撮影現場より ARCHIVES

2006/8/ 3 [Thu]

撮影レポートを随時お届けします!

はじめまして!
松竹宣伝部の寺西 史と申します。
この度、皆さまご存知の、大ベストセラーとなったリリーフランキーさん原作『東京タワー』の待望の映画化が決定致しました!!!。
映画のクランクイン(撮影開始)を間近に向かえ、今後撮影日誌をお届けしていきます。
この特別な映画の撮影現場の雰囲気が、少しでも皆様に伝わりますように。
今日は、宮城県と岩手県の県境近くにある、映画『東京タワー』のロケ地に向けて出発!夕方東京を出発、ハイエースは高速道路を疾走して、夜近くになって、ロケ地付近の宿に到着しました。遠くに花火が上がるのが、車窓から見えました。夏ですね。 今日は遅いのでロケ現場に行かずに、とりあえず休息をとることとします。

2006/8/ 4 [Fri]

ロケ地オープンセットにて

今日は、ロケ地となっている宮城のオープンセットに初めて足を踏み入れました。
これが、本当にすばらしいセットで、驚愕です!もともとあった鉱山の社宅跡に手を加えて、映画の舞台となる昭和30年代〜40年代の筑豊の情景を再現しています。 美術のスタッフは、5月頃から現場入りして、この素晴らしくも、最高にかっこいいセットを作るために、日夜奮闘をしていたのだそうです。
本当に、すぐそこの路地から、膝小僧を擦りむいて、真夏の太陽を浴びて、いっぱいいっぱい汗をかいた、若き日の主人公の「ボク」が走って出てくるような、そんな空気が漂っています。

2006/8/ 5 [Sat]

宮城の夏

今回の『東京タワー』の撮影のロケ地が宮城県と初めて聞いたとき、今年の夏は涼しく過ごせそうだと思っていた私は大変浅はかであったなと痛感するわけです。そうです、宮城は暑いのです。ジリジリと太陽は照りつけて、東京で生っ白い生活を送っていた私の肌は一発でダウン。顔からも、腕からも汗は流れ続け、身体が干上がってゆく様が分かります。もちろんトイレなんて行きません。水分は全て汗で出てゆきます。そして、キンキンに冷えた水を飲む時、これ以上の幸せはないと、毎回本気で思ったりするわけです。 宮城の夏は、これからが本番です。

2006/8/ 6 [Sun]

手抜きナシの暑さ

それにしても、連日猛烈に暑いのです。手抜きナシの暑さです。
食欲が減退していって、アイスとか、冷たいものだけで済ませたいと思ってしまいます。
撮影はまだ開始していないのに、諸準備の段階ですでに夏バテをしてしまっている怠けた自分の身体にカツを入れつつ、空を見上げると、奮闘している我々をあざ笑うかのごとく、太陽は毅然と輝きまくっています。

2006/8/ 7 [Mon]

クランクイン(撮影開始)です。

ついにこの日が来ました。クランクイン(撮影開始)です。若かりし日々の父親「オトン」と、幼き日々の主人公「ボク」、そして「オカン」と「筑豊のおばあちゃん」のシーンです。
室内のシーンは、家のセットの中で撮影が行われます。照明機材の出す熱と、スタッフの出す熱気で、セット内はそれはそれはムンムンになるのでした。
そして、この映画を素晴らしいものにしようという。スタッフのそれぞれの熱い想いが、きっとフィルムの中に映り込んでいることでしょう。

2006/8/ 8 [Tue]

汗をかきつつ、撮影は進みます

今日も室内のシーンです。「ボク」が家族と一緒に暮らしていた頃の、「オトン」の記憶。若きオトンを演じる小林薫さんは、最新技術の結晶であるところの特殊メイクを施して、酩酊していながらも、どこかしら飄々としたオトンを熱演していらっしゃいます。
撮影は、小倉の家のセットの中で。外はまたしてもガンガンに晴れまくっておりますが、室内のセットは夜の設定で、暗く遮蔽をしております。ダバダバに汗をかきつつ、撮影は進みます。スタッフ全員が今日流した汗は、いったい何リットルになるのでしょうか。さて。

2006/8/ 9 [Wed]

気まぐれな天気

昨日までの凶暴な太陽はお休みしており、今日はあいにくの雨。台風の北上に伴って、ザシザシと降ったり、突然やんだり。こちらの天気は、それは気まぐれなのです。
しかし、いきなり雨が降り出したときのスタッフの動きは、相当にかっこよいものです。外に出ている機材を、雨に濡れない様に軒下に入れたり、その動きにムダや迷いはない。職人の技を感じます。

2006/8/10 [Thu]

こちらは虫天国

撮影中に悩まされているものは、天気だけではありません。撮影現場が広大な自然に囲まれた地域ということもあり、こちらは虫天国なのです。
クワガタやカブトムシのように、一般的に喜ばれがちな虫も多くいる一方で、アブやらブヨやらハチやら、その他名の知れぬ様々な虫たちが、悪さをします。
短パン姿のスタッフの足は、虫刺されでボッコボコになっています。奴ら、ジーンズの上からでも余裕で刺します。負けます。

2006/8/11 [Fri]

