館の匂い、そんなので、あれやこれや思い出されるのです。さして甘かったりステキな思い出があるとも限らないようなものですが、それでも高校というものは大人になった今でも特別な感情を与えてくれます。
今日はピーカン照り。エキストラの方たちも、みんな制服に着替えて、教室はさながら本物の学校のよう。これまた高校を卒業してから随分たつスタッフも制服姿でエキストラに参加させられたりして、爆笑を買っていました。
「ボク」のショッパイような、でもちょっと甘い青春の1ページです。若さとは、若いということだけでひたすら素晴らしくて、恥ずかしくて、切ないものだなあと感じ入るのです。
「オカン」という人は、実に不思議な魅力を持っていた人だったようで、「ボク」と一緒に暮らす日々の中で、「ボク」の友達がどんどん「オカン」の周りに集まってくる、という現象が起きていました。「オカン」は「若い人はみんなお腹が空いている」という確かなる信念(?)のもと、息子の友達の為に美味しいご飯を並べたり、せっせと世話をしてくれる、「みんなのオカン」と化して行くのでした。今日は、そんな騒々しくも温かい、賑やかなシーンの撮影。樹木さんは、朗らかで愛情深くて、芯の強いオカンを、独特の味付けで熱演していらっしゃいます。樹木さんは、オカンを「オカンが人生を、どう生きたか、を演じたい」とおっしゃっていました。それは、こういうことなのだなあと。オカンの人柄を描いた、このシーンは、映画の中でも輝いている、とてもステキな場面になっていることと思います。
「撮影の際には、通常、カメラ位置だとか、照明の当たり具合だとか、細かくセッティングをしてから、役者の方に入ってもらって演技を撮ります。その、セッティングをしている最中も、じゃあ実際はどんな具合にカメラに映るの?という按配をチェックするために、スタンドインといって、演出部のスタッフなどが役者さんと同じ動きをして、段取りをしてみます。その、樹木さんのスタンドインを、いつの日からか、どういう訳だか、わたくしめが担うことになっておりました。(写真はボクと電話をするオカン役の樹木さんです)しかしながら、我ながら、もうビックリするくらいに演技の下手な私のことです。「動きが違う!」とか「右手じゃないっ!左手だって!」とか、日々、ピンボケな動きをしては、現場に迷惑をかけております。そんな日に見上げる空は、秋の澄んだ空気で満ちていて、胸が締め付けられるように綺麗だったりします。
撮影もいよいよ大詰め。連日、結構重たいシーンの撮影が続いております。オカン役の樹木さんと、ボク役のオダギリさんの熱演により、傍から見ていると涙が出そうになる瞬間もあります。しかし、現場は、湿っぽくならずに、皆プロとして仕事をしております。ホントに凄い。監督の「カット!」の声がかかった瞬間に、樹木さんが、面白いことを言っては皆爆笑。この切り替えが、プロなのだなあと感じ入ります。そして、先日からお伝えしております、私のスタンドインも続いております。大事なシーンは、セッティングもとても細かくコダワリを持って詰めていきます。ベッドで寝ているシーンが多いのですが、スタッフの熱のこもった姿を見て、私なりに熱のこもった演技をしてみたりしています。ベッドの上で、治療を受けるオカン。と、みんなの指摘を受けて気づいたんですが、いやほんとビックリすることに、私の靴下に穴が開いているではないですか。おっっと。しかも片足じゃなくて両足。おっっっっと。嫁入り前の娘が、両足の靴下に穴を開けながらスタンドインをしている心意気を、是非とも買って欲しいものです。
「マー君(ボク)が仕事しよると、オカンは気分がようなるんよ。」オカンはボクが仕事をする姿を見るのが好きでした。ボクの書いた本は大事に読み、病室でボクが画を描くのをいつも眺めていました。しかし、偉大なるは母の愛。そんなボクのソフトなお仕事模様だけでなく、なんと、ボクが生き生きと繰り広げているキワキワエロトーク満載のラジオも、実はいつもちゃんと聞いていたのです。このラジオでのエロトークの収録のときは、相当に面白い光景でした。もはやエロなのかどうか、分からないくらい面白い話が飛び出しています。病室の重たいシーンの中で、光り輝いています。(ホントか?)キャストの方々、現場のスタッフがああでもない、こうでもないと、様々な知恵を絞って作られた、とっておきのエロエピソード。オススメです。
ついにこの日が来てしまいました。「東京タワー」の物語の中で、決して避けて通れない別れの時。
様々なオカンの姿が思い出されます。筑豊で、近所の人たちと勝負する花札で、一人勝ちまくるオカン。ボクの仲間と酒盛りをして、はしゃぐオカン。糠床をかき混ぜるオカン。鼻眼鏡をして踊るオカン。樹木さんが以前に言っていた言葉を思い出しました。「母親というものは、例えば芋の様なもの。自分の子供である小芋のために全ての養分を出し切って、最後にはしわくちゃになるのです。」家に帰ってニュースを見ると、そこには子を殺めた母親の話や、母親を殺めた子の話などがいつもいつも流れています。そんな時、子供の為に自分の人生を生きたオカンの、養分を出し切って最後にしわくちゃになる親芋のような生き方を、もっともっと深く知りたくなるのです。
早いものでして、もう撮影も残すところあと幾日か、という段階になって参りました。そういえば、撮影開始した時は身体中の水分が蒸発せんばかりの暑き日々でしたが、最近では何だかひゅるると寒くなったりして、いつの間にやら季節は巡ってしまっているようです。
ところで、この物語におけるオトンという人は、本当に掴み所のない、同時にあまりにもダメで、しかし実に人間としての魅力に溢れた人として描かれています。オトンが何を考え、何を想って生きているか、オトンの目は何を見て、オトンの心は何に震えたのか、本当に謎が多い分、魅かれるものを多くもった人なのだと思います。
そのオトンが、最近めっきり老け込みました。(役柄の話です。)今までは荒々しく猛々しく、無軌道!自己中!自由人!な香りを漂わせていたオトンの背中も、次第に丸まってきて、ああ、て感じです。老けメイクを施した小林さんから滲み出る、オトンの悲哀が、半端でなく切ないのです。
映画が進むにつれて、ボクが大人の男になり、オトンが老けてゆく。何だかそこに人生を濃縮した画を見たようで、家路につく帰り道の秋風が凄く沁みるのです。
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