就活のハナシvol.5
注)これは昨年、どこぞに書いたモノの転載です。
表現内容などに問題があるかもしれませんが、現在とは事実関係が異なることもあるかもしれませんが、
そして読み返すと昔の文章は若干寒いですが、いじらずそのまま掲載します。
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この数週間で、めっきり早起きになりました。
深夜12時近くまで家の電話が鳴る毎日。
それが終われば、次の日は10時から面接。
今までだって、1時2時に寝ることのほうが少なかったのに、
やっぱりメンタルの影響でしょうか。疲れが取れない。
当時はまだ、連絡手段は携帯じゃなく、自宅の電話が
鳴らされていました。
主に夜。
彼らリクルーターが採用活動を一旦終えて、
社に戻った7時8時以降になります。
ここ1週間以上、彼女とは会っていません。
家にいないといけないので。
よって、電話での会話のみとなります。
あんまり疲れているところは見せたくないんですが、
マジ疲れしているので、どーしても応対が適当になります。
彼女も、頭では分かっているのかもしれませんが、
女子は自分が1番大事にされていないと感じると、
無条件にイラっとくることも多くて。
結構トゲトゲしいやりとりが多かった気がしますね。
こっちもこっちでガキなので、
『何で俺が疲れてるのが分からないんだ』と
イライラしてました。
さて。
運命…かどうかは分からないけど、運命の日。
電話で起こされました。
A銀行の、僕の案内役をしてくれた、あの人からでした。
「きのうはごめんなー」
「いや、いいんです」
「キミに、改めて会いたいんです」
彼は、時間と場所を言い始めました。
3日後の午後…
「ちょっと待ってください」
「何?」
「これは、最終ですか?」
「…」
「最終面接ですか?」
「最終かどうかは、俺には分からへん」
「そうですか」
「でも俺らは、君にもう1回会いたいねん」
「…分かりました」
約束の時間に約束の場所で立っていました。
梅田のマルビル近くでした。
正直、どういうモチベーションでいればいいのか、
すごく迷いました。
きのうのA銀行のコトも引きずってて忘れられない。
3日後まで待っても、100%内定がもらえるかどうか分からない。
このシーズンの3日は、正直長い。
どうしてその日の夜、電話くれなかったのか。
どうしてあの日、決めてくれなかったのか。
そんなグッチャグチャの迷いの中、
明るい声で呼んでくれたB銀行。
前回の面接から、結構開いたな。
何で今さら、呼び出したんだろう。
内定者が逃げたか。
それとも単なる順番待ちだったのか。
約束の時間を少し過ぎて、昨夜電話をくれた、
入社3年目の先輩が現れました。
前回の面接で会っています。
「ごめんごめん!待った?」
「いや…大丈夫です」
「腹減った?」
「起きてそのまま来たんで、メシ食ってないです」
「よっしゃ!ほな…あのホテルでも行こか」
元気だなーこの人。
あ、俺が元気ないだけか。
少し離れたホテルのレストランに入り、
適当な雑談を交わしながら、適当なランチを適当に食べました。
「どうなん、活動は?もう内定出たとこ、あんの?」
サラっと聞くなー…
どう答えよう。
こういうとき、自分の値段を吊り上げるために、
出てなくても『あと最終だけのところがいくつか…』
みたいなコト言うのが1番いいんでしょうけど。
このときの僕にはそんな余裕もなくて、
目の前の兄ちゃんの気さくな感じに甘えて、
昨日の話を聞いてもらいたい…
そんなバカ正直な感情にもなっていました。
「きのうA銀行の一斉面接があったんですけど…」
「おー、幹事行、がんばっとんな。それで?」
…全部話しました。正直に。
話の途中から、兄ちゃんの表情がみるみる曇る…というか、
険しくなっていくのが分かりました。
この表情の意味は…
読み取る間もなく、ややデカイ声で、兄ちゃんは言いました。
(すいませんね兄ちゃん兄ちゃん言って。便宜上です)
「そら落ち込むのも分かる!そんな薄情なことようすんなAも!」
「…そう思いますか」
「当たり前やん!そんなんで帰されたら不安になるに決まってるやん!」
「はい…不安でしたね」
「せめて当日の夜には絶対電話するわ、普通」
「…そうですかね」
多分、兄ちゃんの作戦です。
Aで最終手前まで進んだ後輩を、一応キープしたいがために、
情に訴えたんだと思います。
表情で何となくそれは分かりましたが、
それでも、うれしかった。
疲れた心と体には、演技であろうと陳腐であろうと、
同情が気持ちよかった。
演技は続きます。
「よし!待っとけ!」
「は?」
「俺らは、絶対今日中に、お前の内定出したる!」
「え?」
「今日な、実はこのホテルの部屋で面接してんねん」
「そうなんですか」
「Aは帰したけど、俺らはお前帰さへん。
結論出るまで、拘束するからな」
「拘束…」
「大丈夫やろ、時間。 何か用事あんの?」
「いえ…別に…」
「彼女とデートやったらええけど、それ以外はあかん!」