田んぼ道での撮影

今日は、原作でも印象深かった、「ボク」のおばあちゃんが登場。このシーンの撮影はいつもの現場から少し離れた坂道での撮影になります。おばあちゃんが、うんしょうんしょと引くリアカーは意外と重い。そして坂道は意外と急。しかもクレーンを使った大掛かりな撮影です。
その後は、場所を移して、田園風景の広がる田んぼ道での撮影。さんさんと優しく降り注ぐ太陽に、さやさや揺れる、青く深い一面の稲穂・・・。という美しいシーンのはずが、突然の土砂降りに遭遇してしまうのでした。
頭のどこかが飛んで、気持ちよーくなるほどの大雨。ビシャビシャになりながら、田んぼの方を歩いていたら、蛙クンたちが大喜びでぴょんぴょんしておりました。楽しそうでした。
なんだか今日は、青春って何だろう、と考えています。

2006/8/12 [Sat]

電波を捜しながら徘徊

ところで、今日は携帯電話のお話です。普段の撮影現場での私の携帯電話は、恐ろしく電波が悪くて、常に留守電状態。
定期的に留守電をチェックして、後で折り返し、を繰り返していてとっても不評なのでした。切ないことです。今日も現場付近を、電波を捜しながら徘徊する日々です。
湿度が高い日は、電波が弱いような気がします。なんとなくですけど。

2006/8/13 [Sun]

撮休

今日は撮休。撮影はお休みです。
スタッフそれぞれ、日々の疲れを癒して、明日の撮影に臨みます。


2006/8/14 [Mon]

エキストラさんの登場

映画の中で活躍するのは出演している俳優さんだけではありません。今日は映画に欠かせない、エキストラさんの登場です。
またしてもカンカン照り、活気あふれる筑豊の町を行き交う人々のシーンです。広い画のシーンなので、エキストラの方々の出るタイミングを合わせるのに、演出部は汗だくで走り回っているのです。何気ない通行人にも、一人一人決まった動きがあって、映画って本当に多くの人々の手で作られているのだなあと感じ入るひと時です。
余談ながら、この日も照りつける太陽で、私の日焼けは一段と照りが増したようです。

2006/8/15 [Tue]

秋のシーン

今は夏まっさかりで、セミなんかも満喫しまくって、全開サマータイムなのですが、撮影は夏のシーンだけとは限りません。
今日は秋のシーン。マフラーを巻いて、すっかり秋の装いの主人公「ボク」。しかし実際は雨混じりの湿度ムンムン、不快指数は振り切れております。汗か雨か、はたまた涙か。
スタッフの顔には、様々な水気が浮かんでは流れ、夏の夜は過ぎ行くのでした。

2006/8/16 [Wed]

「ポカソ」

なにぶん暑いもので顔からも、腕からも、足からも、体中の水分は容赦なくどんどん出て行きます。
そんなスタッフたちの命の源は、製作部が用意してくれる「お茶セット」。キンキンに冷えた麦茶やポカリ、アクエリアスなどを各自が汲んで、撮影の合間合間に飲む。美味い!
「ポカリ」が「ポカソ」になっていることもありますが、それはご愛嬌。
2006/8/17 [Thu]

マスコミの方々の取材

さてはて、今日は私ども宣伝のお仕事に関してのハナシです。
皆さんも、TVや雑誌、新聞などにて、何かの映画の「撮影現場レポート」を目にすることがあるかと思いますが、あれこそズバリ、宣伝屋がやっている仕事なのです。マスコミの方々に、映画の撮影現場に来ていただき、TVや雑誌、新聞にてその模様を載せて頂く・・・。今日はまさしく、そのマスコミの方々の取材日。
なのに、雨。しかも結構本気の大雨。撮影が中断したり、ドタバタしてズブヌレになってしまい、笑いが出て来るほどでしたが、どうにかこうにかスタッフの皆さんに迷惑をかけつつ、監督と樹木さんの合同取材をやることが出来ました!皆様ご協力ありがとうございました。

2006/8/18 [Fri]

さよなら宮城の夏

世の中は、海だ山だ恋だと夏を満喫している間に、我々東京タワースタッフの宮城での夏は、いよいよ今日をもって終了となりました。
ギンギンな太陽だったり、転じて土砂降りの雨だったり、虫だったり、色々と悩まされはしましたが、思い起こせばあっという間の2週間。これから東京に戻ったら、きっとハイペースな街のスピードに付いていけないのだろうなと思いつつ。
美味しいお米、生き生きしてキラッキラな野菜、宿の方々、市の方々、エキストラやボランティアの方々。皆様のご支援なしには成立しなかった宮城ロケでした。感慨深くそんなことを思いながら、高速を抜けて東京に戻ると、今夜も変わらず東京タワーが暖かく瞬いていました。

2006/8/19 [Sat]

撮休とラッシュ

8月19日、20日、21日と撮休でした。
21日にはラッシュ。
ラッシュとは、今まで撮影した映画のフィルムをつないで一通り見るという作業です。


2006/8/22 [Tue]

次のロケ先、福岡へ

東京に戻り、各自英気を養いつつも諸準備に追われ、あっという間に次のロケ先、福岡への移動日となりました。飛行機では、一眠りの間に到着。しかし、撮影機材を載せた車は、延々東京から運転して運ばなくてはならず、車両部の皆様は大変なのです。
福岡はさすが南国だけあって、日差しが違います。宮城に比べて、太陽が断然トロピカル味を帯びています。今日は移動とロケハンのみ、明日の早朝の撮影に備えて、各自ゆるりと小倉の夜を楽しむこととします。今夜の晩御飯はカレーです。

2006/8/23 [Wed]

田園での撮影

のどかな田園での撮影でした。単線の電車が通るたびに、スタッフ一同手を振ります。
美しい福岡の風景の中での、「オカン」と「ボク」の、美しい親子のシーンとなっていることでしょう。 そしてそして今夜も九州の美味いものをたらふく頂きましたとさ。

