『絶好調な時間に入ってきましたね』
『よくやる、あの“もごもご声”でお願いします』
『○○が西、△△が東だとすると、二行目はその間の行司みたいな感じで』
ここで質問です。
これらはCM制作プロセスのどの段階で発せられた言葉でしょう?
発言者は、もちろん、あの男です。
というわけで、何だかここにきて、
結構な頻度でお邪魔しちゃっております、
私、ADKの若木信吾(誤植)がお送りさせて頂きます。
そんで、冒頭の言葉たち。
実は、とある女優さんのナレーション録りで発せられた
箭内さんのディレクションワードなのであります。
正直、こんな独特なワーディング、
ディレクターさんからあまり聞いたことないです、若木的には。
三つ目なんか、相撲じゃん。
箭内さんと言えば、芸大卒だし、CMにしてもグラフィックにしても、
とにかくビジュアル発の思考回路の持ち主だ!
と勝手に高を括っていた僕でありますが、
最近、スゲー如実に感じることが・・・。
「この男、スゲー、言葉の人でもあるな。」
広告制作という共同作業の多い現場での作業の進め方を
『クリエイティブ合気道』なんてオリジナルな言葉で解説し、
本まで出しちゃっているし、
冷静に考えれば、今に始まったことじゃねーことくらい、
すぐ分かるわけですが、
とにかく言葉に対する嗅覚も鋭いんですよね、たぶん。
『オマエ、何様だよ!』
って、とてつもなく叱られそうな予感、たっぷりなんですけれど。
冒頭の言葉たちも、その好例。と思っちゃうわけです。
何か硬いムードを作らない為に、具体的な演出とともに、
クスッと笑えるムードをスタジオに持ち込む
一石二鳥効果まで狙っているというか。
ちなみに箭内さん、ディレクションの最中に一度だけ、
「ここで読み始めて下さいね」をランプで知らせる
キューボタンを押し間違えていらっしゃいました。
本来、我々のいるスタジオと
ナレーターである女優さんのいるブースを音声で繋ぐ
トークバックというボタンを押さなければいけないところなのですが。
「弘法にも筆の誤り」と申します。
「箭内道彦も人間なんだなー」と感じざるを得ない僕なのでした。
言わなきゃ、僕らはそのミスに気づかないものを
敢えて声に出して苦笑いしている人間くささも含めて。
wakaki