「wwwww 会ってないんすよ最近ー」
場の和ませ方知ってんじゃん。
気に入った。
本当に、ホテルの一室に監禁されました。
その部屋で待ってると、入れ替わり立ち代り、
また年次がばらばらの大学の先輩がやってきます。
でも、3人くらいです。
待ち時間長かったなー…
話す内容も、別に。
彼女の話とか。そんな感じで。
待ち時間は1年目とか2年目の人が、
数人遊びに来て一緒にタバコ吸ってぼーっとしてました。
安心感ありましたね。
以前話した、武器とするために読んだ『CS』の本。
アレの話をすると、
「おお!!それ、俺ら今年配られたで店で!(支店のことを店と言います彼らは)」
「ぜんっぜん分からんかったwwwww」
「自分(←関西弁で2人称)わかったん? それだけで採用やで絶対!!」
ノリ軽いな~…居心地いいかも。
夜。もう20時回ってます。
||Φ|(|゚|∀|゚|)|Φ||
まだまだ監禁中。
スゲー待ち時間長い。
ホントに彼女にちょっと会ってイチャイチャしてきたら良かった。
弁当も部屋の中で1人。
スゲー長い。
弁当を食べた少しあとに、ドアが開いて、2人のおじさんが入室。
1人は、さっき会いました。
うちの大学の採用チームのリーダー。もう40歳くらい。
もう1人は、初でしたが、大阪エリアの人事責任者でした。
今日初めて、まともに面接らしい面接が始まりました。
定番の質問。定番の答え。
この部長笑わせてやろうかな、と一瞬思いましたが、
明らかにさっきと違う、ピリッとしたムードを感じて、
あくまで爽やかに、ハキハキと。
それだけ心がけて。
「なんで、B銀行で働きたいと思ったんですか?」
いつも通りの通り一遍の話をしたあと、僕は、
「あと、きょうたくさんの先輩に会って…行風というか、
先輩たちのノリが…完全に僕と一緒です。
活動してて、ここまで思ったのは初めてです」
と言いました。
「そうか。あいつらのいい加減なトコ見習うよりも、
キミがあいつらに、色々教えてやってほしいな」
「はあ…は」
「一緒に頑張ろう!ようこそB銀行へ!!!」
突然部長は立ち上がって、僕に手を差し伸べました。
何がなにやら分からず、僕も立ち上がり、握手しました。
部長はそのまま僕を抱きしめて、
「よう頑張ったな。就職活動おつかれさん!!!!」
いやーーーーーーーーー…何で初対面のオッサンに、
僕は泣かされようとしてるんでしょうかww
ウルルンホテル滞在記ですよ。
走馬灯も回るわ、部長がバンバン背中叩いてくれるのも気持ちいいわ。
あーーーーーーーーーーーーー就活終わったーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!
その瞬間、うちの大学のリクルーターが、一斉に部屋になだれこんできました。
イェーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!
おーーーーめーーーーーーーーでーーーーーとーーーーー!!!!!
嗚呼、サークルのように楽しく暖かい。
就職活動、終わった。
終わってませんでした。
しばらくハイタッチと握手の嵐が続き、おじさん2人が出て行ったあと。
先輩たち10人ほどが、僕の周りをグルッと囲みました。
1人が、僕に1枚の紙を手渡します。
電話番号が書いてありました。
「それ、Aの人事チームの直通電話」
「は?」
「今、ここで断りの電話いれてくれ」
「今ですか?」
「おお。俺らの見てる前で」
…こわ。
「もしもし」
「もしもし。・・・・・・・・と申しますが」
「おお、どうした?」
「あの…3日後の面接のことなんですけど…
色々考えて……僕、他の会社に決めたんで、
行けなくなりました。すいません」
誰かがどこか電話のボタンを押して、
相手の声も部屋で聴けるようにしました。
周りは、ププププー…みたいに、笑いを押し殺して聞いてます。
鬼だ…笑いの裏には鬼の面がある。
「それは困る!あと最終だけやのに!」
「でも、僕も困りました。きのう、帰されるとは思わなかったんで」
「あれは単純に時間の都合や」
「いえ、もうその話はいいんです」
「決めたって、どこ?都銀か?」
迷って周りを見渡すと、みんな笑いをこらえながら、無言で
『言うな』とクビを振っています。
「…違います」
プッスー!
誰かの口から笑いがこぼれ、みんなも誘われて笑い始めました。
「…聞こえてるよ、言うなって言われてるんやろ」
「いや…」
「残念です」
「お世話になりました。ありがとうございました」
ガチャ。
「終了ーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
「聞こえてるよとかサムイのーーーーAは!!!!」
「お疲れ!ナイス電話!!」
鬼だ…鬼だな、就職活動って。
実質、1ヶ月ちょっとの就職活動。
都銀・B銀行に内々定で終了。
おつかれさま、俺。
~続く~
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(山本佳宏)