2006/8/24 [Thu]

駅、そこは人間交差点

スタジオや、ひとけのあまりない所での撮影に比べると、公共の場での撮影は大変です。
今日は駅での撮影。普通に駅を利用する方々もいるわけで、でっかい照明機材などが置いてあると、当然の様に目を引きます。
騒ぎにならないように、且つ、皆様の迷惑にならないように。注意を払いつつ、撮影が続きます。

2006/8/26 [Sat]

小倉、朝のホステス

以前、映画の中に登場するエキストラさんの存在を語りましたが、スタッフがエキストラとして参加することもあります。と、いうわけで、今日は私のエキストラ体験記です。
役は小倉のホステス。朝2時から、他のエキストラさんと共にメイク開始。繁華街の設定だけに、皆さん結構ケバイです。かくいう私も、ばっちりアイメイクに加えて付けマツゲを付け、完了。我ながら何と表現すればよいか悩む、ちょっとグロテスクな顔となりました。
いざ芝居となると、動くタイミングとか、いちいち間違ってしまうし、なかなかどうして、本当に役者さんのお仕事というのは大変だなあと、少しだけ垣間見ることができた気がしました。

2006/8/27 [Sun]

「東京タワー」東京篇撮影開始

これまで、宮城や福岡、と、地方ロケが多かった本作ですが、今日から東京での撮影が開始されます。スタジオでの撮影。ロケ地まで車でゴトゴト移動したり、晴れてみたり、雨降りだったり、気まぐれな女子の様な天気に悩まされることもないのがスタジオです。
薄暗いスタジオのセットの裏に、秘密基地のような仕事場を作って、今日はそこでパタパタとパソコン仕事に興じております。スタジオって、部室みたいだなあと思います。あ、でも汗臭いとかではなく。

2006/8/28 [Mon]

東京タワー考

思い返してみると、私は昔から東京タワーが好きでした。何だか気分がモヤモヤする日は、会社から1時間くらい東京タワーまで歩いてみたりしておりました。人が東京タワーに惹かれるのは何故なのでしょうか。あと、東京タワーというものを語る時、誰もが若干おセンチになってしまうのはなぜなのでしょうか。
今日は、この物語の題名でもあるところの、東京の象徴のど真ん中、「東京タワー」前での撮影。あの時、上京した「ボク」の心を去来したのは、どういう想いだったんだろう、東京にどんな希望や恐れを抱いていたんだろう、なんて、柄にもなく、ちょっと詩人になってしまうのでした。

2006/8/29 [Tue]

匂いたつ玄関、の巻

8月も残り僅かとなってきて、夏の終わりを感じる今日この頃です、なんて言うにはまだまだ暑いのですが、そんな残暑もなんのその、今日も撮影は快調です。
今日のロケ地には、ちょっとばかり発情期(?)なワンコがいて、これが相当かわいいのです。が、なぜか男子の方がお好みみたいで、女性スタッフはおもむろにシカトされています。
撮影場所は、狭いアパート。スタッフ一同、ひしめきあってセッティング。なので玄関は靴だらけ。今、この時点の瞬間人口密度の高さは日本でも有数のことでしょう。
今日のシーンは「ボク」の自堕落ライフを描いたシーンですが、やっぱり自堕落というのは中途半端であってはイカン。「ボク」のダメっぷりは、それはもう一本突き抜けた、正しく凄まじく楽しいことになっています。こんな頃もあったなあなんて、皆さんも思い当たる節があるのでは?ないかしら?

2006/8/30 [Wed]

夏の終わりに…

東京での撮影も快調に進んでいます。そろそろ学生の皆様は学校が始まるなあと憂鬱で、夏の終わりを身体中で感じていらっしゃることでしょう。
我々撮影隊のスタッフは、夏が終わりつつあることに、ちょっと感慨深くなってみたり、「アタシの夏を返せー」なんて、空とかに向かって言ってみたりしています。

2006/8/31 [Thu]

大人の街、新宿

今日は、大人の街、新宿で、大人なバーでのシーンの撮影。設定は夜ではありますが、光の差し込まない室内なので、朝イチで撮影をしてしまいます。
ロケ場所がとても狭いので、スタッフは中に入る班と、外で待機している班とに分かれています。
お昼近くなると、撮影場所付近の飲食店が仕込みをしているようで、すきっ腹にはその美味しそうな匂いがたまらないのです。

2006/9/ 1 [Fri]

9月、そして土砂降り

9月になりました。撮影開始から、約3週間がたちました。あっという間に過ぎ去ってゆく日々です。8月に何か忘れ物をしているような様な気持ちでもあります、なんて私がそんな下らない感慨にふけっている間も、撮影は続いていきます。そうです、みんなプロなのです!
今日は朝から雲行きは怪しかったのです。でも、なんやかんやお天気は持つものと思っていました。が、お昼近くになると、バケツをひっくり返したような雨が降り始めたではありませんか。もはやスコールです。東京は亜熱帯と化しています。
午後に予定されていた公園での撮影は、中止となってしまいました。雨で冷えた身体は、近くのラーメン屋さんで、温かいラーメンをすすって温めます。と、横を見ると、そこにはキャストの方々やらスタッフやらエキストラの方やらで、気づけば西巣鴨のラーメン屋さんは東京タワーチームに占拠されていたのでした。

2006/9/ 3 [Sun]

