私、東京、そして神戸
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生まれ育った地元の市にはあるのかないのか分からない女の小指の爪ほどの愛着もないんですけど、
なぜかというと思春期にあんまし地元をウロウロしてないからですね。
大阪の学校に通ってた中学高校時代は旧時代的な校則の中途半端な進学校の内気な少年だったこともあり、
下校中に梅田とか心斎橋とかで青い春を満喫した記憶もないわけで、
そうなると自然に、なにがしかの愛着があるのは、大学生時代にウロついていた神戸、ということになります。
正月、数日ではございましたが、何年ぶりか忘れるぐらい何年ぶりかに帰省をいたしまして、
ついでに神戸の街にも久々に寄ってみました。
箭内さんは、故郷・福島を大嫌い大嫌いと言い続け俺は東京が大好きだと言い続け、
福島に背を向けた福島県人ユニット、ままどおるズ(サンボマスター山口隆×箭内道彦)まで結成し、
あげくのはてには、すっかり故郷に愛される有名人となってしまいました。
風とロックと福島民報 『207万人の天才』。
改めていいコピーですよね。
やっぱ『嫌い』は『好き』のそばにしかないんだなと、思います。
こう言うと箭内さんは、「だから俺は好きなんじゃなくてホントに嫌いなの!」って言いそうだけど。
「神戸は住みやすいけど生きにくい街」。
神戸でお世話になった喫茶店のおばちゃんは、学生の僕に、ため息交じりにそう言っていました。
山もあって海もあって、大都市にも近くて、そこそこ何でも揃って。物価がそんなに高いわけでもなくて。
でも、金を稼いで、自分の足で立って生きていけるほどには、太くない。
そんな街。
商売が下手な、僕にタダメシばっか食わせるおばちゃんでした。
あの店、つぶれただろうな。何やってんだろ今。
大阪が好きだったわけじゃないし神戸が好きだったわけじゃないし、
かといって東京に憧れまくって出てきたわけでもなく。
ここなら金を稼ぐチャンスが、大阪よりも多いんじゃないか。
そう思って上京しました。
ディレクターのナウマンさんとも話をしていたんですが、
僕らみたいな田舎者(ナウマンさんは長野県出身です)は、東京で暮らすことについての強迫観念があると。
何かを為さないと、ここにいちゃいけない、という強迫観念。
東京で生まれ東京で育った人にとっては、ただのふるさと。ただの、自分の街。
これまでも東京で何となく生きてきたし、これからも東京で何となく生きていく。
それが当たり前の感情。
でも僕たちは、何かを為さないなら、さっさと肥料くせー田舎に帰れと、いつも誰かに言われてるような感じがしてる。
ナウマンさんは、上京直後、新宿を歩いていて、街に掲げられた標識や地図を見上げるのが、
本当に恥ずかしかったと言ってました。もし標識を見上げたら、
「あ、こいつ新宿の道知らない。ってことは田舎者だな」
と周りに思われる。それは本当にイヤだと。
上目づかいにチラチラと地図や標識を盗み見て、「あ、道間違った。反対側だ」と思っても、
そのままくるりと振り返って歩き出すと、「あ、こいつ道間違えた。ってことは田舎者だな」
と周りに思われる。それは本当にイヤだ。
だから、鳴りもしていない携帯(当時はPHSだったかもしれません)を取り出して耳にあて、
さも、誰かに突然呼ばれて進路変更をしたかのように装いながら、新宿の街を歩いていたそうです。
すげー分かる。泣きたくなるぐらいすげー分かる。
哀しいですね、東京って。
ハタチそこらのおのぼりさんにとって、東京はあまりにもデカイ。
上京して10年、僕にとって、今1番居心地がいい街は、東京です。それはまぎれもなく。
実家にいるよりも、神戸にいるよりも、落ち着きます。
それでも、僕は今日も、強迫観念に襲われ続けてます。
何かを為さないなら、さっさと田舎に帰れ。
何かを為すって何だろう。何ですか東京様。
僕はココに居てもいいんでしょうか。
街に愛されるためには、どうすればいいのかしら。
まずは街を愛せってことですか。
東京様への愛を叫べばいいんでしょうか。
タクシーの運転手さんが知らないような東京の裏道を指示しちゃうような年齢になりながらも、
そんなことをまだ考えてたりします。
いつか、月刊風とロックの連載にも書きましたが、
箭内さんは、タクシーの運転手さんに、
「お客さん、東京の人じゃないでしょ。東京の人は、そんな派手なカッコしないもん」
と言われたことがあるそうです。
そうなんです。そんなことですら。
田舎者は、何かを為していないと、東京にはいられない気がしてる。
こんな思いを、地方出身者のみなさんは共有していらっしゃるんでしょうか?
そして僕は、ラジオブログで一体何を書いてるんでしょうか。
理由の1つには、ちょっと久しぶりに、SCHOOL OF LOCK!のやましげ校長&やしろ教頭と会って、
仕事終わりに酒飲んで酔っ払っちゃったからであり、ブログ更新が遅れてしまいました理由でもございました。
失礼いたしました。
(山本佳宏)