月曜日。

出産予定日までは、まだあと３日はあるはず。

モネが赤ちゃんを産んだら、しばらくは育児に奮闘する日々。

今日は夜ごはんを食べにでかけた。

春のお魚がずいぶん、おいしくなってきた。

サヨリ、赤貝、ほんの少しはやいけれど春の訪れを告げる 生しらす。

おいしいね、おいしいね、とお寿司をいただく。

さてさて、家に帰ったら。

モネは楽しそうに、お姉ちゃんとボールの取り合いで追いかけっこ。

おっきなお腹して、よく走るね。

お母さんになるといっても、心はいつまでも、子どもだね。

そんなところも、モネのかわいいところ。

思いっきり遊んだら、休憩。

テレビを見ているわたしたちの横にそっとやってきて 静かにわたしたちの会話を聞いているモネ。

人間の言葉がわかるの？

うん、ちゃんとわかっているような顔。

しばらくして、モネは自分のハウスに戻っていった。

眠いのかな？

妊婦は眠いっていうからね、おやすみ。

まったくふだんとかわらない様子のモネ。

時計が２３時をまわった頃。

モネがうーんと踏ん張るような姿勢。

どうした？

おトイレ？

とても静かな夜だった。

モネは身震いもせず、鳴き声もあげず、踏ん張っている。

そして。

んみゃぁ。

なんと、出産予定日よりずいぶんはやく、赤ちゃんが生まれた！

第一子は、男の子。

こんな自然に出産するものなの？

犬は安産の神様っていうけれど、呆気にとられるくらいに 自然のなりゆき、を感じるお産。

そういえば、月が満ちているかも。

モネ、はじめてのお産に動じることもなく、堂々とした 母親っぷり。

臍の緒を切り、胎盤を食べ、初乳を飲ませる。

なんて穏やかなモネの顔。

なんて小さな赤ちゃん。

しばらくして、また、陣痛。

こんどもするすると、第二子が誕生！

またしても、男の子。

牛のような柄の男の子です。

こんにちは、ウシ君。

人間の手を借りることなく、出産という自然の営みを あたりまえに受け入れているかのように落ち着いたモネ。

なんだか、生き物の強さ美しさに、手も足も出ない。

陣痛は３０分〜１時間間隔でやってくる。

３回目の陣痛になると、モネはもう心得たもの。

上手にタオルの巣をつくって第三子も元気に誕生。

ようやく、ようやく、女の子だよ。

ちょっと男の子顔してるけど、女の子。

バンザーイのポーズ。

体いっぱいに伸ばせるのは、広い世界に出てきたからだね。

臍の緒もきれいに切れた！

ピチャ，ピチャ、ピチャ。

部屋には、モネのおっぱいに子犬たちが吸い付く音。

エコーでは４頭って言ってたから、まだいるかな？

人間の出る幕もなく、ただタオルをもって産湯の桶をもって待ち構えるだけのわたしたち。

２時になる頃、第四子がミャオ！

お顔に太くて白いラインが入った美男子くん。

元気に生まれてきてくれて、ありがとう。

もう終わりかな？

そう思って、産箱や産湯の用意をしはじめた頃、 モネがまた、いきみだした。

あれぇ？まだいるの？

あっけなく、第五子が誕生！

モネ、すごいよすごい。

はじめてのお産を、ぜんぶ、自分の力でやり遂げた。

なんだか神々しさとか、誇らしささえ感じるモネ母さん。

おつかれさま。

あったかいヤギのミルクと、チーズ、スクランブルエッグでモネをねぎらう。

これから育児の日々がはじまる。

たっぷり栄養をつけて、がんばろうね。

大好物がたくさん出てきてご機嫌のモネ。

小さな子犬たちは、必死でおっぱいにくっついてる。

５つの命が誕生した、静かな夜のできごとでした。