The 元病院の借家

「東京タワー」の撮影は、実に普段行かない様な、様々なロケ地に行きます。なかなかプライベートで行くような機会のないところにいく、というのは、ロケセットの撮影の醍醐味だったりもします。
今日は埼玉での「元病院の借家」のシーンの撮影。実際に、病院として営業されていた建物を使ったこのシーンは、原作の中にもある、ボクとオカンが住む「病院を改造した借家」の舞台となります。洋館風の造りの表玄関をくぐると、ひんやりとした細長い廊下があり、突き当たりの所に、突如として、やたらと生活感に溢れたオカンとボクの部屋が現れます。「病院」と「住居」が渾然一体となった、不思議な空間です。室内のセットの中の美術も、いつもながらにとても凝っていて、とてもとても住み心地がよさそうな、狭いながらも楽しい我が家的雰囲気が流れています。
今日は、ナイターのシーンの撮影などもあり、近隣の住民の方々にはご迷惑おかけしたことかと思いますが、皆様とっても暖かく、「お仕事大変ねえー」「お姉さんは、ADですか?」なんて声をかけて下さったりしました。ちなみにADではなくて宣伝担当ですが、疲れた身体には、ジワワと染み入るのでした。どうもありがとうござました。

2006/9/ 4 [Mon]

ダンスダンスダンス

今朝の公園のシーンの撮影の際に、少しヘコむ出来事がありました。太陽がとても綺麗で、緑が生き生きとした、とても美しい朝だったのに、草むらを歩いている時に犬のウン○をおもむろに踏んづけていました。スニーカーの裏のボツボツの間にまんべんなく入り込んだソレは、なかなか手強く、特殊メイクさんに頂いた歯ブラシのお世話になりました。撮影中は、色んなことが起きます。
気を取り直して、今日は、ダンスの撮影。午前中の、公園での跳躍的なるダンスシーン(このシーンが本当にスゴイ!お楽しみに!!!)に引き続き、午後はダンスホールでのダンスシーン。ダンスホールなるものに初めて足を踏み入れたのですが、街の喧騒とは隔絶された、完全なる異空間なのです。無数なる、きらびやかな電飾が幻想的で独特な雰囲気を醸しています。その眩しいばかりのシャンデリアの下には、お世辞にもキレイな格好をしているとは言い難いスタッフが、必死に作業をしております。けれど、全体的にはチグハグとした奇妙な光景ながら、その姿はとっても美しいのでした。

2006/9/ 5 [Tue]

The 元病院の借家、再び

今日は、3日にも撮影をした病院を改築した借家のシーンの残りの撮影です。 病院の入り口付近にある大きな木には、無数のセミの抜け殻がくっついていて、スタッフの誰かが、それを並べて作品を作っていました。シュールでステキで、夢に出てきそうです。

2006/9/ 6 [Wed]

宣伝マン、欠席

今日のロケは、山梨まで移動しての撮影。しかし、私は今日は会社で会議のため、欠席してしまっております。台本上でも、印象深いシーンになろうと思われる箇所だったので、残念。


2006/9/ 7 [Thu]

お色気シーンはお好き?

『東京タワー』は、老若男女を問わず、誰が見ても深い部分の感情が揺さぶられる作品にすべく、現在、鋭意撮影中であります。
なので、成人向け(?!)の描写も特にないわけなのですが、今日撮影したシーンは、ほーんの少しお色気的要素があったりなかったり…と、なると、スタッフ一同、俄然張り切ってしまうものでして、いつもならスタジオは、セットの組まれている一角以外にも、スタッフがぱらぱらいるものなのですが、今日は撮影用のカメラの周辺に、何故かミッチリと全員集合です。ま、偶然なのかもしれないのですが。おほほ。

2006/9/ 8 [Fri]

「けん引」

映画やテレビなどを見ているときに、よく運転しているシーンなどを見掛けることがあるかと思いますが、それってどうやって撮っているのだろう、と不思議に思われたことはありませんか?今日は、「けん引」と呼ばれる撮影。劇用車(撮影用の車ですね)は、自走するわけではなく、前方を走る車がレッカーの様にけん引して引っ張ってくれます。なので、俳優の方々は、運転せずに、運転している演技をすることが出来ます。
けん引のシーンは、セッティングが大変です。近くに公園のある駐車場をベースにして、作業が開始します。公園をゆるりと犬の散歩をしている方々の横で、スタッフはみんな朝っぱらから重い機材を設置したりして、ひいこらです。また、公道を走るわけなので、信号のタイミングから、エキストラの動きまで、とても神経を使う撮影になりました。

2006/9/ 9 [Sat]

スクールデイズ

高校を卒業してから、もうかれこれ10年近く(?)にもなる私ですが、それでも、高校に通っていた頃のことを昨日のことの様に覚えております。
今日みたいに学校でのロケがあると、教室の匂い、玄関の匂い、体育館の匂い、そんなので、あれやこれや思い出されるのです。さして甘かったりステキな思い出があるとも限らないようなものですが、それでも高校というものは大人になった今でも特別な感情を与えてくれます。
今日はピーカン照り。エキストラの方たちも、みんな制服に着替えて、教室はさながら本物の学校のよう。これまた高校を卒業してから随分たつスタッフも制服姿でエキストラに参加させられたりして、爆笑を買っていました。
「ボク」のショッパイような、でもちょっと甘い青春の1ページです。若さとは、若いということだけでひたすら素晴らしくて、恥ずかしくて、切ないものだなあと感じ入るのです。


2006/9/10 [Sun]

