旦那さんと奥さん。お父さんと息子。彼氏と彼女。会社の上司と部下。幼なじみ同士。人間の関係には、たくさんの間柄があります。それと同様に、人間と犬の間柄もさまざま。ちなみに湯佐家の場合、母はゴンタの母さん、父はゴンタの父さん。そして私は幼い頃から一緒だったので、ゴンタとは“仲間”のような間柄です。
この小説『ティンブクトゥ 』の飼い主=ウィリーと、飼い犬=ミスター・ボーンズは、まさしく気の合う仲間。友達がいないちょっと変わり者のウィリーは、人間の言葉を理解するミスター・ボーンズに多くのことを語りかけます。そしてウィリーを仲間として尊敬しているミスター・ボーンズはその教えを忠実に守るのです。他の人にしてみれば、ちょっと変わり者のウィリー。でも、そんなウィリーから愛情をたっぷりもらっているミスター・ボーンズにとっては、ウィリーがすべてなのです。この作品は、人間と犬の信頼関係を犬の視点から描いています。読み終わった時に「やっぱり犬には飼い主が必要だし、絶対的な存在なんだな」と再確認することができ、うれしい気持ちになりました。
犬も人間同様、一匹一匹それぞれ性格や考え方が全然違いますよね? 犬と暮らすと、その犬の癖や好き嫌いを知ります。そしてわたしたち人間が犬のことを知れば知るほど、犬はその人を自分のよき理解者だと察知し、安心感からたっぷりと人間に愛情をくれるようになります。飼い主は愛情を示し与えてくれる犬に、人には見せられない弱い部分をついつい見せてしまったり、人には言えない愚痴を思わず言ってしまうのです。
もしかすると裏切るという行為をしらない犬と飼い主の信頼関係は、人間同士のそれより深いのかもしりませんね!…d-o-gを逆さに読むと…“g-o-d”=神様! つまり人間にとって犬は、居てくれるだけでありがたい、そしてどんな時も無償の愛をくれる、神様のような存在なのです。
『 ティンブクトゥ 』
ポール・オースター 著
柴田元幸 訳
新潮社 版
1680円(1600円+税)