撮休

2006/9/11 [Mon]

嗚呼、おふくろの味



高級な珍味だったり、予約の取れないレストランだったり、世の食文化も様々ですが、やっぱりどうしたって忘れられないのが「おふくろの味」。『東京タワー』の中には、そんな「オカン」の作った色んな、愛に溢れた料理が出てきます。「ボク」は、そんな「オカン」のお手製の温かくて優しい母の料理を食べて育ったのです。
ちなみに、映画の中に出てくる料理は、フードコーディネーターという専門のスタッフが作っています。スタジオで、スタッフがバタバタと作業をしていたら、どこからともなくヨダレがジョーと出てくるようないい匂いがホワッと漂ってきて、ふと後ろを振り向くと、スタジオの一角ではから揚げを揚げていたり、豚の角煮が艶やかでキレイに出来あがっていたりするのです。
人間が生きる上で、食というのは本当に根幹を成しているのだと、心底思います。母親の作る料理は、決して高級でもオシャレでもないかもしれないけれど、きっと愛という、最大の栄養素が入っているから、いつまでも忘れられない味なのだと、今日は何だかちょっと親孝行モードで思ってしまったりするのです。

2006/9/12 [Tue]

たくましい人たち

世の中には、どんなに厳しい状況下でも生き残れる種類の人たちがいます。現場のスタッフというのはまさしくそういう人種(?)に属すると、本当に常々思うのです。
映画の撮影の出発は、全く何もないところから始まります。ゼロから、脚本が出来てきて、セットが組まれ、小道具が用意され、照明が焚かれ、そして役者さんが衣裳を着て、メイクが施されて、演じる。そしてそれを撮影して、音を録って、編集して映画になる。
そんな中で仕事をするスタッフは、何かと不測の事態に強いのです。とんでもない角度から照明機材を吊るしたり、カメラをセッティングしたり、そこら辺にある材料で何でも作れてしまうのです。無から有を生む、腕を持っています。
泰平の世だけでなく、戦乱の世でもしっかりと生きていける、たくましい人たちです。私は、というと、文系だし、手先は不器用だし、宣伝屋という職業はつくづく限られた所でしか生きていけないなあと思ったりもします。

2006/9/13 [Wed]

ロクデナシ、一本勝負

今日撮影するシーンは、自堕落ライフを謳歌している当事の「ボク」の周りの出来事。
聞くところによると、なんでも最近は、男はちょっとロクデナシぐらいがいい、などと言われているらしいですが、その点で言うと、この「ボク」のロクデナシっぷりは相当レベル高いです。オダギリさんの軽やかで楽しそうな演技により、オモシロクデナシな「ボク」が完成しています。
青春には色んな形がありますが、何も田んぼのあぜ道を自転車で二人乗りするとか、体育館の裏で告白するとかだけじゃなくて、こんな楽しそうなロクデナシな青春もステキだなあと思うようなシーンとなっていると思います。必見です。

2006/9/14 [Thu]

「ボク、働く!」

ところで、映画というのは、必ずしも完成した本編と同じ順序で撮影がされているとは限りません。撮影の効率を良く進めるために、例えばいきなり後ろの方から撮影したりすることもあるわけです。しかし、今回『東京タワー』は、基本的に順撮りをしていて、話の流れと撮影のスケジュールは、ほぼ順番どおりになっております。これは、お芝居のテンションをあまり変えなくて済むので、役者さんにとってはとても演じやすいわけです。
と、いう訳で、昨日までの撮影においては、「ボク」はいかんなくロクデナシっぷりを発揮していたわけなのですが、最低さ加減もついに底をついて、ついに今日の撮影の所から、本気モードに入るのです!仕事という仕事、何でも引き受けて、バリバリに働く「ボク」。原作の流れに合わせて、撮影の方も、自堕落を脱いで一歩大人の階段を昇った「ボク」の物語へと移行していくのです。

2006/9/15 [Fri]

東京、中心、ど真ん中

今までの所では、東京近郊ロケ、などはありましたが、今日はまさしく東京のど真ん中の撮影が集中した一日になります。
東京駅近くの道→東京駅→東京タワー、まさしくTHE東京デー。さすが都心は交通量が多く、撮影も緊張を強いられるものになりました。とりわけ、東京駅などは、通行する人もとても多いわけで、なかなかどうして、撮影部隊は大変です。サラリーマンや、旅行者や、いま上京したての人もいるのかな、何だか象徴的な画になっていると思われます。
そして、ナイターのシーンでの東京タワーは、本当に息を呑むくらいに美しくて、空気も澄んでいて、しかもとても幸せなシーンの撮影だったので、なんだかジーンと来るものがありました。

2006/9/17 [Sun]

日曜の午後・・・

クランクアップまで、あと1ヶ月を切るところに突入しました!早いものです!
通常ですと撮影は朝はやーい時間に始まるのですが、今日の撮影はゆっくりと開始。とはいえ、朝早く起きなくていいのだな、と思っていても、6時くらいには目が覚めてしまう身体になってしまって、何だか得をしているのか損をしているのか、非常に分かりづらい気持ちです。
今日は「オカン」が上京して、「ボク」と再び一緒に暮らしだすシーンの撮影。必殺「オカン」の糠床も登場して、家庭の温もりだとか、緩やかな幸せ感だとか、暖かい気持ちになるのでした。

2006/9/18 [Mon]

映ってはいけないもの、聞こえてはいけない声

撮影にまつわる恐い話をひとつ。撮影の時には、時として、聞こえてはいけない声が録れていることがあるそうです。以下、録音技師の方のお話。「あるホラー映画の撮影現場でのことでした。本番の撮影をしている最中に、子供の声が聞こえてきて、なんだ、ギャラリーの人たちの声でも入ってしまったかな、と思っていたら、周囲に集まっていたギャラリーの中には、子供は全くおらず、もちろんキャストにも子供はおらず、子供なんてそもそもどこにもいない。じゃあ一体誰の声が録れていたんだろう、と思うと、背筋がぞぞぞーっとしたものです。」
病院などでパチパチ写真を撮っていた私に、スタッフの一人が、「映っちゃいけないものが映ってるかもよ。」なんて恐いことを言い出すものですから、すっかりびびってしまったのでした。

2006/9/19 [Tue]

撮影所で暮らそう!

今日は、ボクとオカンが一緒に生活するようになって、しばらくたった、という設定のシーンの撮影。
いつもながらに、セットの素晴らしさに関しては、筆舌を尽くしがたいものなのですが、笹塚でオカンとボクが同居するマンションのセットは、撮影所の一角に建てられているとか忘れてしまう程にリアルです。だって、ベランダには、クーラーの室外機などまであったりして、台所とかもあるし、少し無理したら、本当に住めますから。

2006/9/20 [Wed]

ぴょんっ

少し前までは、都内ロケが多かった撮影ですが、今はみっちりと撮影所生活へと突入。わりかし単調になりがちな撮影所ライフに、華を添えてくれている存在がウサギさんたち。原作でも、「ボク」が飼っていた「パンとブドウ」です。本物の生きてるウサギが撮影所の隅っこで、キャベツの芯とかモリモリ食ってウンチしています。
生き物というのは不思議なもので、普段はダミ声の男性スタッフなんかもウサギの前では「なんだいお前?お腹空いたのかい?よしーよし」的な事を言ってて、気持ち悪い様な、ほほえましいような展開を見せています。

2006/9/21 [Thu]

拝啓 オカン様


「オカン」という人は、実に不思議な魅力を持っていた人だったようで、「ボク」と一緒に暮らす日々の中で、「ボク」の友達がどんどん「オカン」の周りに集まってくる、という現象が起きていました。「オカン」は「若い人はみんなお腹が空いている」という確かなる信念(?)のもと、息子の友達の為に美味しいご飯を並べたり、せっせと世話をしてくれる、「みんなのオカン」と化して行くのでした。
今日は、そんな騒々しくも温かい、賑やかなシーンの撮影。樹木さんは、朗らかで愛情深くて、芯の強いオカンを、独特の味付けで熱演していらっしゃいます。樹木さんは、オカンを「オカンが人生を、どう生きたか、を演じたい」とおっしゃっていました。それは、こういうことなのだなあと。オカンの人柄を描いた、このシーンは、映画の中でも輝いている、とてもステキな場面になっていることと思います。


2006/9/23 [Sat]

スタンドイン・デビュー


「撮影の際には、通常、カメラ位置だとか、照明の当たり具合だとか、細かくセッティングをしてから、役者の方に入ってもらって演技を撮ります。その、セッティングをしている最中も、じゃあ実際はどんな具合にカメラに映るの?という按配をチェックするために、スタンドインといって、演出部のスタッフなどが役者さんと同じ動きをして、段取りをしてみます。
その、樹木さんのスタンドインを、いつの日からか、どういう訳だか、わたくしめが担うことになっておりました。(写真はボクと電話をするオカン役の樹木さんです)
しかしながら、我ながら、もうビックリするくらいに演技の下手な私のことです。「動きが違う!」とか「右手じゃないっ!左手だって!」とか、日々、ピンボケな動きをしては、現場に迷惑をかけております。そんな日に見上げる空は、秋の澄んだ空気で満ちていて、胸が締め付けられるように綺麗だったりします。


2006/9/24 [Sun]

とおりゃんせ


今日は、ボクとオカンが一緒に生活するようになって、しばらくたった、という設定のシーンの撮影。
時が過ぎていって、全てのものが移ろい行くのは世の常であると分かっていたとしても、受け入れるのが辛いのは変わらないのだと思います。自分が大人になるにつれ、親も老いてゆき、やがて来るべき日が来ることを分かっていつつも、心の準備などというものができるはずもなく。ただ漫然と日々は過ぎてゆくのでしょう。
「楽しい時間は、こうして鈴が坂を転がるように音色を残しながら足早に過ぎていったのです。」劇中での、ボクのナレーションのように。
「オカン」の闘病生活が始まりました。


2006/9/25 [Mon]

FMね、AMね?

「オカン」の闘病生活が始まったとはいえ、現場は相変わらず和気藹々としております。樹木さんは、芝居に入ると本当に「オカン」そのものなのですが、カメラが回っていない時には、スタッフやキャストを盛り上げる、陽気で鋭くて楽しい樹木さんへと戻ります。オダギリさん、よく爆笑していらっしゃいます。
そんな中、私は粛々とオカンのスタンドインを続けております。本当に俳優さんの仕事というのは大変なもので、今回は方言もあるわけですから、日ごろ使っている言葉と違う節回しで、しかも自然に口にするのはとても難しいことと思われるのに、いかにもサラっとやっていらっしゃいます。
そこがやはり私なんかがやると、トーシローなものですから、スタンドイン中に、筑豊弁のつもりで「FMね?AMね?」(劇中にそういうシーンがあるのですね。チェックして下さい。)と渾身の演技でもってやってみたところで、スタッフ一同から、激しい失笑を買うのみなのです。

2006/9/26 [Tue]

冷たい床

病院というのは、ただいるだけでも、何だか病院的なものを感じるのは、それは多分消毒薬の匂いとか、漂ってくる雰囲気のようなものから感じ取っているのかなあと思います。
しかし、ちょっと待って。ここはセットです。映画『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』の病院のセットのはずです。本物の病院でないのに、何でこんなに病院的なものを感じるのだろうと、本気で思いますが。それこそがセットのリアリティーなのだと思います。ペタペタとした冷たい床。白い壁。しんとした廊下。病室の入り口には、本物の消毒薬のポンプまであったりして、気合入っています。
写真は小道具の病室の表札。オカンは中川栄子です。

2006/9/27 [Wed]

オカン、そして女の多面性

母親の、オカン的な姿というものは、冬のシチューやら午後のココアの様な温かさがあるものです。台所に立つ後姿の踵が逞しく硬くなっていたり、子供を抱く腕にコンモリと筋肉がついていたり、オカンの強さと温もりには、心の深い部分がホッとするのです。
しかし、当然ですが、母親はオカンであると同時に女でもあります。オカンの女性的な一面を見るとき、子は、知らないオカンの表情に戸惑い、照れくさくてこそばゆい気持ちになるものです。
今日の撮影シーンのオカンは、久々のオトンの登場によって女性的な部分が存分に出ていました。おもてなし感覚で、指輪をしたり、髪も綺麗に整えたり。樹木さんが娘さんのような輝きを見せております。
不思議なものだなあと思うのが、世のオトンというものは、オトンであり同時に男であることが成立しやすいものですが、世のオカンという生物は、オカンであると同時に女であることを意識しにくい。それはオカンというものの、ひいては女の人の多面性なのかなあと思います。と同時に、ただの私の深読みかもしれません。

2006/9/28 [Thu]

アナーキー靴下の巻


撮影もいよいよ大詰め。連日、結構重たいシーンの撮影が続いております。オカン役の樹木さんと、ボク役のオダギリさんの熱演により、傍から見ていると涙が出そうになる瞬間もあります。しかし、現場は、湿っぽくならずに、皆プロとして仕事をしております。ホントに凄い。監督の「カット!」の声がかかった瞬間に、樹木さんが、面白いことを言っては皆爆笑。この切り替えが、プロなのだなあと感じ入ります。
そして、先日からお伝えしております、私のスタンドインも続いております。大事なシーンは、セッティングもとても細かくコダワリを持って詰めていきます。ベッドで寝ているシーンが多いのですが、スタッフの熱のこもった姿を見て、私なりに熱のこもった演技をしてみたりしています。ベッドの上で、治療を受けるオカン。と、みんなの指摘を受けて気づいたんですが、いやほんとビックリすることに、私の靴下に穴が開いているではないですか。おっっと。しかも片足じゃなくて両足。おっっっっと。
嫁入り前の娘が、両足の靴下に穴を開けながらスタンドインをしている心意気を、是非とも買って欲しいものです。


2006/9/29 [Fri]

大将のお話

映画における大将は監督です。監督は、日々、数え切れないような決断を迫られ、悩みを抱え、撮影を進めていかなければならない。実にハードな立場です。
『東京タワー』の大将は、松岡錠司監督です。セッティングの最中はスタッフと細かいシーンの打ち合わせをしつつ、シーンとシーンの間では役者さんに演技を指導しつつ、そして撮影が終わってからもまだまだ、我々宣伝部などが「監督、監督」と呼び止めて、宣伝に関してのああだこうだという面倒なお願い事を聞かなくてはならない。(すみません・・・。ありがとうございます・・・。)お昼休みも食事中も誰かしらと、何かしらの打ち合わせをしている。
監督の仕事は大変です。気苦労も絶えません。我々スタッフは、大将についてゆき、そして映画の撮影は続いてゆくのです。

2006/10/ 1 [Sun]

爽やかなる目覚めと共に

今日は久しぶりにロケでの撮影です。場所はオカンが入院している設定の病院。撮影所だったら、大抵は、8時とか8時半くらいにセッティングを開始します。しかし、ロケの場合はロケ地まで移動をしなくてはならないので、6時とか7時とかにはロケバスの出発場所に集合。朝は早いのです。
集合場所はスタッフの集まりやすい新宿か渋谷が主ですが、朝の、相当に鈍い頭の状態では、新宿集合なのに、余裕で渋谷などに行ってしまい、あれっ誰もいない、なんてな悲劇が起こったりします。そういう時には物凄い冷や汗をかいて、お陰様で目がスッキリ覚めるのです。

2006/10/ 2 [Mon]

エロトーク、炸裂す



「マー君(ボク)が仕事しよると、オカンは気分がようなるんよ。」
オカンはボクが仕事をする姿を見るのが好きでした。ボクの書いた本は大事に読み、病室でボクが画を描くのをいつも眺めていました。
しかし、偉大なるは母の愛。そんなボクのソフトなお仕事模様だけでなく、なんと、ボクが生き生きと繰り広げているキワキワエロトーク満載のラジオも、実はいつもちゃんと聞いていたのです。
このラジオでのエロトークの収録のときは、相当に面白い光景でした。もはやエロなのかどうか、分からないくらい面白い話が飛び出しています。病室の重たいシーンの中で、光り輝いています。(ホントか?)
キャストの方々、現場のスタッフがああでもない、こうでもないと、様々な知恵を絞って作られた、とっておきのエロエピソード。オススメです。


2006/10/ 3 [Tue]

オカンへ捧ぐ



ついにこの日が来てしまいました。「東京タワー」の物語の中で、決して避けて通れない別れの時。
様々なオカンの姿が思い出されます。筑豊で、近所の人たちと勝負する花札で、一人勝ちまくるオカン。ボクの仲間と酒盛りをして、はしゃぐオカン。糠床をかき混ぜるオカン。鼻眼鏡をして踊るオカン。
樹木さんが以前に言っていた言葉を思い出しました。「母親というものは、例えば芋の様なもの。自分の子供である小芋のために全ての養分を出し切って、最後にはしわくちゃになるのです。」
家に帰ってニュースを見ると、そこには子を殺めた母親の話や、母親を殺めた子の話などがいつもいつも流れています。そんな時、子供の為に自分の人生を生きたオカンの、養分を出し切って最後にしわくちゃになる親芋のような生き方を、もっともっと深く知りたくなるのです。


2006/10/ 4 [Wed]

全員集合



どこかで聞いた話なのですが、アイルランドのお葬式は、故人を偲んで涙するのではなく、逆に盛大に飲み、歌い、踊るのだそうです。それが亡き人への、最後の別れの挨拶なのだそうです。
悲しい出来事も、決して湿っぽくしない、オカンの生き方そのものの様な、明るくて楽しくて朗らかで。今日はとても素敵なお葬式のシーンになりました。


2006/10/ 5 [Thu]

新旧オカンの遭遇





今日で樹木さんの撮影は、アップを迎えました!この映画の核となるオカンを、力強く、そして柔らかく演じていらっしゃった樹木さんは、演技をしている時だけではなくて、普段のときも現場を和ませ、緊張感を与えて下さり、活気付けてくださっていました。ああ、オカンだなあ、日本のオカンだなあと思いました。
ちなみに、今日は樹木さんの実娘であり、若オカンを演じる内田也哉子さんも撮影があり、撮影所では、新旧オカンが並んでいるという不思議で何だか温かい光景が見られたのでした。


2006/10/ 7 [Sat]

オヤジの背中



早いものでして、もう撮影も残すところあと幾日か、という段階になって参りました。そういえば、撮影開始した時は身体中の水分が蒸発せんばかりの暑き日々でしたが、最近では何だかひゅるると寒くなったりして、いつの間にやら季節は巡ってしまっているようです。

ところで、この物語におけるオトンという人は、本当に掴み所のない、同時にあまりにもダメで、しかし実に人間としての魅力に溢れた人として描かれています。オトンが何を考え、何を想って生きているか、オトンの目は何を見て、オトンの心は何に震えたのか、本当に謎が多い分、魅かれるものを多くもった人なのだと思います。

そのオトンが、最近めっきり老け込みました。(役柄の話です。)今までは荒々しく猛々しく、無軌道!自己中!自由人!な香りを漂わせていたオトンの背中も、次第に丸まってきて、ああ、て感じです。老けメイクを施した小林さんから滲み出る、オトンの悲哀が、半端でなく切ないのです。

映画が進むにつれて、ボクが大人の男になり、オトンが老けてゆく。何だかそこに人生を濃縮した画を見たようで、家路につく帰り道の秋風が凄く沁みるのです。


2006/10/14 [Sat]

弾けてボーイズ

撮影も残るところ、2日となりました。今日は、埼玉県のロケ地での撮影です。
筑豊で弾けまくっていた幼いボクが繰り広げるやんちゃエピソードのシーンです。いかんせんやんちゃなものですから、殺生なこともやったりするわけです。今日は「小道具」として生き物がいっぱい出てきます。ザリガニ、カエル、ウサギ。中でもガマガエルのグロテスクな肢体には、みんなの視線が釘付けでした。でも、ガマガエルは泰然としたもので、なかなか素敵な演技をしてくれております。(映画館でチェックしてください)

2006/10/16 [Mon]

終わりと始まりの日

昔からよく言われるように、明けない夜はないそうですが、同じく、終わらない撮影もないのだそうです。 長かった様で短かった様で長かった2ヶ月半にわたる撮影が、ついに今日で終了します。
フィナーレを飾るのは、都内から車で2時間くらいの所にある、単線列車のホームと車内の撮影。
しかし、本当に空気が澄んでいて、カラっとした気持ちのいい、クランクアップ日和。何か晴れやかながらに寂しさと、2ヶ月半の想いが様々に去来するのです。
撮影としては、若オカンの内田さんと青年ボクの冨浦くんのシーン。そこへ、すでにアップしていたオダギリさんがクランクアップに駆けつけて下さるというサプライズがありました。(山を越えて、車を走らせてきてくださったのです!どうもありがとうござます!!!)
撮影が終わるなあと感慨ひとしおな一方で、本当は気持ちを新たに引き締めていかなければなりません。宣伝屋の仕事はここからが本番。4月14日の映画の公開に向けての宣伝活動の諸々、実は今日が始まりの日でもあります。
青春そのものみたいにキレイででっかい夕日を見ながら、こんなステキな映画に携われた幸せと責任の重さをひしひしと感じています。
こんなぐだぐだな撮影日誌を最後までお付き合い頂きました皆様、どうもありがとうございました。これは恥ずかしいまでに稚拙な私の『東京タワー日記』でしたが、4月14日の公開からは、皆さんそれぞれの『東京タワー』が作られてくることと思います。楽しみに待っていて下さい。素晴らしい作品が、皆さんに見て頂く日を待っています。

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